(ひと)三浦まりさん パリテの考えを広めてフランスの勲章を受けた政治学者(2021年6月12日朝日新聞) きっかけは、2018年に成立した候補者男女均等法の立案に携わったことだった。この法律が必要とわかってもらうためには「男女同数」の理想を堂々と掲げたほうがいい。フランスには、候補者を男女同数にするよう政党に求める「パリテ法」がある。これだ。・・・男女雇用機会均等法が施行された1986年に大学に入った。男性中心にみえた日本企業を直感的に避けて研究者の道を選んだが、妊娠・出産をめぐり、心ない言葉を浴びて涙した経験もある。政治家に女性が少ない理由についての研究が、ライフワークになった。 日本の国会議員の女性比率はまだ1割に過ぎないが、候補者男女均等法は、セクハラ対策を盛り込んだ改正法が成立し、少しパワーアップした。「日本も少しずつ変化してきたし、あと10年でまた大きく変わるでしょう」。理想は近づいている。 (インタビュー)中途半端な国、日本 社会学者・佐藤俊樹さん(2021年6月12日朝日新聞) ――五輪は開催に向かっているような雰囲気ですね。 「すごく気持ち悪い展開になってきたなあ、と思っています。半月ほど前までは、『開催か中止か』が焦点になっていました。ところが今は、なし崩し的に開催へ動いているように見えます」 「一番気持ち悪いのは、『なぜ開催するのか』がはっきり説明されないことです。すでに、五輪中止より緊急事態宣言による経済的損失の方が大きいという試算が示され、感染対策によりお祭り騒ぎができないことは明らかです。それなのに菅義偉首相は『平和の祭典』などと言うだけで、具体的な開催意義を示しません」・・・ ――五輪に突き進む姿は、無謀な作戦を実行して多数の兵が犠牲になった第2次世界大戦中の「インパール作戦」にもしばしばたとえられます。 「でも、『インパールだ』と主張する側にも同じことが言えると思いますよ。『五輪反対の世論』には2種類あると思っています。一つは、与えられた試算や研究者の意見など科学的根拠をもとに反対する世論。もう一つは、感情的な世論です。感情的に反対する人は、自分が推進する側になればインパールをやってしまいます。日本社会でインパールのようなだめな意思決定が繰り返される理由は、そこにあると思います」 ・・・――五輪中止の声が高まっている今の社会は、「もはや二兎を追える大国ではない」と気づいているということでしょうか。 「コロナ禍のこの1年間で、現実を見ないわけにはいかなくなったのだと思います。ワクチン自体は早期に確保できたのに、接種の態勢の準備なし。IOCからは、日本をバカにするかのような発言が続きます。薄ぼんやりとは、認識せざるを得ないでしょう」 (多事奏論)スポーツと芸術 まっとうなためらい、今こそ 吉田純子(2021年6月12日朝日新聞) もう引き返せない。前に進むのみ。本当にそうか。面倒くさくて、聞きたくない言葉に耳を塞いでいるだけではないのか。もし、自分を応援してくれるファンの人々に、ワクチンの整わない途上国の選手たちに、感染が広がることになったら。日本の選手たちが傷つかないわけがない。何の基準も示されぬまま、「感動」の提供を託されている五輪の主役たちがいま、どれほど不安な思いを強いられていることか。 鍛錬を経て精神を究める。この1点で、スポーツは芸術に連なる。何百年もの歴史を超え、継承されてきた人類の営みを継ぐ選手たちへの敬意が現政府にあれば、彼らの心を、人生を守るという決意が、何らかのためらいの言葉や施策となり、国民の心に届くだろう。空気に消えることなく。 (書評)『模倣の罠 自由主義の没落』『権威主義の誘惑 民主政治の黄昏』(2021年6月12日朝日新聞) 2人の政治学者による『模倣の罠(わな)』は冷戦後の30年を「模倣の時代」と捉える。モデルとして唯一残った西洋の自由民主主義。それを模倣すべきとされた時代だ。しかし、模倣は反逆を生んだ。・・・『権威主義の誘惑』は原題が「民主政治の黄昏(たそがれ)」。複雑さや多様性を嫌う人、異議申し立てや論争に怒りや不安を感じる人は、権威主義に誘(いざな)われる。そして陰謀論が、特権的に真実を知ったとの満足を提供する。それは、かつてのイデオロギーほど壮大でないという意味で「Mサイズのうそ」だ。 |
