少年は赤いハンカチを 大切に折りたたんで ズボンのポケットにしまいました そして ポケットの中で何度も何度も 赤いハンカチをさわりながら 町へ向かいました
少年は仕事をしています
町に住んでるお年寄りの家を回って 家から家へと届け物をするのです そして いくらかのお駄賃を貰います たまにはパンやクッキーも ごほうびに貰う事もあります もちろん1日中回っても 仕事がない日もあります
でも少年は 町を歩くことが好きでした 町には森にはない宝物が 落ちてる時があるからです
いつものように町へ向かう坂道を 駆けながら下っていると 小さな女の子が しゃがんで泣いています 町に住んでる女の子です
近寄ってみると 膝小僧から血が出ていました 駆けていてころんだようです 少年は痛がって泣き止まない女の子に
「僕はいいものもってるよ」 「これで痛いところを撫でるとすぐに治るよ」
そう言ってポケットから 赤いハンカチを取り出して見せました そして、やさしく 女の子の膝の血を ふき取ってあげました
赤いハンカチは 血がついてもすぐに消えます 女の子の膝の血は きれいにふき取られました 少年はハンカチを 大切にズボンのポケットにしまって
「ねえ、もう痛くないだろ」 そう言って女の子の手をとりました
女の子は 泣き止んで、にこっと笑いました そして 少年のポケットをずっと見ています 赤いハンカチが欲しかったのです
少年はポケットに手をいれて ハンカチを取り出しました そして 「これはね、魔法のハンカチなんだよ」 「でも、これを持ってる人が やさしい気持ちでないと魔法はきかないんだ」 そう言って、少女にハンカチを渡しました
少女は嬉しそうにハンカチを胸に抱いて 家のある方にかけていきました
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