長いこと歩き続けて
随分遠くまで来たと思ったら
ここは元の場所じゃないか
何かを目指して
懸命に先へ進んで来たはずなのに
ここはもとの場所
あの長い道のり
苦しくて荒れはてた道は
一体何だったの
そりゃあ
素敵な景色もあったよ
平坦でらくな道もあった
でも多くは荒れた道
転ばないよう
落ちないよう
冷や汗かきながら
歩いた道だ
ここにたどり着くなら
歩かなければよかった
じっとしてればよかったんだ
それは違うって?
よく見てごらんだって
何が・・・
そういえば何か聞こえるね
以前は耳にしたことのない音
そして声
全てが話しかけてるんだ
そうか
同じ場所だけれど
知らないものがいっぱいあるんだ
新しいものがこんなにあるんだね
聞こえなかった音
見えなかったもの
感じなかった温もりが
こんなに
こんなにも
ここにあるんだ
僕の五感は死んでいたんだね
分かったよ
僕は決してこの場所にいたことはなかった
今はじめてここを知ったんだ
歩き続けてきたことは
無駄ではなかったんだね
旅は本当の目や耳や
口を与えてくれたんだ
この場所を知りつくすまで
ここで休もう
心ゆくまで楽しもう
そしてもう一度
旅に出るんだ
たとえこの場所に
また帰ってくるとしてもね