世界の新型コロナ感染者(2021/06/10朝日新聞) 感染者 死者 米国 3339万1092 59万8326 インド 2908万9069 35万3528 ブラジル 1703万7129 47万6792 フランス 578万1556 11万0299 トルコ 530万0236 4万8341 ロシア 508万6386 12万2409 英国 454万4372 12万8118 イタリア 423万5592 12万6690 アルゼンチン 400万8771 8万2667 ドイツ 371万2595 8万9504 ………………………………………………………………………… インドネシア 186万9325 5万1992 フィリピン 128万0773 2万2064 韓国 14万5692 1977 中国 10万3235 4846 シンガポール 6万2219 34 ………………………………………………………………………… 日本 76万6193 1万3706 ………………………………………………………………………… 世界計 1億7400万8052 374万7927 (+36万8846) (+1万0480) (社説)党首討論 首相の言葉が響かない(2021/06/10朝日新聞) しかし首相は、ワクチン接種への取り組みを延々と説明しただけで、前回の解除判断への反省や今回の解除基準に触れることはなかった。枝野氏はまた、東京五輪が感染拡大につながるリスクについて、大会参加者だけでなく、競技場の外まで念頭においているかどうか確認を求めたが、首相はこれにも答えず、いきなり枝野氏が掲げる「ゼロコロナ」戦略への疑問を語り始めた。 お互いが対等な立場で意見を交わす場であり、首相が野党の政策をただすことは当然あっていい。しかし、聞かれたことには全く答えず、自分の言い分ばかり述べたてるのではコミュニケーションは成立しない。 大谷17号2ラン 野球・大リーグ 8日(2021/06/10朝日新聞) (にじいろの議)「男らしさ」にとらわれた人へ 失った己と向き合って 作家・大前粟生(2021/06/09朝日新聞) https://digital.asahi.com/articles/DA3S14934192.html 富を失っても自由を守る 香港の歌手デニス・ホーの闘い(2021/06/09朝日新聞) 社会的弱者に寄り添う活動に関心を持ち始め、12年にレズビアンであることを公表。14年には香港政府の行政長官選挙をめぐる民主派のデモ「雨傘運動」に参加し、最前線で座り込みを続けたことで逮捕される。所属していたレコード会社からは契約が打ち切られ、スポンサーも撤退。ともにステージに上がってきた演奏家たちも離れていく……。そんな明暗は、民主主義を発展させてきた香港への中国政府による締め付けが強まってきた近年の状況と重なる。 (評・映画)「田舎司祭の日記」 時宜適った、傑作の初公開(2021年6月4日朝日新聞) 地方の寒村に着任した若い司祭の日々の経験が静謐(せいひつ)ながら強度を秘めたタッチで綴(つづ)られる。司祭の肉体はすでに病魔に蝕(むしば)まれ、その信仰(魂)も、彼の「純粋さ」を奇妙なまでに敬遠し、毛嫌いする村の住人たちを前に、つねに揺れ動く。 |
(特派員メモ ヨハネスブルク)ワクチン不安、歴史の傷痕(2021/06/07朝日新聞) この国の黒人がワクチンにおびえる気持ちは決して荒唐無稽ではない。ラマポーザ大統領は1月、国民の信頼を築くため、ワクチンの安全性を実証するとわざわざ訴えた。アパルトヘイトの傷痕に南アフリカは今も苦しめられている。 大谷、菊池から16号 2季ぶり対戦 野球・大リーグ 5日(2021/06/07朝日新聞) (評・映画)「デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング」 スターの向こうに香港の今(2021/06/07朝日新聞) 漂着マスクが激増、海へ年15億枚? ペンギンの胃にも(2021/06/07朝日新聞) 15億6千万枚。香港を拠点とする海洋保護団体「オーシャンズアジア」は昨年末、こんな数字を発表した。新型コロナウイルスが世界中に広がった 2020年の1年間に、適切に処理されず海に流れ出たマスクの推計枚数だという。・・・海洋に流出したマスクは、次第に波や風にさらされバラバラに砕け、回収が難しい「マイクロプラスチック」となっていく。