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20182019


<POINT NEWS175>2016/08/07・・・(ヒューマニズムの視点で捉えよう、判断しよう)

sankaku175sankaku
2016/08/07sankaku08/15

 


辺野古問題「沖縄県民の抗議重要」 オリバー・ストーン氏強調(2016/08/15琉球新報)
【バークレー=問山栄恵本紙ワシントン特派員】米国の映画監督オリバー・ストーン氏は、日米両政府が進める米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設について「私が言えることは移設問題を最重要課題として据え続けることだ。(県民の)抗議はとても重要なことだ」と述べ、辺野古移設断念に向けて県民が声を上げ続けることの大切さを強調した。・・・「第2次世界大戦後、沖縄は残酷な、とてもひどい扱いをされてきた。米国はそれに大きな役割を果たしてきた」と米統治下の歴史を振り返った上で、「米国からの独立だけでなく、日本からの独立を考えるべきだ」と述べた。安倍晋三首相については「彼の行動計画を徐々に強行している。世界が何か恐ろしい所になるかのように、平和に対する私たちの本能を超えた恐怖を植え付け、安全保障政策を支配しようとしている」と指摘した。
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-336163.html

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<社説>終戦71年 平和への構想力磨き直そう(2016/08/15琉球新報)戦後71年の終戦記念日を迎えた。

 平和憲法の下で戦後を歩んできた日本が、再び戦争に向かいかねない暗雲が濃くなりつつある。同盟国と見なす他国の戦争に自衛隊が出動し、その国を守る集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法が施行されて迎える節目の日となった。憲法改正を目指す勢力が衆参両院で3分の2を占める政治状況が覆い被さり、非戦を誓う平和憲法が岐路に立っている。沖縄では、安倍政権による強権的な軍事施策が影を落とし、平和な島の未来像の実現が見通せない状況にある。・・・国民よりも国益を優先して守る軍隊の本質と、めまぐるしく変わる国際情勢を冷静に分析し、「平和国家」の真価を発揮する構想力を磨き直すことが欠かせない。・・・機動隊投入に見られるむき出しの権力を行使し、強固な反対の民意を無視して安倍政権が推し進める辺野古新基地の建設と、先島への自衛隊配備は、軍事に偏重する陣形を築くことになり、いたずらに中国との緊張を高めかねない。
http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-336130.html

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終戦の日に  冷静に過去見つめる勇気を(2016/08/15京都新聞)
リオデジャネイロ五輪は後半に入った。その熱気はメディアを通じてリアルタイムで地球の裏側にある日本まで届き、私たちを眠れなくする。4年後には2度目の東京五輪が控える。今から待ち遠しいが、日本が初めて五輪招致に成功してから今年でちょうど80年ということをご存じだろうか。京都新聞の前身、京都日日新聞は1936(昭和11)年8月1日付朝刊に「次回オリンピック大会 東京で開催に決定す」の大見出しを掲げ、二・二六事件の判決発表を脇に押しのけて1面トップで扱った。京都観光への政財界の期待も紹介しており、当時の興奮ぶりが伝わってくる。浮かれる世間を冷ややかに見る目もあった。京都帝大を卒業し、大谷大教授も務めた哲学者の戸坂潤は雑誌で、東京五輪を「国際的政治現象に他ならない」と評した。折しも開かれていたベルリン五輪はナチスによる国力宣伝の場と化していた。

初の東京五輪は幻に

 結局、紀元二千六百年の40年に予定された東京五輪は幻となる。日中戦争の泥沼化で総動員体制が進み、国内に「五輪どころではない」という空気が強まる一方、日本に批判的な諸外国の間にボイコットの兆しが広がったためだ。誘致から2年後、政府は開催返上を閣議決定した。京都日日は2面で小さく伝え、1面トップは「長期聖戦の遂行に」と勇ましい見出しの陸軍定期異動だった。「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会を奨励する」というオリンピック憲章の精神は、戦争や独裁政治、国威発揚とは相いれない。天孫降臨伝説の高千穂で聖火ならぬ「神火」の採火を大真面目に検討するような当時の日本には五輪開催の資格などなかった。戦争に突き進んだ日本は「幻の東京五輪」から5年後、敗戦を迎えた。その日から71年。国内外を見渡すと、信頼・友好・希望…といった言葉より、疑心・対立・不安…と暗い言葉が思い浮かぶ。・・・

憲法に魂入れる努力

 右へ傾斜する世論を背景に選挙で圧勝を重ねる安倍政権は、特定秘密保護法や集団的自衛権行使に道を開く安全保障関連法を次々に成立させた。次のターゲットは「戦後レジーム(体制)」の根幹である憲法の改正だろう。憲法が公布された46年11月3日付の京都新聞は、1面に天皇皇后両陛下の写真とともに社説を掲げた。「敗戦によって謙虚な心構えを取り戻すことの出来たわれわれは、真実の希求かつ世界平和を提唱する機会に恵まれた」と反省を込めて新憲法をたたえ、国民の「必死の努力」によって憲法に「魂を入れ」ようと訴えている。・・・待望の東京五輪は戦後75年の節目の年にあたる。憲章の理念に沿い、平和で幸せな大会にと願う。
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20160815_2.html

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終戦71年、不戦新たに 平和岐路、記憶継承に危機感(2016/08/15東京新聞)
終戦71年の15日、東京で政府主催の全国戦没者追悼式が行われ、各地でも戦争の犠牲者を悼む式典が相次いだ。政府は秋以降、憲法改正論議の本格化を目指し、安全保障関連法に基づく自衛隊の新任務実施への訓練開始も見込まれる。戦後の平和主義が岐路にさしかかる中、戦争を知る人らは不戦の誓いを新たにし、若者からは「記憶の継承」への危機感も漏れた。戦没者遺族約4900人が参列し、東京の日本武道館で開かれた全国戦没者追悼式では、父が戦死した広島県の小西照枝さん(74)が追悼の辞で「悲惨な戦争を繰り返さない」と述べた。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016081501002048.html

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終戦の日 戦争は今も続いている(2016/08/15東京新聞)
戦争はさまざまに語られるけれど、ではどれほどの実感をもって私たちは知っているか。防衛はただの外交用語ではむろんない。今も戦争は続いている。先月半ば、英国の新首相メイ氏が議会初演説をした。議題は英国唯一の核戦力である潜水艦発射型弾道ミサイル・トライデントを搭載する原潜四隻の更新の可否。核兵器の行使は首相のみが命令できる。


 野党議員の質問。
 <罪のない男女や子ども、十万を超す人を殺すかもしれないが、あなたはその(核の)スイッチを押す覚悟があるのですか>
◆メイ首相の核の即答
 メイ首相は、即座に堂々と答える。<あります。抑止力とはわれわれにその用意があると敵に知らせることです>敵がいるから抑止力は必要だ。理屈はむろんその通りであり、英国を含む同盟国は米国とともに冷戦時代はソ連と、今はロシアと核ミサイルを持ちつつにらみ合っている。首相の即答に対し、筋金入りの反戦主義者で労働党党首のコービン氏は問うた。<われわれは核兵器なき世界について議論してきました。その実現方法では意見が分かれても目指そうという決意では同じでした。大量破壊兵器による抑止が正しい方法とは思われない>
 採決は、労働党議員を含む断然多数で原潜の更新を認めた。・・・

二つのことに注目したい。
 一つは、核保有国の中に核をもたなくてもいいのではないかという議論が正面から出てきたことである。原潜基地が地元にある地域政党スコットランド民族党はこぞって反対した。・・・二つめは、議会で核兵器の使用はおびただしい無辜(むこ)の血を流させるという具体的な指摘がなされたことだ。戦争では兵士の死のみならず住民多数が巻き添えになる。


 戦争について、英国民の記憶になお新しいのはアメリカに引きずられるように参戦したイラク戦争だろう。兵士四万人以上を送り出し百七十九人が死亡した。連日のように盛大な葬列が進み、沿道は黙して頭を垂れた。・・・

◆実際の戦争のむごさ
 日本の昨年の安保法議論を振り返るのなら、流血のまるで見えないような、法文言のうえでの理非整合を問うだけのような国会のやりとりは、果たして実際の戦闘のむごさをどれほど国民に意識させたであろうか。戦争を知る世代は、戦争を知らない世代たちの戦争議論をはらはらしながら聞いていたのではないか。・・・イラク戦争で英兵士の息子を亡くした父親は「無駄死にした」と嘆き、同じ嘆きはイラクには無数にあるだろう。戦争をなくすのは容易ではないが、なくそうという決意は増やすことができる。一人の決意は集まれば大きな力になる。八月十五日は先の大戦の犠牲者を悼む日である。同時に戦争の罪過をかみしめる日でもある。世界では戦争は今も続いている。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016081502000121.html

