1.ウラン燃料から生じる放射性物質
a.放射性崩壊
原子力発電のための「核分裂」によってウランは様々な元素へと変化する。その結果プルトニウム、セシウム、ヨウ素、ストロンチウムなどの放射性物質が生まれ、放射性物質は<放射線を出しながら>次々と姿を変え「放射性崩壊」を繰り返していきます。*放射線と崩壊熱を出さない安定した物質へと変化する迄には半減期が約8日のヨウ素131のような短いものとプルトニウム239のように約24000年と言う気の遠くなるような長いものまで放射性物質の種類によって大きく異なります。
b.崩壊熱
放射性崩壊には「崩壊熱」が伴い原子炉から取り出した使用済み燃料は貯蔵プールで最低4年程度水中で冷却しなければなりません。
c.炉心溶融
核燃料が水から露出してしまった場合、燃料棒の温度は数分で2000℃迄上昇し燃料棒の被覆管を溶かしてしまい大量の放射性物質が圧力容器内に漏れだします。もし温度がもっと上がり燃料ペレット(融点2800°C)が融け落ち「炉心溶融」が起こると高温の燃料によって圧力容器が破損してしまう恐れがあります。*この恐ろしい事故が福島で現実のものとなりました。
2.使用済み核燃料
a.深刻な保管問題
発電のために使用される燃料は3年から4年で廃棄されるが、崩壊熱があるため原子炉建屋内にある「使用済み燃料貯蔵プール」に一時的に保管される。ここに数年保管された後、「再処理」と言う工程にまわされる事になっていますが、現状は再処理能力が低く使用済み核燃料は増える一方で深刻な問題となっています。
b. 使用済み燃料の運搬・保管
使用済み燃料はさまざまな放射性物質が含まれていて、多くの放射線と崩壊熱を発するのみならず臨界の恐れもあるため貯蔵プールから取り出した後「キャスク」と呼ばれる保管容器に収納されます。しかしこの「キャスク」に入った危険な廃棄物を数万年以上に渡って保管する方法はまだ確立されていず、青森県むつ市に「中間貯蔵施設」を建設中です。
c.キャスクとは
アルファ、ベータ、ガンマ、中性子線などの放射線を遮蔽出来るコンクリートや樹脂と鉄や鉛などの金属で出来た円筒形の強固な容器で約10トンの使用済み燃料を収容出来る容器は(高さ5.6m、直径2.4m、重さ約115トン)で、中には四角に仕切られたバスケットと呼ばれる金属製の仕切りで中性子を吸収し臨界が起きないようになっています。
3.低レベル、高レベル放射性廃棄物
a.低レベル廃棄物
発電所の施設に設けられた放射線物質を濾過するフィルタや防護服、燃料棒の部品などが低レベル放射性廃棄物で一般的には焼却して量を減らした後ドラム缶に入れてセメントで固め、ドラム缶ごと地下1メートル程度に埋めて処分されています。
b. 高レベル放射性廃棄物
日本においては使用済み燃料を再処理する時にでる放射性物質を高濃度に含む廃液をガラスで固めた「ガラス固化体」の事を指し、「キャニスター」と呼ばれるステンレス製の容器に流し込んで固められたものです。ガラス固化体はきわめて高い放射能を持つため人間が特殊な防護なしに近づく事は出来ません。ガラス固化体を扱うには遠隔操作が必要です。
NEXT4.原子力発電の現実
知れば知るほど
矛盾と不安だらけの原子力発電。
原子力に代わる安全で禍根を残さないエネルギーが
近い将来必ず確立されると思います。
先日「10万年後の安全」と言うフィンランドの映画を観ました。淡々と静かに進行する映像を見ながら何とも言えず不気味で不毛な未来を感じました。放射性廃棄物は人類に取ってあまりにも大きなリスクであり、それは原発が無くならない限り増え続ける悪夢のような現実です。
科学が発達した現代で、「原子力発電」を選択する理由が本当にあるだろうか?代替エネルギーは本当に無理なのだろうか?自然エネルギーの可能性は本当にそれほど低いのだろうか?
