企業の政策減税、倍増 安倍政権で1.2兆円、62%巨大企業 12・14年度比較(2016/02/14朝日新聞) 研究開発減税の恩恵は大企業に集中する。企業数では全体の0・1%にも満たない資本金100億円超の企業への減税額が全体の8割。政策減税全体でも資本金100億円超の企業への減税額が7365億円と12年度の2・5倍に増え、全体の62%を占めた。12年度の56%より高まった。財務省の報告書で、減税対象の企業名は非公表だ。朝日新聞が大手企業の有価証券報告書などと突き合わせて分析したところ、研究開発減税の適用が多い上位5社は、トヨタ自動車(減税額1083億円)、日産自動車(213億円)、ホンダ(210億円)、JR東海(192億円)、キヤノン(157億円)とみられることが分かった。(牧内昇平) (東日本大震災5年 復興はいま)除染ごみ、搬出遠く 中間貯蔵施設の用地取得難航(2016/02/14朝日新聞) 公園・軒先に900万袋 県内では公園や農地、民家の軒先などに、今も除染廃棄物が詰められた袋「フレコンバッグ」が置かれたままだ。昨年9月末で、約11万5千カ所に約900万袋積み上がる。「袋を早く中間貯蔵施設に持って行ってくれ」との声が上がる。 (社説)日本人拉致 調査の約束を果たせ(2016/02/14朝日新聞) http://digital.asahi.com/articles/DA3S12209008.html (声)語りつぐ戦争 薬も包帯も食料もない野戦病院(2016/02/14朝日新聞)無職 本郷勝夫(宮城県 92) 1943(昭和18)年11月に召集を受けた。衛生兵としての教育を十分に受けないまま、翌年1月に中国大陸に渡った。前線の後方につくられた野戦病院5カ所を転々とし、終戦までに内陸部を2千キロ以上も移動した。患者の多くは、栄養失調で運び込まれた兵隊たちだった。多い時で200〜300人ほどいた。その患者に食事を与えるのが私の仕事。ところが補給路は寸断されており、食料はほとんど届かない。やむなく現地の民家から米や塩、鶏や豚などを略奪した。それでも、我々が食べる分がやっと。炊事担当の兵から渡される患者の食事は1日1食分だけで、それもひどいものだった。おかゆより薄いのり状の汁を飯盒(はんごう)のふたに半分程度入れ、あとはわずかな塩を与えるだけ。飢えに苦しむ患者から「もっとくれー」と叫ばれても、私は黙っているしかなかった。野戦病院は、病院とは名ばかり。負傷兵が運ばれて来ても、薬も包帯もなくて治せない。軍医もいたが、治療する姿は一度も見たことがなかった。数日間、ただ患者を預かるだけだった。初めは患者を助けるという衛生兵の本分を胸に抱いていた。けれども、自分が生き残ることで精いっぱいの戦地で、いつの間にか頭から消えてしまった。当時のことを思い出すと、すまない気持ちでいっぱいになる。 重力波、世紀の発見をもたらした壮大な物語(2016/02/12ナショナルジオグラフィックス) LIGOの科学者たちは、信号は本物だと確信している。彼らの見積もりによれば、これだけ本物らしい偽の信号は20万年に1度しか入ってこないという。LIGOは2015年10月12日にもブラックホールの合体により発生したと思われる候補信号を少なくとも1つ検出しているが、それが偽の信号ではないという確証はないという。・・・今回の発見により、科学者は初めて重力波を直接捉えることに成功した。けれども重力波の存在は以前から証明されていた。1974年、ジョー・テイラー氏とラッセル・ハルス氏が、連星パルサーという新しい奇妙な天体を発見した。連星パルサーの正体は、お互いのまわりを回る2つの中性子星である。このパルサーを観測した彼らは、回転の軌道がどんどん小さくなっていることを発見し、その原因は重力波が系からエネルギーを持ち去っているからであるとしか考えられないことに気づいた。・・・重力波天文学が主流になるにはまだまだ時間がかかるだろう。けれどもその時代が到来したときには、これまで数学の領域にあった目に見えない極端な天文現象が観測可能な領域に出てきて、解き明かされるのを待つことになる。 市場の混乱 金融政策に依存は限界(2016/02/13京都新聞) 水俣条約締結 国内の課題解決忘れるな(2016/02/13京都新聞) ニュージーランド南部でM5.7の地震 津波警報なし(2016/02/14朝日新聞) (あのとき・それから)昭和25年 放送法施行 「表現の自由」掲げた第1条(2016/02/14朝日新聞)
