ふっくらと 真っ白な雪
まるでとびっきりの砂丘のようだ
足跡をつけたくないな
僕はそう思って景色に見入る
ゆっくりと
目で雪原を追いかけると
なにやら黒い点が見える
あれはなんだろう
ただ一点の
黒のコントラストに惹かれて
思わず目を凝らすと
それは何と一匹の黒猫だった
冷たい雪の上に
こともなげにたたずんでいる
見間違いだろうか
あまりの幻想的な風景に
我が目を疑う
でもあれは確かに黒猫だ
寒くないんだろうか?
黒猫は心地よさそうに見える
おかしいな
何故なんだろう?
あそこには何か
暖かいものがあるのだろうか
僕には見えない
暖かいものが
ああ、そうか
真っ白な雪と
真っ黒な猫の
コントラストに
目を奪われていたけど
黒猫は
膝の上に抱かれているんだ
雪と見間違うほど
白く透き通った女性が
猫を抱いている
彼女は雪の精だろうか
それとも
あの猫の守り神なのだろうか
そう思って見つめ直すと
ぼんやりとした輪郭の奥に
やさしい視線と
かすかな笑みが
見えたような気がした