世界中の人々が今考えて早急に進路を変えないとフィンランドで建設中の通称「オンカロ」と呼ばれる地下深い「放射性廃棄物の最終処分場」は人類の最終居住地となるような気さえします。
NEXT1の使用済み核燃料の量を見てつくづく思います。これらの廃棄物を長い長い時間を超えて本当に安全に保管できるのだろうか?その方法は?その場所は?その管理は?そしてその責任は?
廃棄物となったガラス固化体の放射能が自然界のウラン鉱石と同程度に減る迄には数千万年かかると言われています。それはあまりにも長い時間で、その管理は事実上不可能です。そこで考えられているのが地中深く埋める「地層処分」です。
ガラス固化体を金属や粘土で厚く覆った上で地下300メートルよりも深い地中に埋める方法です。それでも未来においてその「埋葬地」がどのような状態にあるかは不確定で、不安は残ります。フィンランドやスウェーデンで地層処分の場所は決まったけれど日本では予定地さえ決まっていません。
それでも高レベル放射性廃棄物は日々増え続けて行きます。原発の運転が止まらない限り増え続けて行きます。
*NEXT1~4の参考資料:映画「10万年後の安全」、電力会社ホームページ、科学誌ニュートン、朝日新聞、毎日新聞、週刊現代、週刊ポスト、赤旗日曜版
自然エネルギーがもたらすもの
アメリカのワールドウオッチ研究所が「フクシマ後の世界の原子力」で自然エネルギー発電が原発を超えたとの研究報告書を出しました。
原発の3つの嘘「安全」「クリーン」「安価」は周知の通りことごとく発覚して世界の意識は確実に自然エネルギーに向かうでしょうが、現地点で自然エネルギーが原発を超えたと言う報告は心強いものです。
もともとこの地震が多発する小さな島国に54基もの原発を造り続けて来た異常さはそのまま日本社会の近年の社会構造を象徴しています。
今回のフクシマでの事故が起こる迄僕自身も心のどこかで「3つの嘘」を受け入れて来た部分もあって、反省して目覚めた部分はあります。
自身少しずつ原発の事を調べて事実を知れば知るほど「心ある人間ならば、原発は是非の問題ではなくいかにして無くしていくか」だけの問題である事が解るはずです。
巨額のコストがかかり「高価」、核廃棄物の処理方法さえ見つからず、放射能の危険性は常にそして永遠にあって「ダーティー」、地震などの不測の事態に対して極めて脆い「危険」と言う3つの要素はもともと「解っていた」はずのものです。
にもかかわらず巨額の事業を次々と進めて来た国と関連企業の策略はエネルギー問題ではなく、原発がもたらす金脈と権力への癒着以外の何ものでもありません。
地震や津波、台風にも見舞われる日本ですが、自然エネルギーを考えるなら日本の変化に富む立地は有効に思えます。海に囲まれ山があり川があり風が吹く条件は自然エネルギーのあらゆる可能性を秘めています。
もしせめて10年ぐらい前に巨額の原発資金を自然エネルギーの分野に向けていたら、すでに世界トップクラスの自然エネルギー国になっていたはずです。
しかし現実は愚かな原発利権のグループが自然エネルギーの芽を摘み取るような事をしてきたわけですから、国政にも国民にも大きな責任はあります。
今回のような取りかえしのつかない事故があって、やっと正気に返った多くの人々、もともと原発の危険性と非効率性を訴え続けて来た人々、今は意識ある人たち全てが正しいエネルギー政策を軌道に乗せなくてはなりません。
雇用の問題、景気の問題、そして何よりも人命と未来の子供たちのためにも自然エネルギー開発は欠く事の出来ない条件です。
太陽光、地熱、風力、小水力、海洋エネルギー、バイオテクノロジーなど、自然エネルギーがもたらす産業活性効果は大きいものです。
そして、自然エネルギーを開発する中で生まれる意識は科学とかテクノロジーが一体何のためにあるかをもう一度人類に知らしめてくれるように思うのです。
今や自然エネルギーを有効に使えるだけの科学力があります。原発を完全に無くし、
化石燃料をなるだけ減らして行くことが未来に対する人類共通の責任です。
■何故原発を推進するのか ■何故原発に関する嘘が多いのか ■何故放射能が危険なのか
■何故発電コストが高いのか ■何故原発が危ないのか ■何故原発が非人道なのか