放送法への誤解が大きいですね。第1条で「放送の自律、表現の自由」を掲げ、第3条で「何人からも干渉・規律されない」としている。「公安、善良な風俗を害しない」「政治的に公平」など4条は全部倫理規定です。これに権力が介入するのは、許されないと思います。・・・今、自民党に反安倍はない。だからマスメディアも権力にノーと言いづらい。なぜこうなったか。僕は小選挙区制が影響していると思う。総裁選に野田聖子さんが立候補しようとしたが、主流派から公認を出さないなどと言われ、推薦人が集まらなかった。自民党が自由で開かれた政党でなくなった。非常に危険な状態だと思っている。 一昨年の衆院選前、自民党が在京テレビ局に選挙時の報道の公平中立を求める文書を出した。テレビ局は抗議どころか、受け取った時、文書のことすら報道しなかった。自主規制です。僕はやりましたよ。「朝まで生テレビ!」で。報道して視聴者に明らかにしないから圧力になる。このままでは民主主義自体が危ない。こういう時こそジャーナリズムが頑張るべきです。 (電力を問う 原発事故5年:5)崩れる独占、160社攻勢(2016/02/12朝日新聞) 『言』 原発のコスト 「安い」は神話にすぎない(2016/02/12朝日新聞) ―「原発がなければ、日本経済は立ちゆかない」と考える人もいます。 ―しかし昨年の経済産業省の試算では、新設する原発の発電コストは1キロワット時10・1円と、他電源より安くなりました。 ―新設では高くても、今ある原発については再稼働させたほうがいい、との声もあります。 世界最古の神殿、新たな保護プロジェクト(2016ナショナルジオグラフィックス) 重力波天文学に道開く 初観測のLIGOチーム(2016/02/12琉球新報) http://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-220225.html 海上の大型船移動 辺野古、ゲート前に300人(2016/02/12琉球新報) 『今を読む』 フランスの若者たち 多文化背負い 非核目指す(2016/02/09ヒロシマ平和メディアセンター) フランスの年明けは忌まわしい回想で始まった。昨年11月13日にパリで起きた連続テロの記憶もまだ生々しいうちに、1年前の風刺漫画雑誌社襲撃と連動テロがマスコミで取り上げられたのだ。これらのテロは国内のイスラム教徒を窮地に陥れる一方、極右・国民戦線(FN)の支持者を増やす結果を招いた。 ・・・さて連続テロの陰に隠れてフランスでは原発も核兵器も問題視されていないように思えるが、元国防大臣で核廃絶を訴えるポール・キレスは「核兵器はテロの抑止にならない」と言い切る。核兵器を所有することで敵からの攻撃を抑止できるという主張は、もはや成り立たない。ここ数年、フランスのテレビでは原爆ドキュメンタリー番組が増えた。以前は「原爆が大戦を終了させた」というアメリカの原爆投下正当論がフランスでも主流であったが、最近は原爆の投下理由が史実に基づいて分析されるようになった。むろん、こうした変化が政治に反映されるにはまだ時間がかかるだろう。 昨年12月にパリ北部で開催された国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)に先立ち、9月には共和国広場において環境問題に取り組む非営利団体のイベントがあった。予想以上に大きな規模で、しかも多くの若者たちが原発に反対し、世界の貧富の格差を批判し、熱っぽく語る姿が見られた。 ・・・多民族国家であるフランスは1万人の町でも住民の出身国が30〜60カ国に及び、パリ郊外の10万人の都市にいたっては国連加盟国の数を超える。その一方でフランスで生まれた子どもはフランス国籍を得ることができる。これからのフランスを支えていく世代には2カ国、3カ国さらに4カ国の歴史や文化を背負って生まれた若者が多い。彼らがどのような文化を築き、平和共存の手法を編み出していくか、期待しながら私もヒロシマを語り続ける。 福島のヤマメに貧血傾向/放射性物質多いほど(2016/02/11共同通信) 信仰は衰え、国家は破壊された エマニュエル・トッド氏(2016/02/11朝日新聞) 悪い方へ悪い方へと回り続ける歯車をだれも止められない。そんな気分が世界に広がる。過激派といわれる勢力の暴力、難民や移民への排他的な反応、分断される社会。新著「シャルリとは誰か?」(邦訳、文春新書)で、その閉塞(へいそく)状況の読み解きに挑んだフランスの知識人、エマニュエル・トッド氏に聞いた。 ――15年前、米同時多発テロが起きたとき、あなたは中東は近代への歴史的な移行期にある、と話してくれました。イスラム過激派と呼ばれる運動は、その流れへの激しい反動だと。今、起きていることもその表れでしょうか。 「奇妙なことに、中東について新たな宗教戦争という見方がよく語られます。シーア派とスンニ派の戦争だという。だが、これは宗教戦争ではない。イスラム圏でも宗教的信仰は薄れつつあります。人々がその代わりになるものを探している中で起きているのです」「『イスラム国』(IS)もイスラムではありません。彼らはニヒリスト。あらゆる価値の否定、死の美化、破壊の意思……。宗教的な信仰が解体する中で起きているニヒリズムの現象です」 ――欧米の対応はそこを見誤っているのでしょうか。 「アラブ世界は国家を建設する力が強くない。人類学者としていうと、サウジアラビアやイラクなどの典型的な家族制度では、国家より縁戚関係の方が重みを持っています。