マイクロプラスチックは、海洋生物がプランクトンと間違えて食べてしまうことが問題視されている。食物連鎖を通して様々な生き物に蓄積されていき、人間を含め長期的な生態系への悪影響も及ぼしかねない。 (後藤正文の朝からロック)「大きな言葉」の暴力性(2021年6月2日朝日新聞) 表現者として、引用した彼の言葉に共感する。イメージを単純化するために、詩や音楽があるのではないと僕は信じている。自分の生活のなかではどうだろう。大きな言葉で、誰かの尊厳を踏みにじっていないだろうか。無意識に加担している暴力はないだろうか。 「論理」見失った先のコロナ禍五輪 論理学者・高橋昌一郎さんに聞く(2021年6月2日朝日新聞) さて、昨年3月、東京五輪・パラリンピックが1年間延期されることに決まった。それ以降、もし日本政府が徹底した入国規制や人の流れの抑制を実施し、さらに今頃までに国民の大半がワクチン接種を終えて新規感染者数がゼロに近付いていたら、五輪はまさに「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証し」として、世界から称賛されたにちがいない。 ところが、昨年の夏から冬にかけて政府は「GoToトラベル」と「GoToイート」キャンペーンを行い、感染が拡大した。今春には変異ウイルスの猛威で重症者が急増し、各地で医療態勢の崩壊が迫っているなかで、大会関係者が多くの医療従事者を確保しようとして非難を浴びた。今では国内外で東京オリンピックを中止すべきだという声が高まっている。・・・ 実は、政府が論理を見失っていく兆候は、コロナ禍以前からあった。国会の答弁では、「ご飯論法」などと呼ばれるような、意図的に論点をずらす奇妙な習慣が生まれた。質問に正面から答えず、とにかく時間を稼ぐ。誰も責任を取ることなく、謝りもしない。国会の質疑応答全体が、もはやコントのようにさえ見える。 |
キューバでよみがえる米クラシックカー 町工房のアメ車ドクター(2021/06/03時事ドットコム)
カフカの未発表の手紙や素描、オンラインで公開 イスラエル国立図書館(2021/06/03時事ドットコム) (時時刻刻)コロナ禍、広がる貧困 生活保護「偏見やめて」 派遣20年、職失った50代女性(2021/06/03朝日新聞) 家賃を払えなくなり、友人宅に泊めてもらうようになった。「最初はどうにかなるだろうと思ったけど、(状況は)どんどん悪くなった」。年末に近づくと1日1食で過ごした。友人の家で過ごすのは肩身が狭い。住所がないと身元の証明が難しく、仕事探しもできなかった。「まさか自分がこうなるとは」と当時を振り返る。食料配布の支援現場で出会ったスタッフの勧めで、今年1月に生活保護の申請をした。1カ月も経たないくらいで申請が認められた。思っていたより早く決まり、安心した。住居が確保できたことで仕事を探すステップに移ることができたという。 ネタニヤフ首相、瀬戸際 イスラエル、政権交代の見通し 与党内も離反、追い込まれ(2021/06/03朝日新聞) 新首相候補はさらに右派 反ネタニヤフ勢力の連立が実現した場合、極右政党ヤミナの党首、ナフタリ・ベネット元国防相(49)がまず首相に就任する見通しだ。その後、ラピド氏と交代するとしている。ベネット氏はネタニヤフ氏以上の右派とも称される。熱心なユダヤ教徒で、パレスチナへの強硬姿勢でも知られ、パレスチナ自治区のイスラエルへの併合やユダヤ人による入植活動の推進を掲げてきた。将来パレスチナが独立国家を樹立する「2国家解決」にも反対を表明してきた。 (交論)五輪開催、海外の視線 ジュールズ・ボイコフさん、エリック・フェルドマンさん(2021/06/03朝日新聞) ■中止こそコロナ禍の希望の光 ジュールズ・ボイコフさん(米パシフィック大学教授) ――IOCの傲慢(ごうまん)さを批判し、コロナ禍の東京五輪は中止すべきだと主張していますね。 「私のように長年、五輪を研究してきた学者ではなくても、誰の目にも明らかでしょう。東京が緊急事態宣言下であっても大会はできると強弁するIOCは、開催都市に暮らす人々、日本国民の健康を最優先に考えていないのです」「五輪貴族は快適なジェット機で飛んできて、五つ星ホテルで優雅に滞在し、祭典が終われば帰るだけなんです。