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シールズきょう解散 諏訪原さん「活動の種、祖父がまいてくれた」(2016/08/15東京新聞)
 安全保障関連法に反対する若者グループ「SEALDs(シールズ)」のメンバーとして活動してきた諏訪原健(すわはらたけし)さん(23)は小学生の頃、毎年十二月八日に亡き祖父から電話を受けていた。八月十五日の終戦の日ではなく、真珠湾攻撃の日。「戦争を始めたらおしまいということだったのか」。いまの自分につながる原点として、残してくれた言葉をかみしめている。・・・「今日は日本が米国の真珠湾を攻撃して、太平洋戦争が始まった日だ。戦争では何も解決しない。幸せもないんだよ」この日以外に戦争の話を聞かされた記憶はほとんどない。「なぜそんな話をするのか、当時はよく分からなかった」。中学に進むと電話はかかってこなくなり、諏訪原さんが思い返す機会もなかった。記憶がよみがえったのは、特定秘密保護法や安保関連法に関心を持った大学生の時。帰省した際に戦争体験を聞いてみようとしたが、体調を崩していたためかなわなかった。いまは祖父の思いが分かるような気がする。「戦争が始まれば手に負えなくなり、どこまでも突き進んでいく。だからこそ、日本の過ちを忘れるなと伝えたかったのではないか」と諏訪原さん。「いつの間にか種をまいてくれていたんだと思う。祖父の遺志を受け継いでいきたい」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201608/CK2016081502000104.html

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『潮流』 「平和」を捉え直す(2016/08/13ヒロシマ平和メディアセンター)
 幼い頃、お盆には祖父母の家に親類が集まった。ある時、墓所の小さな墓について問うと、戦時中に若くして死んだ叔父叔母だという。40年ほど前、戦争のむごさを語って聞かせる大人がいた。その話に震え、平和な世に感謝して手を合わせた。原爆の日が過ぎ、あさっては終戦の日を迎える。夏は、平和が大事という思いを新たにする季節だろう。でも、現代日本で平和という言葉を見聞きすると、どこか気恥ずかしい―。そんな記述が1年前、オピニオン面「言」で取り上げた歴史社会学者、山本昭宏さんの新著「教養としての戦後<平和論>」にあった。30代の山本さんは考える。平和とは何かと、いま問うても「何となく良い言葉」であるため、深く議論されない。平和の議論が熱かった1960年ごろまでと、自分が生きてきた時代とで、何が違うのか。 ・・・ 広島県北広島町に住む30代の気鋭の画家は、特攻隊に所属した祖父や戦地で餓死した大叔父ら親族の体験を題材にする。調査や取材も入念にして絵筆を振るう。体験者とじっくり「対話」し、「想像」するから、作品に訴求力があるのに違いない。薄れ、消えゆく戦争体験を聞き、思いをはせる。そう努めて初めて、平和がはっきり分かるのだろう。
http://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=63448

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ドイツで風力発電が急増(こちゃん / 2016年8月14日みどりの1kWh)
陸上風力発電装置設置の駆け込み申請が急増している。理由は、この7月に再生可能エネルギー優先法(略称:再生可能エネルギー法、EEG)の改正が決まり、2017年からは促進される発電容量に上限が設けられ、国が決める固定の買い取り価格の代わりに競争入札制度が導入されるからだ。・・・風力発電業界の予測によると、今年設置される陸上風力発電装置の容量は4400MWに達する見込みだ。これは政府が適当だと考えている容量である2500MW(風車約1000基に相当)を大きく上回り、設置容量が過去最高だった2014年の4300MW以上に当たる。ちなみに2015年の新規設置容量は3500MWだった。・・・今年前半に設置された陸上風力発電装置の容量は2053MWで、1年前の同期間より約70%も多かった。今年中頃までの累積では、2万6561基、4万3544MWの陸上風力発電装置がドイツ全国にあったことになる。これらの装置がカバーする電力はドイツの総発電量の約12%に当たる。
http://midori1kwh.de/2016/08/14/8475

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80年前のベルリン・オリンピック(あきこ / 2016年8月14日みどりの1kWh)
1936年8月1日から16日間にわたってベルリンで開催された第11回夏季オリンピック大会は、ナチス政権にとってドイツを宣伝する絶好の機会だった。ヒトラー、ゲーリング、ゲッベルスといった中枢人物はもとより、国が一丸となって大会の成功に向けて心血を注いだ。その結果、ベルリン・オリンピックは大成功をおさめ、フランスやイギリスでさえ宣伝工作にまんまと乗せられる結果となってしまった。・・・最初の数ページを読むだけで、1936年8月1日(土)開会式当日の様子が生き生きと伝わってくる。ベルリンを代表するホテルであるホテル・アドロンに滞在していたIOC委員長のアンリ・ドゥ・バイユ・ラトゥール、ナチスの宣伝相ゲッベルス、「オリンピック讃歌」を作曲したリヒャルト・シュトラウスと彼の妻、ベルリン王宮前広場に集まった2万9000人のヒトラーユーゲント、「勝利の道」と名付けられたオリンピック・スタジアムまでの道路を埋め尽くした群衆を直立不動で見返すヒトラー、スタジアムに登場するヒトラー、入場行進する各国選手団の様子や、ヒトラーによる開会宣言、聖火点灯などが実に細かく、いろいろな人の視点から多角的かつ多層的に描かれる。最後に、開会式当日に秘密国家警察に届けられた警察への通報で第一日目の描写が終わる。・・・

ナチス政権が諸外国に対して、ドイツ国内での反ユダヤ政策や反対勢力に対する弾圧を隠すために、いかに周到にオリンピックを準備したかがヒルメス氏の記者会見で明らかになった。記者会見に参加した数日後、私はベルリンのオリンピック・スタジアムと当時のオリンピック選手村に行ってみた。広大な敷地にある選手村では、練習用のフィールド、体育館、プール、宿泊棟などいくつかの建物が残っていた。金メダル4つを獲得したアメリカの黒人選手ジェシー・オーエンスの部屋は、当時のように復元されている。オリンピック・タジアムを見下ろすように立っている鐘楼の1階と2階部分には、ベルリン・オリンピック開催以前から現在に至るまでのドイツのスポーツと政治の歴史がパネル展で示されていて、ヒルメス氏の記者会見での話と重ねて見ると興味深い。

・・・ベルリン・オリンピックがナチス政権のプロパガンダとして大成功したことは疑いない。80年前にベルリンで実践されたオリンピックの政治利用は、その後のオリンピックの歴史においても繰り返されてきた。「ナチスの手口を学んだらどうか」と言った政治家が閣僚の席を占める安倍政権が準備を進める2020年の東京オリンピックは、果たして政治利用されることはないのだろうか。福島原発事故の処理がどこまでどのように進んでいるのか、汚染水の問題はどうなっているのか、放射性廃棄物の処分がどうなっているのかなどなど、様々な問題は未解決のままである。“復興”という名目のもとにオリンピックが利用されるのではないだろうか。政府とオリンピック委員会が華々しくオリンピックの効果や成果を喧伝するその裏で、着々と「原発事故はなかったことにしよう。日本のエネルギー政策の中心である原発の再稼働を進めよう」という事態が生じるのではないだろうか。1936年のベルリン・オリンピックの光と影を見て、このような疑念が涌いてくる。
http://midori1kwh.de/2016/08/14/8461

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(18歳をあるく)戦争って何、演じて考えた(2016/08/14朝日新聞)

核のボタンに手を置いた。このまま力を加えれば、どうなるか。「人間を見もせずに、殺すということなのかな」8月初旬、都内の高校3年の平田純也さん(18)はSF劇「ヒカリの王国ZERO」の稽古に励んでいた。舞台は、戦火に見舞われた架空の惑星だ。平和を願って奔走するが、核で応戦するか否かの選択を迫られる大役に挑む。平田さんにとって「戦争」と向き合うきっかけになったのは昨年、演劇人による朗読劇「明日、戦場に行く」の舞台だった。東日本大震災で人命救助に尽力した自衛隊を志す中学3年の少年を演じた。安保法制をめぐる論議が高まる中、少年の将来を案じ、揺れる家族を描いた作品だ。・・・仲村さんは18歳の時、塚本晋也監督の「野火」(2015年公開)にエキストラとして参加。第2次大戦中、フィリピン・レイテ島で飢えに苦しみ、死線をさまよう日本兵の悲劇を描いた大岡昇平の小説が原作だ。砲撃で吹き飛ばされた自分の腕を傷ついた兵士と奪い合う様を演じた仲村さんは言う。「まるでホラー。人間が人間でなくなっていく。これが戦争なんだ」米空軍嘉手納基地を抱える沖縄市で生まれ育った。学校では沖縄戦の体験者を招いた講演など平和教育が盛んだった。今の基地問題の根っこに先の戦争があると意識するようになった。

 大学進学のため上京して初めて迎えた沖縄戦の「慰霊の日」、ふるさとの悲劇がほとんど話題に上らない本土の現実に違和感をおぼえた。思いが募り、一気に映画の脚本を書き上げた。沖縄で生きる多くの若者にとって、米軍基地も美しい海と同じように日常の延長線上にある。年配者から基地問題に「無関心」と見られることもあるが、「賛成」「反対」では割り切れない葛藤を抱える。そうした若者の姿を通じ、戦争がもたらした傷の深さを、県外や同じ世代の人々に伝えたいと思った。 「戦争体験者から直接話を聞ける最後の世代として、やるべきことがあるはずだ」。仲村さんは今、そう感じている。

http://digital.asahi.com/articles/DA3S12511234.html

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(声)語りつぐ戦争 人類史上、極悪極まる愚挙(2016/08/14朝日新聞)無職 松本隆(福岡県 81)

 あの光が一瞬にして幾万の命を奪い 街を焼き尽くし あの爆発音が百雷の如(ごと)く耳をつんざき あの爆風が一瞬にして形ある万物を壊し 人を生き埋めにし あの放射線が一瞬にして幾万人の体を蝕(むしば)み やがて死に追いやる青い空は一瞬にして暗黒と化し 黒い雨が人を襲い 人々は一瞬にして灰と化し 死肉と化し 平和な街は一瞬にして阿鼻叫喚(あびきょうかん)の地獄と化し そして死んだ。すべてが一瞬の出来事! その果てに鬼気に包まれたB29が南へ飛び去る。 それを操るのは人間 中では無機質な雄叫(おたけび)か それとも凍りつく沈黙か見渡す限りの焼け野原 屍(しかばね)が物に見えてくる私がそこにいた。

