記憶しておきたい新聞記事見出し2014〜2016
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<社説>防衛費過去最大 周辺国と軍事緊張高めるな(2016/12/04琉球新報) 自民、カジノ法案成立に全力 採決強行「異常」と民進(2016/12/04東京新聞) トランプ氏、蔡氏を「元首」扱い 中国、対米批判抑える(2016/12/04東京新聞) 【北京=平岩勇司】トランプ次期米大統領と台湾の蔡英文総統が二日、電話協議を行い、米台の緊密な関係を確認したことに対し、中国政府は「台湾側の小細工」と非難する一方、トランプ氏への明確な批判は示していない。「一つの中国」の政策を堅持する中国の立場からすれば、今回の電話協議はこの原則からの逸脱にほかならないが、政権発足前からトランプ氏と対立する事態を意識的に避けているようだ。 撤収し「9条の貯金」守れ 駆けつけ警護、識者に聞く 水島朝穂・早大教授(2016/12/04朝日新聞) もんじゅ廃炉求め800人、敦賀(2016/12/03共同通信) 川が新たなセシウム運ぶ 東京湾河口部汚染 本紙3回目調査(2016/12/03東京新聞) |
審議わずか6時間 カジノ法案を可決(2016/12/02東京新聞) 「南スーダン 民族浄化進んでいる」 国連警告 大虐殺「防ぐ義務ある」(2016/12/02東京新聞) <社説>SACO20年 県民不在の合意破綻した 政府は対米交渉やり直せ(2016/12/02琉球新報) そもそも1996年12月のSACO最終報告に向けた日米両政府の交渉に沖縄側が参画する場面はなかった。基地の重圧に苦しむ当の沖縄が自らの意思を交渉に反映させる道は閉ざされていた。その帰結が「移設条件付き」という県民意思とは懸け離れた合意内容であった。「基地たらい回し」「頭越し合意」という批判が上がったのも当然だ。SACO合意で返還が決まった11施設5075ヘクタールのうち、現時点で実際に返還されたのは454ヘクタールにとどまる。面積でいえば約9%だ。県内移設という条件が進ちょくを妨げてきた。 社説[山川「集団自決」復活]実相記述まだ足りない(2016/12/02沖縄タイムス) http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/73833 オーストリア、影響は 英EU離脱やトランプ・ショック やり直し大統領選、4日投票(2016/12/02朝日新聞) (社説)カジノ法案 危うい賭博への暴走(2016/12/02朝日新聞) 14年には厚生労働省研究班が「依存症が疑われる成人は全体の5%弱の536万人いる」との推計を示して注目された。推進派は国会審議で、カジノ解禁と合わせて依存症対策を総合的に進め、悪影響は最小限に抑えると強調した。しかし、目の前の課題である依存症対策と、新たなリスクであるカジノの解禁がどうしてセットなのか。説得力は乏しい。推進派がカジノ解禁を急ぐ背景には、20年東京五輪と合わせ、海外から観光客を呼び込みたいとの思惑がある。25年大阪万博誘致構想を掲げる維新は、万博候補地の人工島にIRも、と夢を描く。 http://digital.asahi.com/articles/DA3S12686149.html (社説)退位反対論 国民意識との溝が深い(2016/12/02朝日新聞) 陛下は現憲法の下での天皇像を追求し、国民の幸せをただ祈るだけでなく「人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うこと」が大切だとの考えを確かにしていった。しかし高齢に伴う体力の衰えで、そうした務めを引き続き果たすのは難しくなろうとしている。そこでビデオメッセージを通して、みずからが到達した象徴天皇観を社会に広く説明した。国民もこの考えを理解し、受けいれ、高齢社会における天皇のあり方に思いを寄せたからこそ、退位に賛成の世論が形づくられたのではないか。これを同情・センチメンタリズムと評した論者もいたが、陛下の長年の歩みを否定し、国民を見下した見方と言わざるを得ない。多くの国民が現に共有している天皇観を踏まえず、明治憲法がつくりだした特異な神権天皇に通じる主張を展開しても、皇室と国民の距離を広げ、存在を不安定にするばかりだ。 (憲法を考える)憲法の価値を守るもの ジャンマルク・ソヴェさん、見平典さん(2016/12/02朝日新聞) フランスの国務院の役割は、政府提案の法律が憲法や国際条約に照らして適当か否かを答申したり、行政裁判の最高裁として判決を下したりすることです。・・・ 国務院は行政の一部ですが、意見や決定は政府や議会から独立しています。さらに重要なのが世論からも独立していること。国務院の決定文書の冒頭は常に「フランス人民(国民)の名において」と書かれていますが、私たちが言う「人民」とは世論ではない。えてして世論は市民の自由の制限をもたらします。世論の熱狂や激情にくみしてはならない。私たちは歴史的に散々痛手を被ったはずです。・・・日本にも政府内部に憲法と法律の整合性をチェックする内閣法制局があるが、それが国務院のように機能する条件は何か、ですか? 日本の制度がどうあるべきかを私はコメントする立場にはありませんが、フランスの伝統から言えるのは独立性と継続性が重要ということです。国務院の羅針盤は憲法をはじめとした法であり、世論でも政府でもない。両者が対立しても、どちらの立場にも立たないと思われる独立性が不可欠です。 そして継続性のためには、人事制度も重要です。国務院の副院長は一度任命されれば任期は定年まで続く。任期を全うできなかったのは(ナチスドイツに協力した)ヴィシー政権時の副院長だけ。米国の連邦最高裁同様、選挙で政権交代があっても変わらない。憲法の価値は個別の政権を超えており、国務院のような制度はその価値を体現しているからです。とはいえ、憲法の擁護は制度だけではできません。市民の参加が不可欠です。実際、フランスでは1958年に現憲法が制定されてから30回ほど憲法が改正された。欧州連合(EU)づくりに関わったり、議員数の男女平等を促進するようにしたり。議会を通じた人民の声が改正を実現させてきたのです。 憲法は私たちの共通財産であり、いわば共通善です。憲法の擁護は国務院のような制度だけでは不可能であり、すべての人が憲法の番人でないといけないのです。(聞き手・高久潤) ■違憲審査、市民の声が後押し 見平典さん(京都大学准教授) 米科学者2千人トランプ氏に書簡(2016/12/01京都新聞) |
カジノ法案、突如前面 推進派「今を逃したら機会ない」(2016/12/01朝日新聞) この日の内閣委で共産党の島津幸広氏が与党の国会運営を非難した。与野党合意での成立が慣例とされる議員立法なのに、与党は民進党と共産の反対を押し切って審議入りしたからだ。自民が強硬路線にかじを切ったのは、29日の国会会期の延長決定が契機だった。「内閣委はつねに内閣提出の法案の審議で日程がパンパンだ。会期延長で時間が空いた今を逃したら、もうやれる機会はない」。内閣委の与党理事は説明する。来年の通常国会に法案審議を先送りすれば、天皇陛下の退位を可能とする法案の審議が始まり、カジノ解禁法案どころではなくなる。衆院解散で廃案になるリスクもある。強気な国会運営の背景には、首相官邸の後押しもあった。 「日本の成長戦略の目玉になる」と語ったのは、シンガポールのカジノを視察した安倍晋三首相だった。菅義偉官房長官も「観光振興、地方創生、産業振興の面で大きな期待が持たれている」(30日の記者会見)との立場だ。見え隠れするのは、日本維新の会代表の松井一郎・大阪府知事らがめざす大阪・夢洲へのカジノ誘致を後押しし、維新に首相が悲願とする憲法改正に協力してもらおうとの思惑だ。・・・ 法案に対しては、刑法の賭博罪との整合性やギャンブル依存症の問題、マネーロンダリングの温床になる懸念などが指摘されている。朝日新聞社の2年前の世論調査でも法案に「賛成」は30%で、「反対」が59%だった。 とりわけ大きいのは、カジノが賭博罪の例外になることへの心配だ。前自民幹事長の谷垣禎一氏は法相だった2014年に「社会的に害悪がある違法なものとして賭博罪が決められている。骨抜きになるのは困る」と述べた。30日の公明の会合でも「違法性を否定する理由が法案に明確に書かれていない」と批判が出た。 (デジタル版から)政治資金で通う店は?(2016/12/01朝日新聞) ホテルや飲食店、クラブ…。「政治資金」の支出先にはそんな名前がずらりと並びます。赤坂や六本木など、永田町に近い繁華街での高額支出も。現職閣僚や党首は、どんな店に通うのでしょうか。政治資金収支報告書を独自集計し、ランキングにしました。
