記憶しておきたい新聞記事見出し2014〜2016
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(憲法を考える)届かぬ少数者の声 改憲勢力3分の2、問われる民主主義(2016/10/30朝日新聞) (社説)台湾の脱原発 民意を映す政治の決断(2016/10/30朝日新聞) 9年後に原発をゼロにする。この目標に向けて、台湾が一歩を踏み出した。日本の福島第一原発事故から教訓を真剣に学んだ取り組みであり、その行方に注目したい。台湾は日本と同じく、資源に乏しい。中国と対峙(たいじ)し、国際的に孤立していく緊張の中で1970年代に原発導入を図り、現在は3基が稼働している。だが地震などの自然災害が多いことも日本と共通する。福島の事故を契機に、脱原発の市民運動が大きなうねりとなった。建設中だった第四原発でトラブルが続いて原発政策全般への不信感が広がった面もある。こうした動きを受け、民進党の蔡英文(ツァイインウェン)氏は年初の総統選で脱原発を公約の一つに掲げて当選した。同時実施の議会選も民進党が過半数を占め、政策決定の障害はなくなった。関連法の改正案は年内成立の見込みだ。・・・原発が国民党独裁政権下で始まった事業であったのに対し、民進党は以前から反原発の姿勢で、電力事業へのしがらみがない。政権交代がそのまま政策転換を生む形になった。台湾社会ではすでに原発を疑問視する声が主流だった。前の国民党政権も、世論に押されて第四原発建設を凍結した。脱原発は、政治が指導力を発揮したと同時に、政治が民意を正確に反映した結果といえる。日本でも原発の再稼働への懸念は強く、最近も鹿児島、新潟両知事選の結果に示された。しかし国策に大きな変化がないのはなぜか。台湾の決断は日本のさまざまな問題を考えさせる。 (声)風刺マンガ、反骨と笑い今後も(2016/10/30朝日新聞)主婦 芝崎みちる(福岡県 68) 21日は、朝刊の政治風刺マンガに大笑いした。「ことわざ大辞典」の上に倒れた石破茂・前地方創生相の上に安倍晋三首相が座り込み、得意げに指を3本立てている。辞典の項には「石破の上にもう三年」の文字が。自民党が総裁任期延長を事実上決めたことを受け、3選が可能になった安倍氏が、次期総裁候補と目される石破氏を押さえ込んだ様を描いている。端的なことわざのもじりもピッタリだ。時事ネタを即座に取り込んで一目瞭然の作品に仕立てるのは、難しいことだ。だが、この作者の針すなお氏も、同欄の他の描き手も、笑いを織り交ぜた反骨精神を発揮し続けている。何かと上に物を言いにくい空気の当世だが、庶民の目線で笑える作品を今後も届けてほしい。 |
週のはじめに考える 言葉たちの“声”を聞こう(2016/10/30東京新聞) ◆差別の動きと密接に |
「勤め先ブラック」4人に1人 20・30代男性は3人に1人「思う」 連合総研調べ(2016/10/29朝日新聞) いじめの把握 子らのSOS見逃すな(2016/10/29京都新聞) <社説>土人発言抗議決議 沖縄差別の政策やめよ 国民と県民の分断強める(2016/10/29琉球新報) 偏見を再生産 県議会の会派が分断され、決議が全会一致とならなかったことを政府は内心、喜んでいることだろう。しかしそれは大きな間違いだ。今回の差別発言問題は県議会、県民の間だけでなく、国民と県民にも大きな分断と亀裂を生じさせたからだ。機動隊員の「土人」発言に県民は激怒した。だが「シナ人」発言に戸惑った県民も多かったのではないか。20代の機動隊員が、死語に近い「土人・シナ人」の言葉を発したことも不思議だった。ネット上で国策の基地建設に反対する県民が「土人・シナ人」呼ばわりされ、県民を異端視し偏見を助長する言説が流布されていることが背景にある。・・・ 県民世論が反対する辺野古新基地建設を巡り政府と県が対立を深める中で、政府の「基地と振興のリンク」が公然化した。沖縄担当相の「選挙と振興のリンク」など、沖縄に対する「アメとムチ」の政策が、県民分断の背景にある。政治学の用語に「分断統治政策」がある。「支配される側を分断し、統治者への反発を抑える」統治法で、植民地政策の常套(じょうとう)手法だ。沖縄の歴史は日米両政府による分断統治の歴史と言っていい。 (社説)核禁条約交渉 被爆国が反対とは(2016/10/29朝日新聞) (声)自衛隊員を出征兵士にするな(2016/10/29朝日新聞)契約社員 秋山信孝(東京都 67) 安倍内閣は、南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)で、陸上自衛隊に新任務「駆けつけ警護」を付与する方向で検討を進めている。現地で戦闘行為が続く中、武器使用ができる新任務付与をなぜ急ぐのか。思えば今国会の初日、安倍晋三首相は所信表明演説で、自衛隊員などをたたえるよう促し、自民党議員たちが一斉に起立し拍手した。私は軍歌「出征兵士を送る歌」を思い出し、薄気味悪さを感じた。子供の頃に中国戦線から辛くも生き延びた亡父に、戦争の悲惨さと国民を高揚させる軍歌の美辞麗句の欺瞞(ぎまん)を教えられたからだ。「讃(たた)えて送る一億の歓呼は高く天を衝(つ)く いざ征(ゆ)けつわもの日本男児」という歌詞は、自衛隊員に向けたものとして再生されてしまうのか。憲法9条を持つ日本は、武力で協力しないことを恥じる必要はない。災害復旧や医療、教育など非軍事の国際貢献を貫くことを誇るべきだ。