助かった命もつかの間の灯火となり 幾年経ても消えない差別と偏見 年を重ねてなお増す病魔・癌(がん)の恐怖

 あの一瞬が人類破滅への扉を開けた その扉を開けたのは一握りの人間 その扉を閉めるのは同じ人間 いったい誰

 平和を創(つく)り育み 守り続けるのは世界の人間 その平和を一瞬にして壊すのは一握りの人間 ああ なんという不条理

 二度と出会ってはいけない破滅の悪魔 二度と繰り返してはいけない広島・長崎の惨禍 二度と許してはいけない人類史上極悪極まる愚挙

■命ある限り「原爆」語り続ける 松本隆さんに聞く

 1945(昭和20)年8月9日、10歳の時に長崎で被爆しました。爆心地から3・5キロほど離れた自宅の近くでした。あれから71年。多くの被爆者が亡くなりました。風化も言われる中で、私なりに何か伝えられないか。思いついたのが「詩」です。生涯初めての詩作でした。すさまじい音と光と爆風。おびただしい死者。平和な街が一瞬にして地獄と化していく様子。詩の形を借りて、一部なりとも伝えたかった。詩の最後にある「極悪極まる愚挙」という言葉は、自然に出てきました。死者の魂に突き動かされたとしか思えません。投下の数日後、爆心地近くの親類の家を訪ねました。道には遺体が散乱していました。それが物にしか見えなかった。あまりの悲惨さに気が変にならないように、精神を自分で麻痺(まひ)させていたのかもしれません。人の心をそんなふうにしてしまうのが、原爆のおぞましさなのです。今も長崎市内にたたずむと、死者が話しかけてくる気がします。今、私は「福岡市原爆被害者の会」に入り、語り部として小・中学校で話をしています。気力と体力を振り絞り、被爆体験を語ります。私に残された時間は少ないかもしれません。でも、命ある限り「原爆」を語り続けたいと思っています。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12511091.html

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(ひもとく これからの君へ)歴史に学ぶ 次の戦争を起こさない責任 赤川次郎(2016/08/14朝日新聞)

 広島生まれの女優、綾瀬はるかが、自分の祖母をはじめ、広島、長崎から沖縄など各地で、すでに高齢となった戦争体験者の話を聞いた、『綾瀬はるか「戦争」を聞く』の中で、最も印象的なのは、婚約者が真珠湾攻撃に参加、撃墜されて死んだという八十六歳の女性である。取材班に同行して二〇一〇年、ハワイを訪れたこの女性は、まるでたった今恋人を殺されたかのように、米兵への憎しみをあらわにして綾瀬を当惑させる。まるで七〇年前で時間が止まったままのように。しかし、戦死した米兵のことを聞き、婚約者が墜落した場所に案内される内、「憎しみ」は「悲しみ」へ、そして「感謝」へと変わっていく。七〇年という時を、一日で生きる女性の姿は感動的であり、同時に体験を歴史に変えるにはどんなに年月が必要かを語っている。・・・ 「もういい加減、戦争責任の話はやめてほしい」と、うんざりした顔をする人は少なくない。確かに、今青春を迎えている人々にとって、遠い戦争の「責任」と言われても戸惑うばかりだろう。しかし、私たちは常に「次の戦争を起こさない責任」を負っているのだ。そのためには、かつて戦争がどのようにして起こり、人々はなぜそれを止められなかったのか、学ばなければならない。

 日中戦争から太平洋戦争へ、様々な大国の利害が絡み合う中、日本がどのように戦争への道をたどったか、加藤陽子氏が中高生に講義した記録である『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』は、歴史家としての冷静な視点の貫かれた本である。いま、中高生がこの本を読んで理解するのは容易でないと思うが、戦争とはそれほど複雑な顔を持っているのだということでもある。残念なことに、第二次世界大戦にかかわった国の中で、日本は今も侵略や虐殺の事実を認めようとしない人々が国の中枢部に多くいる「特殊な国」である。その特殊さはこの本に挙げられた、「捕虜の扱い」に見られる。ドイツ軍の捕虜になった米兵の死亡率が1・2%なのに、日本軍の捕虜になった米兵では37・3%に上る。自国の兵士をも使い捨てた国は敵国の兵士を人間扱いしなかった。その象徴的な事件が、「九大医学部生体解剖事件」である。捕虜の米兵を生きたまま解剖した(当然兵士は死んだ)この事件は、「戦争が医師をも狂わせた」出来事として知られる(『九州大学生体解剖事件』熊野以素著、岩波書店・2052円)。

しかし、罪は戦争にあった、と本当に言えるのだろうか、と私は疑問に思う。あの東日本大震災での福島原発事故。放射能被害に対し、「心配ない」「大したことはない」と言い続け、被曝(ひばく)した子供たちへの影響まで、平然と否定する医師を見ていると、戦時下でなくても、医の倫理が失われることはあると思わないわけにいかない。・・・ 反戦も反原発も、「人間への愛」に根ざしたものでなければ、国家という大きな力に勝てない。ロマン・ロランの『ピエールとリュース』をここに挙げたのは、第一次大戦下で、一組の恋人たちが戦火に押し潰されていく悲劇の中に、戦争の非人間性への真実の怒りがあるからである。愛する人を死なせたくない。その思いは文学や芸術の中からこそ生まれる。非戦の決意の土台を、若い日々に固めておくことが大切なのである。

http://digital.asahi.com/articles/DA3S12511070.html

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SEALDsが残したものは 「訴えたい」動いた若者ら あす解散(2016/08/14朝日新聞)
安全保障関連法や憲法改正への反対運動を展開した学生団体「SEALDs(シールズ)」が15日、解散する。結成から1年余り。「おかしいことはおかしいと言おう」。そんな呼びかけを受け、街頭でのデモが東京で、各地で広がった。シールズが残したものは何なのか。実際に接した人たちに聞いた。・・・きっかけは昨年5月、ネットで見たシールズのデモの動画。「反対」と叫ぶだけでなく、自分の言葉で訴えていると感じ、「私も訴えたい。政治を語れる社会に変えたい」と思った。

 だが、デモがある国会前までは電車を乗り継いで片道約4時間。東京でのデモに何度か参加したが、頻繁には行けない。「東京の動きにぶら下がるだけでなく、地元でやろう」と思い立った。宇都宮市で1月、改憲反対を訴えるデモを初めて実施。グループは今夏の参院選後に解散したが、「訴えたいことがあれば、また行動すればいい。シールズに出会い、そう思えるようになった」と話す。「戦争させない・9条壊すな! 総がかり行動実行委員会」の高田健さん(71)も、その一人だ。昨夏からデモなどでシールズと連携。参院選ではシールズなどと一緒に野党共闘を呼びかけ、全32の1人区で4野党の統一候補が実現した。高田さんは「シールズがなくても共闘はできた気がする」と話しつつ、こう言う。「彼らのおかげで野党支持者の幅が広がったのは間違いない」・・・
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12511192.html

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(ひと)セルジオ・マシャードさん スラムの「希望」を活写するブラジルの映画監督(2016/08/12朝日新聞)
五輪の熱戦が続く母国ブラジル。大都市では犯罪が多発する。中でも「ファベーラ」と呼ばれるスラム街は、危険に満ちた地域だ。そこに生まれた「若者たちの交響楽団」を題材に、映画「ストリート・オーケストラ」(日本公開は13日)を撮った。サンパウロで最大のファベーラで20年前、NGOがつくった実在の楽団がモデル。主人公のバイオリン教師は、生計のために指導を引き受けるが、無気力で反抗的な生徒ばかり。衝突しながら、練習を重ねるうち、音楽はすさんだ環境で暮らす子どもたちの心の支えになっていく――。・・・約10年前にも、ファベーラの若者の友情、恋愛を描く作品を世に出した。「暴力、犯罪など、ブラジルが抱える問題は大きい。でも、大勢がそれと闘っている。私は希望について語りたい」
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12508299.html

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(声)若い世代 伝えるべきこと声で伝えたい(2016/08/12朝日新聞)専門学校生 吉田里咲(神奈川県 19)

 アルバイト先のコンビニで、バイト仲間の男子高校生が社員に怒られた。理由は遅刻だが、社員は遅れたことではなく、「社会に出たら連絡が大切。LINE(ライン)のメッセージでなく、電話をしなさい」と怒っていた。考えてみれば、私も電話だと少し緊張してしまいがちで、慣れているLINEやメッセージアプリを使う。そのような人は多いのではないか。おわびをする時、何かのお願いをする時は会って直接話すべきだ。それができない時は、メールやメッセージを一方的に送るのではなく、電話をして自分の声で伝えるべきだと思う。声には、自分の気持ちや感情を乗せることができるからだ。離れていても簡単に連絡がとれてしまう時代。だからこそ、相手に自分の思いを直接届けることを大切にしていきたい。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12508295.html

