デザインは物語
毎日は独立した短編とも言えるし、
人生と言う長編の一部だとも言えます。
どんな年もどんな日もどんな時にもストーリーはあります。
<ストーリーとは時間の流れ>
全てのデザイン表現は何らかの意図に基づいて行われます。それが平面であっても空間であっても、表現の目的があります。 建築デザインのように3次元空間を対象にする場合はアプローチからの動線そのものがストーリー性を持ちますし、風や水の流れや日差しの効果などももう一つのストーリー性です。
そして2次元のグラフィックスの場合は映画や絵本のように複数のシーンやページがある場合は別として、単一の画面にこのストーリー性を表現しなくてはなりません。 目に見えないストーリー性がもの造りの背景にあれば、形や色の視覚的な不均衡や不調和を調整して緩和させることも出来ます。 物語は時間と共に進行していきます。ですからストーリー性があるとかないとかは時間の流れを感じられるかどうかという問題です。一番分かり易いのは映画のポスターです。 大抵の映画のポスターは映画の中のシーンそのものがコラージュされてつくられています。そこではデザイナーは労せずストーリー性を表現できます。
少し話が変わりますが、音楽でもビートルズの曲がこんなに長い間支持され続けるのは、2つのストーリー性を持っているからです。 それは曲自体と歌詞の中にあります。歌詞に分かりやすいストーリー性があり、そして曲にも同じように、メリハリのきいたストーリーがあります。 そして歌詞と曲の双方の時間の流れが不思議なほどマッチしているように思えるのです。その他の作品でも世代を越えて愛され続けている楽曲にはストーリー性の強い作品が多いようです
<言葉とグラフィックス>
色や形にとてもインパクトがあって印象的な表現がなされていても、人間は平面に関しては瞬時に認識してしまい、すぐに興味を失います。 じっと見入るように仕向けるには、ストーリー性が必要です。色のグラデーションは色彩が変化する時間の流れですし、透かしや重ねの表現は空間の奥行きの擬似的な時間の流れです。ポスターや本の様に言葉による表現が使える場合は言葉そのものもストーリーとなります。
もともとキャッチコピーの目的が、そこにあります。たった一行のコピーで目的とする世界のイメージや内容を表さなければなりません。 このグラフィックスと言葉の関係は音楽における曲と歌詞と同じです。双方にストーリー性が感じられれば、とても魅力的な表現になります
<形とストーリー>
物の形には全てストーリーがあります。数字の1.2.3.と言う形にも、ひらがなや漢字やアルファベットにしてもその記号としての形の成り立ちにはストーリーがあるはずです。 家具の椅子一つの形にしても、座る人や、場所、要素にあわせてそのデザインにはストーリーが外蔵されています。 椅子の形から、キッチンの様子やリビング、あるいはテラスの環境を読みとる事もできます。シャーロックホームズのようにたった一つの足跡から犯人像を想像することもできます。これらは形からのストーリーの組立です。 反対に、一見混沌とした画面に見えるグラフィックスでもその中にストーリー性が組み込まれていれば、結果として必然的な形が現れて来ると言うことです。 例えば「世界の木製家具展」と言うような展覧会があってそのポスターをデザインする場合があるとします。 その時家具そのものの写真を表面にださずとも、森林や木目、布や家具を作るための道具等を、家具と言うイメージの中で組み立てていけば、世界の木製家具展の表現は出来ます。 家具作りの職人さんの手と鑿だけでもいいと思います。家具そのものの写真をレイアウトしたポスターよりも、数段インパクトのある表現が出来ます。そしてこの作り方ならストーリー性も必然的に出来てきます。
ストーリー性を演出する一つの方法は、出来上がった物の形を分解してその素材や成り立ちのルーツを辿ることです。この考え方を持っていればどんなジャンルのどんなデザインを創作する時にも対応する事が出来ます
次は読書のすすめです>>>
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1.デザインとは 2.色彩について 3.映画鑑賞のすすめ 4.形について 5.街歩きのすすめ 6.山歩きのすすめ 7.空間について 8.ストーリー性について 9.読書のすすめ 10.五感とデザイン 11.旅行のすすめ 12.イメージについて |