政治家 行きつけ20選政治資金特集「支出編」(2016/12/01朝日新聞) 政治資金収支報告書の支出欄には、飲食店やホテル、クラブなどの名前がずらりと並ぶ。永田町に近い繁華街での高額支出も多い。現職の閣僚や党首はどんな店に通うのか。2014年と15年(16年11月25日までの公開分のみ)分から、独自に集計した。(今後の公開に伴い随時更新します) ホテルオークラ東京・ホテル/東京・虎ノ門 石原伸晃 ザ・キャピトルホテル東急・ホテル/東京・永田町 石原伸晃 ホテルニューオータニ・ホテル/東京・紀尾井町 稲田朋美 初花/日本料理/東京・永田町(国会内の食堂を運営) 金田勝年 レストランモア/レストラン/東京・千代田区(国会内の食堂を運営) 金田勝年 ANAインターコンチネンタルホテル東京(ホテル/東京・赤坂) 小沢一郎 アークヒルズクラブ・会員制クラブ/東京・赤坂 石原伸晃 ざくろ・しゃぶしゃぶ、すき焼き/東京・赤坂 金田勝年 魚しん・寿司、海鮮料理/東京・赤坂
帝国ホテル・ホテル/東京・内幸町 麻生太郎 六本木ヒルズクラブ・会員制クラブ/東京・六本木 塩崎恭久 ワノフ 金田勝年 ルネッサンス・バー、ナイトクラブ/東京・赤坂 金田勝年 ボバリー・会員制クラブ/東京・六本木 麻生太郎 伊豆栄・日本料理/東京・永田町
クリエイト吉祥・運営会社/東京・品川区 塩崎恭久 ケー・エキスプレス・不明/大阪・天王寺区
かどや霞邸・郷土料理/東京・西麻布
転石亭HANARE・日本料理/東京・赤坂
【注】飲食を伴うとみられる支出項目(交際費や会合費など)を独自に合算。政治団体によって記載基準が違うため、一部で実態と異なる可能性がある。屋号や会社名の支出先は、実際の店舗名が分かったものを集計対象とし、エリアは報告書記載の住所に準じた。料理のジャンルは主なもの。共産党の志位和夫委員長は、個人の政治団体がないため集計の対象外とした。 http://digital.asahi.com/special/seijishikin/outgo/?iref=special_seijishikin_outgo_redirect 政治家 行きつけ20選政治資金特集「支出編」(2016/12/01朝日新聞) 政治資金収支報告書の支出欄には、飲食店やホテル、クラブなどの名前がずらりと並ぶ。永田町に近い繁華街での高額支出も多い。現職の閣僚や党首はどんな店に通うのか。2014年と15年(16年11月25日までの公開分のみ)分から、独自に集計した。(今後の公開に伴い随時更新します) 麻生太郎 ホテル 67回 608万5734円 石原伸晃 ホテル 90回 391万4228円 塩崎恭久 ホテル 59回 360万4464円 稲田朋美 ホテル 59回 518万5275円 岸田文雄 寿司、海鮮料理 42回 269万4319円 安倍晋三 ホテル 24回 181万6944円 http://www.asahi.com/special/seijishikin/outgo/giin/ (考・野党 維新はどこへ:下)「敵」を徹底攻撃、喝采と批判(2016/12/01朝日新聞) 日本維新の会が訴える政策は、既成政党や既得権益に反感を持つ層や若い世代を意識したものが目立つ。大阪で実現した改革を国政でも訴え、憲法改正の項目や国会での投票行動につなげているのが特徴だ。敵に見立てた相手を容赦なく攻撃する言葉は、喝采と共に批判も浴びている。・・・維新の特徴は、政策を語るうえで敵と見定めた相手に対する言葉遣いだ。橋下氏が都構想を掲げた際には「税金をむさぼり食う市役所を解体」と言い切った。同じ野党の民進党批判は強烈で、松井代表は民進の審議拒否を「給料泥棒」と表現。足立康史衆院議員は国会質問で「民進党ってアホ」などと述べ、懲罰動議を出されている。 こうした攻撃的な言葉遣いは、政界だけでなく、住民の間にも激しい摩擦を引き起こした。松井氏らが2018年秋に都構想の住民投票の再実施をめざして開いている大阪市の説明会では、有権者から「ああいうのはもう嫌だ」「1万票差で負けたことを繰り返す愚かさを感じる」との不満の声が上がった。(矢吹孝文、関根慎一) http://digital.asahi.com/articles/DA3S12684341.html (社説)もんじゅ後継 無責任さにあきれる(2016/12/01朝日新聞) 利害関係者だけが集まり、密室で不合理な政策を決めていく。