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戦争の悲劇や戦友への思い、いま遺す 旧制園部中の5人が冊子(2016/08/12京都新聞)
 旧制園部中(現園部高)を1941(昭和16)年3月に卒業した男性5人が、戦時体験を冊子「戦友の時空」にまとめた。戦争がもたらした悲劇や亡くなった戦友の記憶をつづり、平和の尊さを呼び掛けている。老舗和菓子店「くりや」会長の山名長雄さん(92)=京都市下京区=が「同世代が年々少なくなる中、後世に体験を語り継ぎたい」と思い立った。同級生で同中11回卒業生の塩貝春男さん=京都府亀岡市=、前林登さん=京丹波町=、山口吉雄さん=京丹後市=、畑田重夫さん=静岡市清水区=が寄せた原稿を四六判51ページにまとめた。・・・畑田さんは「原爆投下や終戦の事実さえ、知らされなかった」と軍隊生活を述懐し、「戦争は敵、味方を問わず全ての人に無意味なもの」と記した。特攻隊員として訓練を重ねた前林さんは玉音放送を聞き、「あぁ、助かった、と心の中で叫んだ」と当時の心境を打ち明け、「戦争は最も人権を無視した行為。特攻は最たるもの」と強調した。
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20160812000079

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再稼働、住民ら抗議「海汚すな」(2016/08/12京都新聞)
ゲート前、地元必要の声も/「瀬戸内海を汚すな」。四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)の周辺では12日早朝から、再稼働に反対する住民ら約50人が、横断幕やのぼりを掲げて抗議の声を上げた。第1ゲート前には、福島や福井、鹿児島の原発立地県のほか、東京、京都、大阪からも反原発を唱える市民らが集合。拡声器で演説したり、声を合わせて「再稼働反対」「再稼働を許さない」などと叫んだりした。
http://www.kyoto-np.co.jp/environment/article/20160812000054

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伊方、不安置き去り再稼働 周辺自治体に広がる懸念・反対(2016/08/12東京新聞)
四国電力は十二日午前、伊方原発3号機(愛媛県伊方町)を再稼働させた。東京電力福島第一原発事故を踏まえ策定された原子力規制委員会の新規制基準に適合した原発では九州電力川内1、2号機(鹿児島県)、関西電力高浜3、4号機(福井県)に次ぎ五基目。川内1号機の再稼働から一年たち政府は原発活用を加速させたい考えだが、伊方原発近くには長大な活断層「中央構造線断層帯」が通り、熊本地震を機に活発化する懸念や、事故時の避難計画の実効性に不安も根強い。日本一細長い半島に位置し、事故時には住民避難も収束作業も支援も困難が予想される四国電力伊方原発3号機(愛媛県)が再稼働した。・・・ 険しい半島の岩場を切り崩し、埋め立てて造った原発。敷地に余裕はない。事故時の対策拠点も必要最低限の施設で、休むスペースはなく、トイレも仮設が一つあるだけ。福島のような高濃度汚染水問題が起きても、保管するためのタンクの置き場も見当たらない。「新規制基準を満たせば、事故はある程度で止まる」。そんな危うい仮定の上で、伊方原発の「安全」は成り立っている。 (山川剛史)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201608/CK2016081202000241.html

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(ザ・コラム)核廃絶、日本から 「原爆6000発分」を放棄せよ 駒野剛(2016/08/11朝日新聞)
「なぁ、これ、本物なん?」「そんなわけないやろ」子どもの問いかけに母親が答える。親子の視線の先に鎮座するのは、直径1・52メートル、長さ3・25メートル。黄色に塗られたグロテスクな球体。四角の尾がくっつく。おどけた名がつく。「ファットマン」、つまり「太っちょ」。居場所は長崎市の爆心地近くに立つ原爆資料館で正体は世界初のプルトニウム型原爆。ただし模型だ。・・・米国が造った原爆は、2タイプあった。一つは広島で使われたウラン235を原料にしたもの。もう一つがプルトニウムを用いた長崎型である。いずれも核分裂反応を極めて起こしやすい特性がある。核分裂を一挙に爆発的に起こせば原爆になる。

 235は天然ウランに0・7%ある。100%近くに精製すると原爆が造れる。

 プルトニウムは自然界に存在せず、原子炉で生まれる人工物だ。原発で燃やされる核燃料は約4%がウラン235、約96%がウラン238。この238が原子炉で中性子を浴びるとプルトニウムに変わるのだ。 原子力発電では、ウラン燃料全体の5%ほどが使用され、残りは「再利用」できるウランかプルトニウムとして残る。プルトニウムはウランのように濃縮の手間をかけずに、核爆弾を造れる。・・・日本はプルトニウムを約48トン保有している。8キロで原爆一つを造れる、とされるから約6千発分に相当する。米ロなど核武装国を除けば、世界有数の核保有国である。・・・核兵器の保有国に対し、「各国の備蓄から国際的な原子力機関に対して、それぞれ供出を行い、今後も継続する。そうした国際機関は、国連の支援の下で設立されることが望ましい」と求めたのだ。唯一の被爆国であると同時に、プルトニウム保有大国であり、核兵器の開発の潜在能力も持つ日本こそが、推進できる提案ではないか。広島でのオバマ演説の具体化に、日本こそがまず一歩、踏み出すのだ。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12506543.html

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(声)靖国参拝は「心の問題」ではない(2016/08/11朝日新聞)非常勤地方公務員 荒川和成(千葉県 64)

 稲田朋美防衛相は、靖国神社参拝について「心の問題」と述べた。だが閣僚の靖国神社参拝は、本当に「心の問題」なのか。二つ指摘したい。一つは靖国神社そのものについてだ。靖国神社は戦前に国家神道、軍国主義の中心的存在となり、国民の戦意高揚を図った。戦後はA級戦犯がまつられた。政府には、再び間違った戦争に国民を巻き込んではならないという義務がある。その義務を果たす姿勢を示すためにも、閣僚の靖国参拝はあってはならない。もう一つは、稲田氏の靖国参拝が国内外に誤ったメッセージを発信する恐れがあることだ。靖国神社の境内の遊就館では、先の大戦を美化する展示をしている。「東京裁判で歪(ゆが)められた歴史の真実に迫る」などとうたうドキュメント映画も上映している。稲田氏は以前、東京裁判検証の考えを示しており、参拝すれば東京裁判は不当との立場だと多くの人に受け止められるだろう。閣僚の参拝は、東京裁判を受け入れて国際社会に復帰した戦後日本の出発点の否定にもつながる。閣僚の靖国参拝は、決して個人の心の問題ではない。

http://digital.asahi.com/articles/DA3S12506546.html

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(福岡伸一の動的平衡:37)蝶の飛行メカニズム(2016/08/11朝日新聞)
久しぶりにアサギマダラを見た。その名のとおり、浅葱(あさぎ)色と褐色に縁取られたこの蝶(ちょう)は実に優雅に宙を舞う。ひらり、ひらり、ゆらり。科学はまだ蝶の飛行メカニズムをきちんと解明できていない。飛行機が飛ぶ原理は鳥が滑空する方法と同じである。強い翼の羽ばたきで(飛行機の場合はエンジンで)推進力を作り出す。翼の断面は非対称の流線形になっていて、翼の上面で空気の流れが速く、下面では遅いため気圧の差ができる。それが身体(機体)を持ち上げる。しかし蝶が飛ぶ原理はまったく異なる。翅(はね)は、極細の骨組みにセロハンのような軽量の膜が張られているだけ。強い推進力もない。でも蝶は、向かい風でも、横風にあおられようとも、決して落ちることなく右へ左へ自在に飛び続ける。進化の長い歴史を眺めると、蝶を含む昆虫こそが最初に空中に飛び出すことに成功した生命体だった。鳥が出現したのが約1億5千万年前のジュラ紀。虫たちはそれより3億年も早く、すでに空を制していたのだ。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12506529.html

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シールズ琉球、活動継続 辺野古、高江緊迫受け(2016/08/11琉球新報)
 安全保障関連法への反対などを訴えてきた若者たちのグループ「SEALDs(シールズ)」が15日に解散するが、沖縄の学生らでつくる「SEALDs RYUKYU(シールズ琉球)」は10日までに、活動を当面は続けていくことを決めた。県外の著名人らを招くサロン(勉強会)などを続ける。中心メンバーの玉城愛さん(21)=名桜大4年=は、米軍北部訓練場のヘリパッド建設や名護市辺野古の新基地建設を挙げて「二つの問題が活動の根幹にある点で、県外のシールズとは状況が違う。特に高江で緊迫した状況がある中で、解散というのは考えられない」と話している。
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-333963.html

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鹿児島・川内原発、再稼働1年(2016/08/11共同通信)
九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)は11日、再稼働から1年が経過した。東京電力福島第1原発事故を受けて施行された新規制基準に適合した原発として初めて再稼働し、これまで大きなトラブルはない。ただ、「脱原発」を掲げる三反園訓県知事は一時停止を九電に要請する方針。再稼働に反対する住民ら約80人が原発正門前で抗議活動を展開した。
http://this.kiji.is/136304030708301828?c=39546741839462401