長年、上流社会に生きてきた体質は変わりません」――菅首相が「IOCは東京大会を開催することを既に決定している」と主権国家のリーダーであることを放棄するような発言をして、日本で世論から批判されました。 「全く驚きません。開催都市契約はそれだけIOCにとって優位な条項になっています。招致が決まった瞬間は優しく抱きしめる。しかし、いったん開催都市契約書を交わすと、財政面の負担を押しつけて羽交い締めにします。しかも、強烈に、です。菅首相の発言は彼をみすぼらしく映し、支持基盤を弱めるかもしれませんが、IOCに委ねることは彼の責任を取りのぞかせる防波堤にもなっています」 https://digital.asahi.com/articles/DA3S14926249.html 大自然から学ぶ、私たちの姿 本屋大賞・翻訳部門「ザリガニの鳴くところ」(2021/06/03朝日新聞) 「動物たちから、人間社会についてとても多くのことを学んだ。私たちには何百万年も前から続いてきた、生き延びるための本能が残っている」 恋愛小説でもあり、ミステリーでもあり、法廷ドラマでもあるこの小説も、野生動物たちの行動をつぶさに見つめ続けた生活に深く根ざしているという。「カイアは自然から学び、動物たちのように行動した。同じように、私たちの心のうちにも自然の掟(おきて)は残っている。人間の心に潜む本能について考えることは、私たちの心の動きについて理解を深めることにつながるのです」・・・ 『ザリガニ』の読者は世界中に広がり、日本の書店員からも支持された。オーエンズさんは「差別され、拒絶される経験は私たちの誰にでもある」と話す。「人間の女の子が、孤独のなかに取り残されて育ったらどうなるか。差別され、置き去りにされる体験が、人の行動にどう影響するのかを書きたかった」新型コロナウイルスの感染拡大が世界的に続くなか、「カイアに似た状況に置かれた人たちは多い」とオーエンズさん。「自宅に何週間も何カ月もこもるのは、簡単なことではない。人はふさぎ込み、いらいらするようになる」 だが、湿地で貝を拾って小銭を稼ぎ、たくましく生きるカイアの姿はまぶしく、力強い。「彼女は何度見捨てられても、誰かとつながろうとすることをやめなかった。だからあきらめないで、手を伸ばし続けてほしい。誰かがあなたを必要としているから」 製鉄所で2人被曝 体調不良訴え入院 姫路の日本製鉄(2021/06/03朝日新聞) 同製鉄所によると、2人は5月29日午前、工場内でエックス線の照射でめっきの厚みを測定する装置を整備していた。作業を終えた後に体調不良を訴え、救急搬送された。病院で検査したところ、エックス線を浴びていることがわかったという。同製鉄所は、2人が整備していた装置から何らかの理由でエックス線が出たとみているが、原因は不明だという。 https://digital.asahi.com/articles/DA3S14926279.html (時代の栞)「窓ぎわのトットちゃん」 1981年刊・黒柳徹子 学校教育のあり方(2021/06/03朝日新聞) 「はじめにリズムありき」 初代園長・小林宗作(そうさく)が好きだったこの言葉を園は大切に守り続けてきた。「自然の中にリズムがあるという教え。効率的に育つことが良しとされる時代にあって、ゆっくりでもいい、一人ひとりの子どものリズムを大切にした保育をしているかを確認するのです」と林浩子園長は言う。 この小林宗作こそ『窓ぎわのトットちゃん』の舞台であるトモエ学園の校長先生だ。「トットちゃん」こと俳優・タレントの黒柳徹子さん(87)は「校長先生に出会っていなかったら今の私はいなかった」と常々語っている。・・・軍国教育の時代に都会の片隅で花開いたトモエ学園の物語が『窓ぎわのトットちゃん』として世に送り出されたのは1981年。翌年には500万部超えという爆発的な売れ行きを見せた。 朝日新聞は家庭面で連載を構え、戦後最大級のベストセラーの背景を掘り下げた。児童学の専門家は「今の教育は勝つ者と負ける者を選ぶ競争原理のうえに成り立っていて息苦しい。だからこそ、『トットちゃん』の自由な世界にあこがれ、みずみずしい子どもらしさにひかれたのでしょう」と分析した。 |
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