積極的平和主義という美名のもとに自衛隊員に武器を持たせ、拍手で送り出すことは、断じてあってはならない。 (声)戦前を想起させる二重国籍追及(2016/10/28朝日新聞)牧師 小野一郎(大分県 89) 民進党の蓮舫代表や自民党の小野田紀美参院議員の「二重国籍」問題が国会で追及される中、私は戦前の小学校時代を思い出した。各教室に「清く、正しく、明るい日本人たれ」と書かれた、日本人であることを強調する額がかけられ、唱和させられた。日本は特別な神の国で、危機にあっては神風が吹いて守られると教えられた。最後には「鬼畜米英」という言葉もたたき込まれた。毎月読む小学生向け雑誌には、外国人を差別的に描いた小話や漫画もあふれていた。それらの結果、日本人以外を「異なった人間」と思うようになった。朝鮮半島や中国の人々への蔑視も生まれた。西洋人は敵で、排斥すべき存在だと思った。私は広島の原爆投下の翌日に陸軍2等兵として入隊。泥まみれの土木作業中に敗戦を迎えた。「清く、正しく、明るい日本人」を刷り込まれた結果だった。国会の議論で、日本人であることに固執し、外国籍を持っていた議員を執拗(しつよう)に追及する人たちに問いたい。一体何のための追及なのか、そんな追及による社会への悪影響を考えたことがあるのかと。 雨水流入は監視不足が原因(2016/10/28共同通信) 浜岡4号機、布の異物混入 圧力抑制室(2016/10/28 静岡新聞) (社説余滴)イヤな感じの三つの理由 坪井ゆづる(2016/10/28朝日新聞) 首相は「私は立法府の長」と言ったことがある。その後、「言い間違えていたかもしれない」と述べ、議事録は修正されている。だが、実は国会を牛耳っている実感のこもった本音ではなかったか。第二は光景の見え方だ。起立して手をたたく議員の視線の先に、拍手しながら議場を見下ろす首相が立っていた。多くの議員が首相を礼賛するかのようだった。討論の場の議場を、首相がみずからの権力を誇示する舞台に変えたように見えた。第三は将来の話だ。政権に戻って4年近くになる。特定秘密保護法の制定、武器輸出三原則の緩和、解釈改憲での集団的自衛権の行使容認、そして安全保障法制。首相はきっちり布石を打ち、いまや自衛隊は世界中で他国軍を支援できる。この先いずれ、首相は憲法違反の疑いのある自衛隊の海外活動にも「敬意」を求めないだろうか。安保法制は違憲だとの批判を、議場の起立と拍手でかき消そうとするかのように。 (声)台湾の「原発ゼロ」見習いたい(2016/10/28朝日新聞)無職 木原道雄(神奈川県 80) 台湾の蔡英文(ツァイインウェン)政権が2025年に「原発ゼロ」にすることを決めた。東日本大震災後の反原発の民意を受けたものだという。脱原発を旗印に、国づくりをしていこうという気概に打たれる。台湾の現状を知る電力関係者からは「実現のハードルは非常に高い」という指摘もある。たしかに課題は山積みなのだろう。だが、台湾経済相は「放射性廃棄物の問題を子孫に残さないために、どのような政策が必要なのかということこそを考えるべきなのだ」と述べている。まったく同感だ。翻って、わが国はどうだろう。安倍政権は原発の再稼働を推し進めている。放射能レベルが比較的高い放射性廃棄物を地下深くに埋め、10万年後まで国が管理するという。東京電力福島第一原発事故から5年経っても汚染水処理などで方向が見いだせないのに、10万年後を保証できるのか。災害多発国の我が国では、東日本大震災後も地震や火山噴火が相次いでいる。再び原発事故が起こる可能性はないとは言えないだろう。台湾やドイツを見習い、日本も「原発ゼロ」の国策を打ち立て、これ以上、放射性廃棄物を持たずに済むようにするべきだ。 昭和、見つめた 平和求め歴史探究・ダンス何でも 三笠宮さま逝去(2016/10/28朝日新聞) 三笠宮さまは、日中戦争下の昭和18(1943)年1月から1年間、「支那派遣軍総司令部」の参謀として、南京に駐在された。そこで、部内の将校に対する研究会の資料として書かれた冊子が「支那事変ニ対スル日本人トシテノ内省」です。当時は言論が弾圧されていて、一般幕僚が大胆な発言をするのは難しいので、皇族である自分があえて発言すると書いています。 そして、支那派遣軍は日中戦争の本質の認識や、解決への努力が足りないと指摘。満州事変・支那事変の主な原因と責任は日本現地軍にあること、日本は戦闘に勝っても戦争に勝ったとはいえないこと、蒋介石を抗日に追いやったのは主に日本側に責任があることを述べている。日本軍の「略奪、強姦(ごうかん)、良民の殺傷、放火等」とも書いています。皇族として特権的に自由を享受しえた立場から、日中戦争の現実を明快に分析しています。 つまり、三笠宮さまは戦後になってから、戦争の罪悪性について言われたのではなく、戦争中から、満州事変以降の日本の軍事行動に対する強い批判を、一貫して持っていた。明らかに今で言うリベラルです。いかに皇族といえども、当時の中国戦線の最先端で、なかなかこういうことは言えないですよ。単に戦争一般を批判して、「戦争は罪悪だ」と言うのではない。目の前にある戦争の現実を冷徹に認識し、日中戦争全体を俯瞰(ふかん)する視点を持ち得ている。誰もこんな記録は残していない。三笠宮さまが、戦争の現実を通して書かれた「日本人トシテノ内省」。これを知ることは、後世のためにも重要ではないでしょうか。(聞き手・石田祐樹、東郷隆) |