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(社説)被爆の体験 記憶を枯らさぬ伝承を(2016/08/10朝日新聞)
 「原子雲の下で人間に何が起きたのかを知ってください。それこそが核兵器のない未来を考えるスタートラインです」きのう原爆投下から71年となった長崎で、田上(たうえ)富久市長は被爆地への訪問を世界に訴えた。あの日、何が起きたのか。じかに知る被爆者は年々減っている。記憶を枯らさず、体験をどう伝えるかは、広島・長崎だけの責務ではないだろう。新たな試みは始まっている。東京都国立(くにたち)市は、被爆の伝承者を育てる活動に乗りだした。・・・中学生たちは講演会での発表で、平和を築くための意識を語った。「私たちは微力だが、無力ではない」。世代を超えて被爆体験を知り、考えていくことの大切さを痛感したという。外務省は昨年やっと、外交官の卵を対象にした広島研修を再開した。07〜09年度以来だ。約60人が参加した今年、無記名の感想にこうあった。「被爆者のお話を拝聞し、外交官の立場として何ができるかということを深く考えさせられた」外交にも市民の声や知恵を生かすのが民主国家の潮流だ。とりわけ被爆者の声は時代を超えた警告であり、祈りである。歴史という壮大な織物も、目をこらせば一人ひとりの紡ぐ糸でできている。核なき未来も同じであることを心に刻みたい。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12504711.html

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「黒こげの少年」世界へ 長崎「原爆の日」(2016/08/10朝日新聞)
長崎原爆の悲惨さを伝えてきた写真の一枚が「黒こげの少年」だ。長崎市の姉妹が、少年は兄ではないかと直感し、鑑定の結果、その可能性があることがわかった。被爆から71年にしての「特定」。兄を思う姉妹の心は、若者を通し、世界へ広がろうとしている。 9日午後、長崎市の西川美代子さん(79)と妹の山口ケイさん(76)は、長崎市の寺で営まれた原爆犠牲者のための法要に参列した。寺には、焼け野原に残された身元不明の遺骨が多数納められていて、兄の谷崎昭治(しょうじ)さんの遺骨もあるはずだと信じ、毎月9日、足を運び続けている。亡き母も同じ思いで通っていた。・・・ 姉妹は昨年、長崎市で開かれた原爆写真展を訪れ、「黒こげの少年」を見て直感した。「じっちゃん(昭治さんの愛称)だ」。優しかった兄の面影があり、思わずなでた。法医学者による鑑定で、目や鼻の特徴などから「同一人物の可能性がある」とされた。長崎東高(長崎市)2年の安野伊万里(やすのいまり)さん(16)は、そのことを報じた新聞記事を見て「70年経ってお兄さんとわかるって、なんて強い思いだ」と驚いた。安野さんは昨年から、高校生による核兵器廃絶のための署名集めの活動に参加している。今月中旬には「高校生平和大使」として、集めた署名をスイス・ジュネーブの国連欧州本部に届け、国連軍縮局長らを前にスピーチをする。

http://digital.asahi.com/articles/DA3S12504860.html

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<社説>被爆から71年 「核なき世界」へ踏みだそう(2016/08/10琉球新報)
 広島、長崎の町が一瞬にして焦土と化した原爆投下から71年がたった。オバマ氏が初めて現職の米大統領として広島を訪問した今年、広島、長崎両市長は平和宣言でオバマ氏の行動を評価した上で、改めて核兵器保有国首脳の被爆地訪問を求めた。「核なき世界」を構築するためにはまず、唯一の被爆国である日本を訪れ、核兵器の非人道性を首脳自身が見て、聞いて、さらには五感で感じ取ってもらいたい。歴史の節目とも言えるオバマ氏広島訪問を契機に「核なき世界」実現へ踏みだす年としたい。・・・オバマ氏は広島訪問を契機に、核兵器の先制不使用宣言や、爆発を伴う核実験の禁止を呼び掛ける国連安全保障理事会決議案提出などを準備しているとされる。残り任期が半年を切る中で、政権の「遺産」をつくる意図との見方もあるが、米国の核政策を大転換する英断を歓迎したい。中でも先制不使用宣言は、核兵器の役割低減につながり、今以上の核拡散を防止する効果も期待できる。残念なのは日本政府の対応だ。「核の傘」弱体化を恐れ、政府内での反対論が根強いことから米国に2国間協議を申し入れている。冷戦時代の遺物である「核の傘」に頼る発想は時代遅れだ。同盟国であるならば米国と連帯し、核廃絶への道筋をつくることが被爆国としての役割でもある。懸念されるのは被爆、戦争体験の風化だ。厚生労働省によると、被爆者健康手帳を持つ人は2016年3月末時点で全国に約17万人、平均年齢は80・86歳と高齢化が進む。国内で唯一住民を巻き込んだ地上戦があった沖縄とも共通する課題だ。道のりは遠いかもしれないが、体験者とその次の世代が協力し、核なき世界、戦争のない世界の実現まで連帯することを改めて確認したい。
http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-332939.html

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筆洗/公開中の映画『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』(2016/08/10東京新聞)
公開中の映画『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』は、パリ近郊の高校で起きた実話から生まれた作品だ。社会や学校から疎外されていらだち、ときに民族や宗教を背景にした憎悪をむき出しにする生徒たちに、先生が提案する。ホロコーストについて学ぼう▼なぜ、そんな過去の話を、と拒絶反応を見せる生徒たち。しかし、十五歳で強制収容所に送られ、家族を大虐殺で奪われた老人と会うことで、彼らの顔つきが変わる▼「なぜ生き延びられたのか」と問う生徒に、老人は語る。生きて友だちと再会してその体験を武勇伝として話し、「強い奴(やつ)だ」と認められたかった。「自慢でも何でもいい、ほんの些細(ささい)なことが生き抜くための力になるのだよ」▼そんな言葉を聞くうち、昔話だった戦争の時代が、同世代の物語として生徒の前に立ち現れる。歴史が彼らの足元につながり、生徒たちの、今を見る目が変化していく▼被爆から七十一年。きのう長崎の平和祈念式典で読み上げられた「平和宣言」は、指摘した。<被爆者の平均年齢は八十歳を越えました。世界が「被爆者のいない時代」を迎える日が少しずつ近づいています。戦争、そして戦争が生んだ被爆の体験をどう受け継いでいくかが、今、問われています>▼体験を受け継ぐことは、決して後ろ向きの営みではない。それは、今を変える「奇跡の教室」となりうるのだ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016081002000129.html

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当時のきな臭さ今も 戦争の時代を描く 佐江衆一さん(小説家)(2016/08/09東京新聞)
純文学から社会派もの、伝記、時代小説まで、幅広い分野で作品を発表してきた佐江衆一(さえしゅういち)さん(78)が、少年期に体験した戦争の時代を描く長編『兄よ、蒼(あお)き海に眠れ』を刊行した。二年前に出た『昭和質店の客』(ともに新潮社)の姉妹編で、学徒出陣で海軍に入り人間魚雷「回天」の搭乗員になった兄と、宮城県に学童疎開して終戦を迎えた弟の物語。戦争に翻弄(ほんろう)される兄弟の心の叫びは、生と死、戦争と平和について考えさせる。・・・ 「関係者の手記や戦記、回天特攻隊員の遺書や日記などの資料はたくさん読みましたが、それをどう使うかとなるとなかなか難しい。私の書くのはドキュメントではなく、小説ですから。例えば『兄よ…』では、回天の元隊員には一人も会っていません。会って話を聞くと、その人の考えにとらわれてしまいますから。また戦後何十年もたつと、本人の思いも当時とはかなり変わっているでしょう。そこで、私が善一郎だったら何を考え、どう生きたかということを作家の想像力で作っていくわけです」戦争の時代とは何か。二作を読んで浮かび上がってくるのは、まず「生キテ虜囚ノ辱(ハズカシ)メヲ受ケズ」(戦陣訓)というモラルが強制された社会で扱われる人のいのちの軽さ。そして、満州で保男が得た広大な農地が自ら開墾したものではなく満州の人たちから取り上げた既耕地であったことが示すのは、「王道楽土」とか「五族協和」という美しいスローガンのいかがわしさである。「戦争の時代を庶民がどう生きたかということは、この二作で書き上げたつもりです。しかし、そういう時代の流れをつくった人たちがいて、そういう方向へ持っていった力があるわけです。次は、それを過去のことではなく、現在につながる話として書きたいと思っています。例えばいま、尖閣諸島の問題など、じつにきな臭い。日本が満州国をつくり、エネルギー問題を解決するために南方へ進出した頃と似ているのではないか」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/culture/doyou/CK2013092502100026.html

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陛下のお気持ち  生前退位の国民的な議論を(2016/08/09京都新聞)
陛下は即位してから28年、憲法が定める国事行為と宮中祭祀(さいし)に加え、皇后さまとともに、大災害の被災地訪問や先の戦争で多くの犠牲を生んだ国内外の地を巡る「慰霊の旅」などを精力的にこなしてきた。阪神大震災や東日本大震災、そして今年4月の熊本地震でも被災地を訪れた。腰を折り、床に膝をついて被災者に励ましの言葉をかけた。戦後50年の1995年以降、長崎、広島、沖縄、さらにはサイパン、パラオ、フィリピンを訪れて拝礼し、戦争の惨禍を繰り返してはならないとの信念を体現してきた。・・・共同通信の緊急電話世論調査によると、生前退位について85・7%が「できるようにした方がよい」とした。「82歳の陛下の公務が多いと思うか」の問いに「多いと思う」と答えた人は89・5%に上った。退位制度ができることを容認する意見が大勢を占めたが、政府は生前退位がもたらす影響を国民に詳しく示すべきだ。
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/