手痛い失敗の検証や反省がないまま、成否が見通せない巨額のプロジェクトに突き進む。政府はきのう、非公開の会議で、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の後継となる高速実証炉の開発を国内で進める方針を示した。 無責任さに驚き、あきれる。 1兆円超を投じたもんじゅは、1994年の初臨界からの20年余で、わずか220日ほどしか動いていない。扱いの難しい冷却用ナトリウムを漏らすなど、事故を起こしたからだ。・・・そもそも、議論の場がおかしい。きのうの会議の参加者は経済産業相や文部科学相、電力会社でつくる電気事業連合会、原子炉メーカーの三菱重工業、もんじゅの運営主体である日本原子力研究開発機構と、もんじゅの関係者ばかり。原子力機構の2人は三菱重工業と文科省の出身で、役所と企業の思惑だけで話を進めていると言っていい。 なぜ、ここまで高速炉開発にこだわるのか。 原発で生じた使用済み核燃料を再処理し、取り出したプルトニウムを燃料に使う。その核燃料サイクルの中核に位置づけてきたのがもんじゅだ。もんじゅ廃炉の方向性は示したものの、後釜を欠けばサイクルが崩壊し原発推進にも影響しかねない。そんな危機感があるのだろう。 だが日本は既にプルトニウムを48トン、通常の原爆で6千発分を保有する。高速炉の実用化に具体的な展望がない今、経済性も欠くサイクルへのこだわりは国際的な疑念を招くだけだ。・・・政府はいま、過去の教訓に目をつぶり、お手盛りの会議で、疑問だらけの高速炉開発に税金をつぎ込もうとしている。こんな愚行は許されない。 (耕論)もんじゅの知恵どこに 大島堅一さん、河野太郎さん(2016/12/01朝日新聞) ■事業性なき開発、やめよ 大島堅一さん(立命館大学教授) 実現のめどが立たない研究でも、「未来のエネルギー」として夢や幻を描いてきたのが、原子力開発の歴史です。もんじゅは運転中止から既に21年たっており、もっと早く廃炉を決断すべきでした。「国家プロジェクトだから」と何十年も続ける原子力開発のようなケースは、さまざまな研究領域の中でも極めて例外的です。次世代自動車の開発に、国が何千億円もかけはしません。・・・これだけ巨費を投じても、高速増殖炉が生み出すのはしょせん電力です。欧米各国は既に「コストが合わない」と撤退しました。推進派は「ロシアや中国は続けている」といいますが、そのこと自体、採算度外視で国家が関与しないとどうにもならないものだという現実を示しています。 東京電力福島第一原発事故後、私は政府のエネルギー・環境会議の委員として「原発事故の費用もコストとして計算すべきだ」と主張し、認められました。しかしその後、経済産業省の総合エネルギー調査会の委員会で「過去の原子力政策のどこに問題があったかを徹底的に議論すべきだ」と意見を述べましたが、結果的に無視された。あれだけの事故があっても、残念ながら政府は変わりませんね。 プルトニウムを燃やす高速増殖炉が無理だということになれば、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理も必要なくなります。そうはいってもためておくわけにもいかないプルトニウムを混ぜたMOX燃料を軽水炉で使うプルサーマル発電は、燃料効率が低く、通常の原発より採算が悪いのです。・・・ 省エネが進めば必要なエネルギーも減り、再生可能エネルギー中心の社会に移行できます。実現困難な技術のために立地対策するような無理な支出も必要ありません。まだ稼働していない青森県六ケ所村の再処理工場を含めて核燃料サイクルは中止すべきです。 ■政策の間違い認め、変更を 河野太郎さん(前行政改革担当相) 1995年のナトリウム漏れ事故後、もんじゅが運転できなくなった時点で廃炉を決断すべきでした。ずるずると、20年以上の歳月、炉の維持費として数千億円の国費を浪費しました。なぜ、決断できなかったのか。政府が使用済み核燃料について、原発の立地自治体には「県内には残しません」と言って青森県六ケ所村の再処理工場に持っていく一方、青森県には「これはゴミではなく資源です。再処理しない場合は元に戻します。青森を最終処分場にはしません」と約束してきたからです。もんじゅを廃炉にしたとたん、再処理してできるプルトニウムは使い道がなくなります。プルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を通常の原発で燃やすプルサーマル発電もあるにはありますが、通常のウランに比べコストが高いため、利用は拡大していません。経済合理性から見ても、核燃料サイクルは意味がないのです。 ・・・この期に及んで政府がまだ高速炉研究に多額の予算を充てると言うのは、過去の政策の間違いを認めたくない、という以外の何ものでもありません。とるべき道はただ一つ。もんじゅを速やかに廃炉にし、従来の核燃料サイクル政策を変更すること。その上で青森県に対し「青森を最終処分場にはしないが、中間貯蔵場所にさせてほしい。しかるべき保管料は支払う」と頭を下げることです。 http://digital.asahi.com/articles/DA3S12684248.html (声)改憲、日本会議の影響力を危惧(2016/12/01朝日新聞)無職 渡部茂光(福岡県 76) 衆院の憲法審査会の討議が再開された。だが、日本の政界では、立憲主義の基本認識さえ共有されていないように感じる。特に問題なのは自民党の憲法改正草案だ。その理念は本来の「権力を縛る装置」とは逆で、「国民を縛り、国民に義務を課す」という点にあると受け止められる。現行憲法が戦後、いきすぎた個人主義をもたらしたというのが自民党の見方で、草案は個人の権利縮小を掲げる。安倍晋三首相がかつて唱えていた「美しい国」路線と重なり、「国家あっての国民」という意識が強くにじむ。 これら安倍自民党の右転回の背景には、憲法改正の国民運動を全国で展開してきた「日本会議」の意向があるようだ。国会で改憲勢力が3分の2超を占め、会議の狙いは、自民党草案を元に、個人の権利より公共への奉仕を優先する改憲案を国会で発議し、国民投票で過半数を得ることだろう。安倍政権の閣僚には、麻生太郎財務相、高市早苗総務相、稲田朋美防衛相ら会議の議員懇談会メンバーが並ぶ。政権と会議の関わりの強さに危惧を覚える。安倍自民党と日本会議は、この国をどこに連れて行くつもりなのだろうか。 (読み解き経済)異次元緩和の先に 経済史を研究する岡崎哲二さん(2016/12/01朝日新聞) ■高齢化時代のインフレ対策を 日本銀行が2013年4月に開始した「異次元金融緩和」は、当初宣言した2年間でインフレ率を2%に引き上げるという目標が実現できず、大規模な量的緩和を3年半にわたって継続・追加してきた。その結果、日銀が市場に供給するお金の量であるマネタリーベース(日銀券発行高と日銀当座預金の合計)が、膨大に積み上がっている。物価の低迷が続くなかで気が早いという反論を承知のうえで、この状態がはらむ深刻なリスクを指摘したい。それは、近い将来、インフレが2%を超えて加速し、制御が困難になる危険性だ。・・・これまでの実績を見ても、マネタリーベースの増加は、文字通り次元を異にしている。前年と比べた増加率は13年4月に20%を、11月には50%を上回った。14年2月をピークに増加率は下がっているが、16年9月でも20%を超える。その結果、異次元緩和開始前の13年3月に135兆円だったマネタリーベースは、16年9月には408兆円と3倍以上に増加した。 ところが、インフレ率はゼロからマイナス圏にとどまったままだ。これは、日銀、政府、そして大胆な緩和を推奨した人々の想定を超える、いわば異次元の事態だったのではないか。・・・しかし、これらのインフレが生じた当時と今日では、大きく異なる事情がある。人口構成だ。総人口に占める65歳以上の高齢者の比率は、1946年に5・6%、73年に7・5%、そして2016年には27・3%となり、今後確実に上昇していく。さまざまな資産のうち、もっともインフレに強いものの一つは人的資本、すなわち「働く能力」だ。逆に弱いのは、預金や国債などの額面が固定されている金融資産である。 かつてのインフレ時には、人口に占める高齢者の比率が低く、国民の大部分が「働く能力」を持っていた。それまでの資産の蓄積を失っても、働くことによって、インフレに応じて上昇する賃金で暮らしを守ることができた。しかし現在の日本は、蓄えてきた預金と年金に依存する多くの高齢者を抱えている。そして年金積立金の40%程度は、インフレに弱い国内の債券で運用されている。ここまで政策的にマネタリーベースを拡大させ、今後さらなる拡大をめざす以上、政府・日銀は、インフレ加速の可能性を念頭に置き、事前に対策を注意深く検討しておく必要がある。 |