記憶しておきたい新聞記事見出し2014〜2017 |
(社説)ニッポン2016年 このまま流されますか(2016/12/31朝日新聞) ・・・ ご都合主義的な言葉づかいの極みが、首相の6月の消費増税先送り会見で飛び出した。「再延期するとの判断は、これまでの約束とは異なる新しい判断だ」「新しい判断」は公約違反の逃げ口上だ。2年前には「再び延期することはない。ここでみなさんに、はっきりとそう断言する」と言ったのだから。しかも国会での追及をかわそうと、閉会直後に表明した。ところが、野党も増税延期を唱えていたため、参院選の争点にすらならなかった。・・・この夏、101歳で逝ったジャーナリスト、むのたけじさんの著作に次の一節がある。「(日本人が)ずるずるべったり潮流に押し流されていくのがたまらなかった」敗戦直後の世の中への感想だが、どこか現在に通じないか。・・・9月、安倍首相は所信表明演説で言い切った。「非正規(労働)という言葉を、みなさん、この国から一掃しようではありませんか」だが、働き方の問題は深刻かつ多岐にわたる。「保育園落ちた日本死ね!!!」 この匿名のブログへの反響の大きさが、待機児童問題の窮状を物語っている。過労自殺した電通の女性社員(24)の言葉も切ない。「大好きで大切なお母さん。さようなら。ありがとう。人生も仕事もすべてがつらいです」衝撃的な事件があった。相模原市の障害者施設で19人を殺害した男は言った。「障害者は生きていても無駄だ」この異常な偏見に対する確固たる反論を、だれもが心に堅持し続けねばならない。ことしも、いじめを苦にした自殺を防げなかった。原発事故の自主避難先で、いじめられた少年の手記が話題になった。「いままでなんかいも死のうとおもった。でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた」それぞれの「言葉」が、ニッポンのありのままの姿を映している。だから聞き流すまい。立ち止まって受け止めよう。このまま来年も流されてしまわぬように。 常識覆す1年 既存体制への不信吹き出す(2016/12/31京都新聞) 貧富の差さらに拡大 国際非政府組織オックスファムによれば、世界の貧富の差は拡大を続け、わずか1%の富裕層の所有する富が残り99%の人々を上回った。富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる。そのからくりの一端を解き明かしたのが、4月に公表された「パナマ文書」だ。租税回避地を使って課税を逃れていた各国首脳らの疑惑が明るみに出た。不公平で硬直化した仕組みを打ち破りたいという人々の願いはもっともだ。・・・ 改憲が現実味帯びる 国内では、天皇陛下が8月、皇太子さまに皇位を譲る退位への強い思いを国民に語られた。戦後70年を超え、象徴天皇制の在り方を考える機会となった。政府は特別法の制定を目指すが、皇室制度も含め国民的議論が求められよう。7月の参院選では、自民、公明の与党が大勝。憲法改正に賛同する勢力が、衆参両院で憲法改正発議に必要な3分の2以上を占め、衆院憲法審査会が約1年半ぶりに実質的な審議を再開した。改憲は安倍晋三首相の悲願であり、自民が総裁任期の延長を決めたこともあり、改憲が現実味を帯びる。・・・原発政策もまた、大きな転換点を迎えた。1兆円を超える巨額の国費を投じながら、成果を残せなかった高速増殖原型炉もんじゅの廃炉が決まり、核燃料サイクル政策の行き詰まりが明らかになった。関西電力高浜3、4号機の再稼働に対しては、大津地裁が「安全性を立証していない」としてストップをかけた。国は、早急に原発に頼るエネルギー政策を抜本的に見直すことが求められている。・・・相模原市の障害者施設で入所者19人が刺殺された事件は、独善的な動機が世間を震え上がらせた。過労自殺、いじめ自殺など命の重さを考えさせる事件も相次いだ。 そうした中、スポーツは今年も明るいニュースをもたらしてくれた。リオデジャネイロ五輪で日本は金12個を含む史上最多の41個のメダルを獲得。米大リーグのイチロー選手はメジャー通算3千安打を達成し、日本を勇気づけてくれた。ノーベル賞では、大隅良典・東京工業大栄誉教授が医学生理学賞で日本人の3年連続受賞となった。文学賞には米歌手ボブ・ディラン氏が選ばれ、詩や言葉、歌の力を再び信じさせてくれた。 <社説>2016年回顧 重圧増す日米同盟 沖縄基地強化に屈しない(2016/12/31琉球新報) インドへ密入国、続々 警察の拘束恐れ(2016/12/31琉球新報) 大みそかに考える 被爆国の気概がある(2016/12/31東京新聞) |
惜別 2016年・亡くなった方々 5日 ピエール・ブーレーズ(90) 仏の世界的作曲家、指揮者。最先端の科学技術を導入し、現代音楽を牽引(けんいん)した ■2月 1日 京極純一(92) 政治学者。東京大名誉教授。統計学の手法をいち早く政治学にとり入れた ■3月 5日 ニコラウス・アーノンクール(86) オーストリアの指揮者。古楽演奏のパイオニアとして知られた ■4月 4日 安丸良夫(81) 一橋大名誉教授。民衆運動論を展開。戦後の近世近代史、宗教思想史に大きな足跡を残した ■5月 5日 冨田勲(84) 作曲家。シンセサイザーを使った電子音楽の第一人者で、音響作家としても世界的に知られた ■6月 3日 モハメド・アリ(74) プロボクシング元ヘビー級王者。ベトナム戦争や人種差別をめぐる言動で注目を集めた ■7月 4日 アッバス・キアロスタミ(76) 映画監督。表現が制限されるイランで「友だちのうちはどこ?」などを発表 ■8月 13日 下河辺淳(92) 元国土事務次官。戦後五つの「全国総合開発計画(全総)」の策定に携わる ■9月 9日 加藤紘一(77) 元内閣官房長官。首相候補と目されるなか、00年11月、「加藤の乱」に失敗した ■10月 5日 井上竜夫(74) 吉本新喜劇の座員。愛敬ある老け役で人気を博し、「竜じい」の愛称で親しまれた ■11月 1日 二上達也(84) 元日本将棋連盟会長。昭和の名棋士の一人でタイトル獲得は5期。羽生善治三冠の師匠 ■12月 4日 荒川博(86) 元プロ野球・巨人の打撃コーチ。868本塁打を放った王貞治さんの「一本足打法」の生みの親 |