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トルコ・クーデター未遂 ― ドイツに暮らすトルコ人の心境をめぐって(あや / 2016年8月7日みどりの1kWh)
7月15日、トルコでクーデター未遂事件が起こってから、ドイツでは、この政変に関するニュースが、テロ関連のニュースと並んで新聞やテレビを賑わせている。たくさんのトルコ系の人たちが居住するベルリンにとって、連日の報道は決して対岸の火事ではない。今、ベルリンのトルコ・コミュニティーは、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領及び与党公正発展党(AKP)を支持する人々と、それに反対する人々の間で、大きく揺らいでいる。・・・「でも、一体どうして?」「非常事態宣言が出され、それに乗じて、報道の自由がひどく制限され、軍、司法、警察、教育機関の公職者の多くが解雇され、さらには研究者の出国までもが禁止された。死刑制度を復活させようという流れも強まっている。そういうことを知っているのに、どうしてトルコ人たちは、エルドアンを支持するの?」とその場にいたドイツ人たちは分からないという顔をした。・・・皆、一様に感情的だった。不公正だ、という気持ちが前面に出ていた。私は、正直に言って、彼らが訴えるロジックにあまりうなずくことは出来なかったが、どうして彼らがこんなにも苛立っているのか、その感情の流れは少なくとも理解できた。そのきっかけは、ある中年女性の言葉だった。「ドイツで、私たちは色々な差別にあっている。今のような状況では特にそうよ。嫌な思いをたくさんしてきたの。あなたたちには分からないわ。私はトルコという国に自分の起源があることを誇りに思う。その私の大切な心のよりどころを、よりにもよってドイツに侮辱されるなんて、耐えられない」彼女は、この発言をもとからしようと思ってしたわけではなさそうだった。議員や他の参加者とのやりとりで感情が高ぶって、思わず出てしまった本音のように、私には聞こえた。そこには、ロジックではなく、傷ついてささくれた人の心があった。

http://midori1kwh.de/2016/08/07/8434

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パキスタンで爆発70人死亡 南西部の病院、自爆テロか(2016/08/09東京新聞)
【イスラマバード共同】パキスタン南西部バルチスタン州の州都クエッタの国立病院で8日、爆発があり、病院は少なくとも70人が死亡、112人が負傷したと明らかにした。地元警察当局者は自爆テロとの見方を示した。イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」から分派したグループが犯行声明を出した。警察当局が動機や背後関係を調べている。このグループは今年3月にも東部ラホールの公園で70人以上が死亡した自爆テロで「イースター(復活祭)のキリスト教徒を標的とした」と犯行を認めていた。
 バルチスタン州では、弁護士らを標的にした殺害事件が相次いでいる。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016080801002178.html

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(象徴天皇のこれから:1)「象徴」とは、追求の末 8年ほど前、陛下「先のこと」言及(2016/08/09朝日新聞)
「常に先のことを見越して判断することが大切だと思います」。象徴天皇として自らはどうあるべきか。親交のある男性に、陛下は理想とする姿を切々と語った。「先のこと」には、皇室の将来への思いがにじむ。8年ほど前のことだ。同じ頃、陛下は変調を訴えた。ストレスによる胃腸炎と診断され、宮内庁幹部が「心労や心痛をじっと耐えていらしたと思う」と明かすなど、体調不良が表面化した時期だった。・・・「陛下は周囲が説得しても、お若い頃と同じ高度で飛び続けようとされる。それなら譲位も含め、選択肢を増やそうというのが支えるものの総意だった」と宮内庁関係者は明かす。風岡長官によると、陛下の意向を踏まえ、象徴のあり方についてのお気持ちを公にすることを昨年から検討。年末の陛下の誕生日会見で表明する案もあったが、宮内庁内での検討を優先すべきだとの意見があり、今年に入って公務との兼ね合いを見ながら日程を再度調整された。記者会見も検討されたが、テロップを付けるなどして多くの人たちに見てもらうことを考慮し、ビデオメッセージに決まったという。

http://digital.asahi.com/articles/DA3S12503078.html

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(WEBRONZA)ますます混迷、米社会の対立(2016/08/09朝日新聞)
白人警官による黒人射殺や黒人による白人警官襲撃など、銃絡みの事件が米社会に衝撃を与えています。「なぜ銃撃事件が連鎖するのか」(7月25日)で、認知神経科学者でカリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授の下條信輔氏は、「遠く日本からみれば『黒人と白人警官たちの戦争』にしか見えないのでは」としつつ、「だが事態は複雑で、問題の根は深い」と指摘。「誰を敵(仲間)と見るか」という「集団アイデンティティー」が事件の深層を解くカギになると述べます。現在のアメリカ社会で静かに深く進行している事態は複雑です。「イングループ(社会集団内部)とアウトグループ(外部)」の対立が先鋭化すると同時に、「複数の『内部/外部』軸が重なり、交錯」し合っている状態で、アイデンティティーがねじれ、邪悪の対象や正義の定義がゆれ動いているそうです。グローバル化で「国家」のアイデンティティーが不透明になる中、「日本にもこうした過激な対立の軸が芽生えつつあるのだろうか」――。下條さんからの問いかけです。

http://digital.asahi.com/articles/DA3S12502965.html

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(声)原爆の悲惨さ、もっと訴えねば(2016/08/09朝日新聞)無職 山脇佳朗(長崎県 82)

 長崎原爆の日の8月9日が近づくと、私たち被爆者は市内の小中学校で体験を話す。今年もたくさんの感想文が届いた。「話して良かった」という思いが胸に広がった。感想文の中に「オバマ米大統領の広島訪問は、良かったと思いますか」という質問がいくつかあった。大統領の広島演説の全文を改めて読んだ。冒頭の言葉はこうだった。「71年前、明るく、雲一つない晴れ渡った朝、死が空から降り、世界が変わってしまいました」最初に読んだときと同様に、あぜんとした。冗談じゃない。これでは、広島に雨か雪でも降ったといわんばかりではないか。「あの朝、1発の原爆が投下され、それまで見たこともない悲劇が起きました」と言うべきなのだ。

 もちろん、現職大統領が広島を訪問することや原爆投下について発言することについて、米国内で強い反発があったことはよく知っている。しかし、原爆死没者慰霊碑に黙祷(もくとう)し、被爆者を前にしての発言にしては、あまりに空疎だ。被爆した私たちは、原爆がいかに悲惨な結果をもたらしたかを、もっと強く訴えねばならぬ。その思いを新たにした。

http://digital.asahi.com/articles/DA3S12502967.html?ref=pcviewpage

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(声)長崎の夜空彩る花火に平和思う(2016/08/09朝日新聞)無職 向井靖雄(長崎県 82)

 長崎市で「ながさきみなとまつり」があり、2夜にわたって計約1万5千発の花火が大勢の観客を魅了した。会場から約4キロ離れたところには原爆の落下地点があるが、観衆のどれだけの人がそのことに思いをはせただろうか。次々に打ち上げられる花火を見上げながら、「平和な時代になったものだなあ」と、ひとり感慨にふけった。戦時中は、花火ではなく高射機関砲の曳光(えいこう)弾が夜空を切り裂き、幼かった私は震えながらそれを見ていたものだった。戦後71年。戦争で亡くなった多くの人の墓標の上に、なんとか平和な日本が築きあげられてきた。だから、今の平和な日々はかけがえのないものだ。現代に生きる者は、何としてもこの平和を守り続ける義務と責任がある。戦争で生き残った人間として、日々、その思いを強くしている。夜空を彩る華麗な花火に歓声をあげるひとときは、貴重な至福の時間だ。しかしそれは、平和な時代でなければ体験できない瞬間なのだ。そのことをかみしめ、平和の大切さを改めて思い知らされたのは、私一人ではなかったと信じたい。

http://digital.asahi.com/articles/DA3S12502968.html?ref=pcviewpage

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(にっぽんの負担)公平を求めて 「お金ない」治療を断念(2016/08/08朝日新聞)
「このまま帰る。何もしないで」救急で運ばれた時のことはなにも覚えていない。看護師らに後日聞くと、こうくり返していたそうだ。3年前の夏のことだ。埼玉県三郷市に住む女性(63)は、50代半ばから糖尿病を患っていた。だが、救急搬送される1カ月前に血糖値を下げるインスリンの注射をやめ、その影響で心臓の状態が悪くなっていた。注射をやめたのは、お金がないからだった。女性は19歳で結婚し3人の子を産んだが、40代で離婚。その後は1人、パン工場や清掃工場のパートで生計を立てた。10年ほど前、居酒屋で知り合った男性と同居を始めた。その頃からだるさやめまいを感じ、仕事を続けられなくなった。糖尿病と診断され、ほかの病気も含めた月の出費が2万数千円にもなった。数年後、同居の男性も腰痛で早期退職。退職金を切り崩して暮らしたが、自分の医療費が悩みのタネだった。病気はだんだん悪くなる。血液をきれいにする「人工透析」が必要になりそうだが、とても負担できないと思った。・・・ 「国民皆保険制度」にほころびが見える。誰もが国民健康保険や「協会けんぽ」などの公的医療保険に加入し、1〜3割の窓口負担を支払えば必要な医療を受けられるという仕組みだ。

 だが、実際には保険料が払えないために正規の保険証を持っていない人や、保険に入っていても窓口負担が払えず受診していない人が、少なからずいる。受診の回数を減らしたり、高額な治療を断ったりする人もいる。・・・ 収入や資産が少ない人々にも最低限の生活を保障するのが生活保護だ。だが、生保を受けられる世帯のうち、実際に保護を受けている割合(捕捉率)は1〜3割程度とされる。貧困問題に詳しい都留文科大学の後藤道夫名誉教授の推計では、世帯収入は保護の基準以下なのに実際は保護を受けていない人は国内で2千万人前後に上る。後藤氏は「多くの人々が福祉制度のすき間にいる。病気にかかった場合、受診をためらう人がたくさんいるはずだ」と指摘する。

http://digital.asahi.com/articles/DA3S12501823.html

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(特派員メモ バージニア)銃社会の現実(2016/08/08朝日新聞)
ダラス、オーランドなど米国で銃撃事件が相次ぐさなか、知人に誘われ、人生で初めて銃を撃つ体験をした。銃を撃つとはどういうことなのか知りたかった。ワシントンから川を隔てたバージニア州にある室内射撃場を訪れた。直径が「9ミリ」の弾丸を入れた銃を握る。ずしりと重い。5メートルほど先の標的に向けて引き金を引くと、両手でようやく押さえられるほどの強い衝撃があった。銃口がオレンジ色に光り、脇から映画で見るように薬莢(やっきょう)が飛び出す。この銃口の方向次第では人の命を奪ってしまうのかと思うと、正直怖くなった。銃の身近さに驚いた。ショーケースには「399ドル(約4万円)」の商品もあった。すぐ近くで小学生ぐらいの女の子が撃ち方を教わっている。「女性こそ身を守るために銃は必要なんだ」。案内してくれた米国人の知人はそう言った。南部ノースカロライナ州出身の彼は、10歳の頃に親に撃ち方を教わったという。自分にも10歳の娘がいるが、とても銃の撃ち方を教えたいとは思えない。私のような外国人には理解できない、米国の銃社会の現実を垣間見た気がした。(五十嵐大介)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12501837.html

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(声)世界を分断する動きに敏感に(2016/08/08朝日新聞)中学校教員 池上禎一(福島県 60)

 サウジアラビアの日本人学校で派遣教員として勤務したことがある。その3年間は、私の世界観を大きく変えた。当初、1日5回の祈りを呼びかける声が、不謹慎ながら焼き芋売りに聞こえていた。だが、やがて「アッラーフ アクバル(神は偉大なり)」という声が夜明けとともに流れると、何とも言えない厳粛な気分になった。テロ事件に絡んで、「アッラーフ アクバル」という言葉を聞くと、悲しくなる。1日5回のお祈りを欠かさず行い、自らを戒め、「世界が平和であれ」と祈る人たちの姿こそが真のイスラムだ。ガソリンスタンドで私の日本製の車を見て「日本車は一番!」とにこやかに親指を立てる人たち。家族を愛し、子供を国の宝と愛する人たち。私が出会ったのは敬虔(けいけん)なイスラム教徒ばかりだった。様々な紛争の原因が宗教対立だけとは言えない。しかし、それをあおるかのようなポピュリズムとナショナリズムの台頭が気にかかる。国内外を問わず、世界の人々を分断しようとする動きに敏感にならねばならないと思う。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12501729.html

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沖縄予算と米軍基地の「リンク論」は全国の納税者を愚弄するものだ(2016/08/08沖縄タイムス)
安倍政権は、沖縄振興と基地政策のリンクを公然と認める方針に転じた。「リンク論」をめぐっては、長年にわたる沖縄と政府の駆け引きの側面があるのは否めない。しかし、これは税金の使途にかかわる論点であり、国民がチェック機能を働かせなければいけない問題だ。安全保障政策の観点から捉えられがちな辺野古新基地建設問題を、「止められない公共事業」をめぐる「膨大な税金の無駄遣い」という視点でみることも必要な時期に来ているのではないか。「沖縄振興」とは一般に、沖縄振興特別措置法(沖振法)に基づく国庫予算を指す。この予算は、他府県が各省庁に行う要求を、内閣府沖縄担当部局が一括して扱う。このため、沖縄県に対する国庫配分は「沖縄振興予算」と呼ばれるようになった。こうした特別な仕組みと名称があるため、沖縄県は全国で突出した振興予算を国から得ているような印象をもたれているが、沖振法は他府県と比べて多額の予算配分を保障・規定するものではない。・・・復帰から40年以上がたち、道路などのインフラ整備は「本土並み」の水準に達し、沖縄振興は一定の成果を遂げたのも事実だ。にもかかわらず、政府が今なお沖縄独自の振興予算制度を確保しているのは、今後も沖縄に基地を押しとどめておきたい思惑が働いているためであり、「広義の基地対策費」である、と喝破する識者も少なくない。

 それでも今回、政府が「基地と沖縄振興のリンク」を公然と認めたことに沖縄で衝撃と反発が広がっているのは、沖縄振興制度の論拠の一つである「基地の過重負担」という沖縄の社会的事情は沖縄振興によって維持されている、という度し難い現実を政府の側が開き直って認めたと捉えられているからだ。・・・ これまでは「リンク」が明らかであっても、予算増額に対しては沖縄側も文句の言いようはなかった。しかし政府が今後、沖縄振興予算の計上に当たって一層露骨に「辺野古」をはじめとする基地政策への諾否という政治的要素を加味し、容赦なく予算カットや特別措置の廃止に踏み切れば事情は一変する。政策誘導のための「賄賂的要素」の強かったアメが、強権的なムチとしての本性を露わにすれば、沖振法の目的や趣旨と相対することへの説明にとどまらず、抜本的な制度改正を求める声が県民の間に高まるのは必至だ。
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/56435

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警察の隠し撮り  市民監視は許されない(2016/08/08京都新聞)
大分県警が、市民のプライバシーを侵害し、選挙の公正さを揺るがしかねない行為をしていたことが分かった。県警の説明によると、参院選の公示直前、民進党や社民党などを支援する団体が入る別府市内の建物の敷地内に、別府署員が隠しカメラ2台を設置していたという。建物は、別府地区平和運動センターや連合大分東部地域協議会が入っている別府地区労働福祉会館で、カメラの1台は会館の玄関付近を、もう1台は駐車場付近を写していた。6月22日の参院選公示後に連合関係者が発見して別府署に通報したところ、刑事課の男性署員2人が公示前の18日夜、敷地内の草むらに無断で設置したことが分かった。県警が経緯を説明して関係者に謝罪したという。
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/

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相模原事件 共生への歩み止めるな(2016/08/08東京新聞)
相模原市の障害者殺傷事件を受け、再発防止に向けた国の動きが慌ただしい。問題なのは、障害者を蔑(さげす)み、あるいは恐れ、遠ざける社会の無知、無理解である。地域での共生こそが解決へと導く。気になるのは、容疑者の元職員の措置入院歴が注目を浴び、退院した人をどう追跡するかが対策の焦点になっていることだ。衛星利用測位システム(GPS)の装着を唱える意見さえ出ている。・・・さる二月、元職員は衆院議長あてに犯行予告のような手紙を書き、施設職員や警察官の面前で障害者の殺害を表明した。その異様な言動を契機に、相模原市は緊急措置入院手続きに入ったという。もしも、それが精神的症状ではなく、強い信念や考えの表出だったとすれば、危険思想の持ち主を隔離するために入院させたのではないかとの疑念も生じうる。犯罪予防という保安処分の目的で精神医療を利用し、ましてや精神障害のない人を拘束するのは許されない。警察は例えば業務妨害や殺人予備といった刑法の規定に基づき、事前に対処できなかったのか。それも問われるべきだ。もうひとつ。国は福祉施設の防犯対策の指針をつくるという。不審者の侵入をどう防ぎ、どう通報するか。非常事態に備えた効果的な仕組みを示してほしい。地域の見守りの力も欠かせない。とはいえ、人の出入りや触れ合いが過剰に制限されては、施設が孤立しかねない。容疑者が施設職員だったことを考えても、万全の安全策を講じるのは難しい。障害者の自立と社会参加を促すためにも、地域での暮らしへの移行が大切だ。障害への理解を深め、いのちを尊び合える地域づくりこそが最強の防御策になる。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016080802000119.html

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ドイツのテロ 移民難民が悪ではない(2016/08/08東京新聞)
 欧州では比較的安全だったドイツで殺傷事件が相次ぎ、移民や難民への風当たりが強まっている。ナチスの反省から学んだ寛容さや命の尊さを思い起こし、多文化共生社会を守ってほしい。犯行があったのは、いずれもドイツ南部バイエルン州。ドイツに押し寄せた難民の玄関口ともなった。経済的に豊かな半面、保守的な土地柄だ。同州が地盤のキリスト教社会同盟は連立与党でありながら、メルケル首相の難民政策は寛容すぎると批判するなど、もともと難民への目は厳しかった。ミュンヘンではイランとドイツの二重国籍を持っていた男(18)がファストフード店で銃を乱射、十代の若者ら九人が犠牲になった。・・・当初支持された首相の寛容政策への批判は、強まる一方だ。難民受け入れに反対する右派政党「ドイツのための選択肢」の幹部はミュンヘンの事件後、ツイッターで、「ドイツや欧州でのテロは、メルケル党のせいだ」と事件と難民問題とを結び付け、寛容政策を批判した。家族から離れ、一人で欧州に来た移民や難民の若者は多い。母国とは違う文化や習慣に疎外感も強まる。なじめるよう手を差し伸べることこそ必要だ。ポピュリスト政党の扇動に乗ってはならない。昨年だけで約百十万人もの難民を受け入れたドイツの負担は大きく、不満や不安が広がるのも、もっともだ。メルケル首相は事件後の緊急会見で、警察官の増員や軍との協力など、治安対策の強化を明らかにした。一方で、「政治的迫害や戦争から逃れた難民を保護する原則は守る」と言明した。寛容政策は、ユダヤ人らを迫害したナチスへの反省から基本法(憲法)に盛り込んだ迫害被害者保護規定に基づく。試練を乗り越え、戦後ドイツが誇るべき国是を貫いてほしい。ナチスの歴史は、外国から来た若者たちへの教訓ともなる。人間の暗黒面に震撼(しんかん)し、命の尊さを痛感する。挫折の末に悪魔に惑わされないよう学んでほしい。それがドイツに暮らすことなのだと。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016080802000118.html

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(声)原爆の投下に正当性などない(2016/08/07朝日新聞)無職 坂田博(福岡県 83)

 71年前の夏、広島と長崎の市民の日常は、原爆の投下によって一瞬のうちに灼熱(しゃくねつ)と爆風の生き地獄に変わった。20万人を超す人々が、その年のうちに命を奪われた。オバマ米大統領は広島を訪れ、犠牲者の霊に哀悼の意を表した。だが謝罪の言葉はなかった。米国民の多数が原爆投下は正当だったと考えていることが背景にある。私は「広島に新型爆弾が落とされた」との新聞を見て、被害の甚大さと無残さに驚いた世代だ。警告もなく、一般市民を大量殺害した原爆投下の非正当性と残虐性に、米国民が無知なことに驚く。当時、日本には軍事的な抗戦能力はもはや無かった。原爆投下がなくても、さほどの時間を要せず、降伏したのは間違いない。当時の米国大統領の冷酷無比の決定を、厳しく非難したい。戦後、日本は同盟国となった米国に、原爆投下への謝罪をきちんと訴えてこなかった。原爆投下は正当な手段という米国民の認識が定着するのは、戦争体験世代として耐えられない。唯一の被爆国として、原爆投下の非正当性を米国を含む国際世論に訴えていくべきだ。

http://digital.asahi.com/articles/DA3S12500407.html

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(声)ばらまきより教育費の無償化を(2016/08/07朝日新聞)無職 根本勇(千葉県 79)

 安倍政権は経済対策として、低所得者に1万5千円を配るという。これで日本経済が活性化するとは思えない。低所得者の多くは、わずかな一時金よりも仕事を求めている。途上国援助でよく使われる言葉だが「おなかがすいている時に、サカナを与えるだけでは救いにはならない。同時にサカナの釣り方を教えることが大切」なのだ。対策には、リニア建設前倒しや港湾整備など「仕事を増やす対策」も入れたようだが、それで増えるのは経済効果が薄い一時的な建設関係の仕事ばかりだ。ばらまきや旧態依然たる公共事業よりも時代に合った雇用の創出に投資すべきだ。さらには思い切って教育費を無償化したらどうか。家庭の娯楽などへの支出が増え、経済効果は確実にあると思う。

http://digital.asahi.com/articles/DA3S12500410.html

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核の罪深さ、伝える 広島「奇跡の生還者」、夫が遺志継ぐ(2016/08/07朝日新聞)
 広島の爆心地から約400メートル。学校に数百人いた児童の大半が一瞬のうちに焼かれて亡くなるなか、「奇跡の生還者」と呼ばれた被爆者、居森清子(いもりきよこ)さん。この4月、82歳で亡くなった。二人三脚で歩んできた夫の公照(ひろてる)さん(81)=横浜市=が遺志を継ぎ、この夏、妻の被爆体験を語り始めた。公照さんは平和記念式典に参列。妻の名を刻んだ名簿が慰霊碑に納められるのを見つめた。式典後、慰霊碑に花を供え、目を閉じて妻に誓った。「生きている限り、がんばります」清子さんは現在の本川小6年の時、学校で靴を履き替えていた時に被爆。校庭に出ると辺りは火の海。熱くて川で頭から水をかぶっていると、遺体が次々と流れてきた。同級生の大半を亡くし、両親と弟も失って「原爆孤児」になった。・・・清子さんの遺言。それは「私がいなくなったら、代わりに被爆体験を多くの人に伝えて」。母校の本川小は原爆ドームの対岸にある。8月5日、公照さんは約束通り、妻の被爆体験を語り聞かせた。「原爆の恐ろしさを全世界に伝え続け、核兵器をなくし、世界平和のために行動してください」。静かに聴き入っていた児童たちは大きな拍手を送った。愛する妻を亡くし、初めて迎えた原爆忌。11年ぶりに広島を訪れた。追悼施設に残る妻の証言ビデオや被爆当時の学校周辺の写真を目に焼き付けた。「事実をしっかり学び、清子の遺志を、核兵器の罪深さを、信念を持って伝えていきたい」(岡本玄)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12500523.html

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沖縄ヘイトを考える(上) /差別主義者のはけ口に 勢い増す地域分断の動き(2016/08/03沖縄タイムス)
旭日(きょくじつ)旗や日章旗を手にしたデモ隊が街頭を練り歩く。聞くに堪えない罵声が飛び交う。「死ね、殺せ」「首を吊(つ)れ」「日本から出ていけ」憎悪の矛先を向けられるのは、在日コリアンをはじめとする外国籍住民だ。こうした“ヘイトデモ”は10年ほど前から外国籍住民の集住地域を中心に、各地で見られるようになった。へらへら笑いながら「おーい、売春婦」などと沿道の女性をからかう姿からは、右翼や保守といった文脈は浮かんでこない。古参の民族派活動家は私の取材に対し「あれは日本の面汚し」だと吐き捨てるように言ったが、当然だろう。ヘイトスピーチをぶちまけ、外国人の排斥を訴えることでどうにか自我を保っていられる、単なる差別者集団だ。・・・なぜ、そんな醜悪なデモを繰り返すのか。半ばケンカ腰で取材する私に対し、ヘイトデモ常連の男性は吐き捨てるように答えた。「日本は日本人のための国じゃないか。奪われたものを取り返したいと思っているだけだ」

 彼だけじゃない。私が取材した多くの者が、この「奪われた感」を訴えた。外国人に土地を奪われ、福祉も奪われ、正しい歴史認識も奪われ、治安を乱され、揚げ句に領土も奪われ、そのうえメディアや行政をコントロールされている−つまり、世の中に存在する納得しがたい不可解なもの、いわばブラックボックスを紐解(ひもと)くカギとして、在日コリアンなど外国籍住民の存在が都合よく利用されているだけだ。・・・彼ら彼女らに憎悪を植え付けるのは、ネットで流布される怪しげな情報だけではない。執拗(しつよう)に近隣国の脅威を煽(あお)るメディアがあり、特定の民族を貶(おとし)める書籍が流通する。テレビのバラエティー番組で、ヘイトデモに理解を示す“識者”もいた。憎悪の種が社会にばらまかれる。そして人々は差別を“学んで”いく。無自覚のうちにヘイトスピーチを自らの中に取り込んでいく。

 憎悪と不寛容の空気は、さらに新たな「敵」を生み出していった。国への補償を求める公害病患者や、震災被害で家を失い、仮設住宅で暮らす人々、生活保護受給者などに、「反日」「売国奴」といったレッテルが貼られる。私はこの数年間、そうした現場ばかりを見てきた。そればかりではない。差別主義者、排外主義者にとって、沖縄もまた「敵」として認知されるようになった。・・・沖縄の人間を小ばかにしたように打ち振られる日章旗を見ながら、沖縄もまた、差別と排他の気分に満ちた醜悪な攻撃にさらされている現実に愕然(がくぜん)とした。「戦後70年近くにして沖縄がたどり着いた地平がこれなのか」デモ参加者の1人は悔しさをにじませた表情で話した。外国籍住民へのヘイトスピーチと沖縄バッシングは地続きだった。実は、銀座の沿道から罵声を飛ばしていた者たちの一部は、その前年、辺野古にも出向いている。新基地建設反対派のテントに踏み込み、「日本から出ていけ」「ふざけんじゃねえよ」などと拡声器を使って悪罵の限りを叩きつけた。しかもこれを「愛国運動」などと称しているのだから呆(あき)れるばかりだ。地域を破壊し、分断し、人々の心を傷つけているだけじゃないか。このような“沖縄ヘイト”は、いま、社会の中でさらに勢いを増している。

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/55260

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沖縄ヘイトを考える(下) /偏見生むデマ次々と 事件被害者も攻撃対象に(2016/08/03沖縄タイムス)
 今年6月、ヘイトスピーチ対策法が施行された。罰則なしの理念法である。保護対象が「適正に居住する本邦外出身者」とされるなど問題点も少なくない。とはいえ、わずか数年前まで「我が国には深刻な差別は存在しない」というのが政府の公式見解であったことを考えれば、差別の存在を認め、それが不当であると断じたのだから、一歩前進であると私は考えている。恐怖によって沈黙を強いられているヘイトスピーチの被害当事者のためにも、そして社会への分断を食い止めるためにも、法的整備は必要だった。・・・そもそもヘイトスピーチとは、乱暴な言葉、不快な言葉を意味するものではない。人種、民族、国籍、性などのマイノリティーに対して向けられる差別的言動、それを用いた扇動や攻撃を指すものだ。ヘイトスピーチを構成するうえで重要なファクトは言葉遣いではなく、抗弁不可能な属性、そして不均衡・不平等な社会的力関係である。これに関しては、同法の国会審議において、幾度も確認されたことだった。法案の発議者である参院法務委員会委員の西田昌司議員(自民党)は私の取材に対し、「米軍基地への抗議は憲法で認められた政治的言論の一つ。同法の対象であるわけがない」と明確に答えた。
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/55592

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