イラクのフセイン政権はひどい独裁でしたが、同時に、そんな地域での国家建設の始まりでもあった。それを米ブッシュ政権は、国家秩序に敵対的な新自由主義的思想を掲げ、国家の解体は素晴らしいとばかりに戦争を始めて、破壊したのです」 「中東でこれほどまずいやり方はありません。今、われわれがISを通して目撃している問題は、国家の登場ではなく、国家の解体なのです」 ――信仰が薄れるにつれ、社会秩序を支えるにはますます国家が必要になるのに、逆に破壊するちぐはぐな対応というわけですね。 「つまるところ、中東で起きているのは、アラブ圏で国家を築いていく難しさと、米国などの新自由主義経済に起因する国家への敵対的な考え方の相互作用の結果ではないかと思います」 ――あなたは新しい著書で、テロのあとの仏社会の側の動揺と迷走を分析しました。 「フランスは夜に入ってしまったようです。私が愛した多様で寛容なフランスは別の国になったように感じています」「パリでテロを起こし、聖戦参加のために中東に旅立つ若者は、イスラム系だが生まれも育ちもフランスなど欧州。アルジェリア人の友人はいみじくもこう言いました。『なんでまた、欧米はこんな困った連中をわれわれのところに送り込んでくるのか』。あの若者たちは欧米人なのです」 ――そこを直視すべきだと主張したあなたの著書は、激しい反発を呼びましたね。 「本が出て多くのテレビ番組に呼ばれたが、侮辱されるばかり。『君は本当のフランス人ではない』とさえ言われました。そこにあったのは反知性主義です」「今、テレビやラジオでは『イスラムが問題なのは自明』などという連中が幅をきかせています。彼らはイスラム嫌いを政教分離原則などと言い換える。右翼の価値観がフランスの価値観になってしまったみたいです」 ――昨年1月のテロ直後に数百万のフランス人がデモに繰り出し、抵抗の決意表明として内外で称賛されました。しかし、あなたはそこにイスラム系市民への排他的な空気を感じ取り、仏社会の病理を読み解きました。「デモに繰り出した人の割合が高かったのは、パリ周辺よりもむしろかつてカトリックの影響が強く、今はその信仰が衰退している地方。また階層でいえばもっぱら中間層。それは第2次大戦中のビシー対独協力政権を支持した地域、階層でもある。そう指摘して非難の的になりました」 「リベラルな価値の表明といいますが、実際はイスラムの預言者ムハンマドを『コケにすべし』と呼びかけるデモでもありました」 ■経済的合理性という「信仰」 ――欧州でも中東と同じように信仰の衰退と、それにともなう社会の分断という流れが背景にあるのでしょうか。 「そうです。今後30年で地球に何が起きるか予測したければ、近代を切り開いてきた欧米や日本について考えなければ。本物の危機はそこにこそあります。歴史家、人類学者として、まず頭に浮かぶのは信仰システムの崩壊です」 「宗教的信仰だけではない。もっと広い意味で、イデオロギー、あるいは未来への夢も含みます。人々がみんなで信じていて、各人の存在にも意味を与える。そんな展望が社会になくなったのです」「そのあげく先進国で支配的になったのは経済的合理性。利益率でものを考えるような世界です」 ――それが信仰の代わりに? 「信仰としては最後のものでしょう。それ自体すでに反共同体的な信仰ですが。経済は手段の合理性をもたらしても、何がよい生き方かを定義しません」 ――そうやって、分断される社会で何が起きるのでしょうか。 「たとえば中間層。フランスでは、経済的失敗に責任がある中間層の能力のなさの代償として、労働者階級が破壊され、移民系の若者を包摂する力をなくしてしまった。世界各地で中間層が苦しみ、解体されていますが、フランスは違う。中間層の代わりに社会の底辺がじわじわと崩れています」「そこを見ないで、悪魔は外にいることにする。『テロを起こした連中はフランス生まれだけれども、本当のフランス人ではない』『砂漠に野蛮人がいる。脅威だ。だから空爆する』。おそるべき発想。ただそうすれば、仏社会内の危機を考えなくてすみます」 ――仏政府は、二つの国籍を持つ者がテロに関与したら仏国籍を剥奪(はくだつ)するという提案をしました。確かにこれはフランスが掲げる価値観とぶつかるように見えます。 「二重国籍はフランスを寛容な国にしている制度。仏国民とは民族的な概念ではありません。フランス人であると同時にアルジェリア人や英国人であることはすてきだと考える」・・・「私は『新共和国』という言葉を本で使った。中間層が支配する国という意味です。そこでは、イスラム系に限らず、若者をその経済や社会に包摂できなくなりつつあります」 ■取り組むべきは虚偽からの脱却 ――だとすれば日本も共通するところがあります。移民は少ないが、非正規労働者として他国での移民労働者のような扱いを受ける人はたくさんいます。いわば一部の国民が戻る祖国のない移民になりつつあるのかもしれません。 「興味深い指摘です。先進国の社会で広がっているのは、不平等、分断という力学。移民がいなくても、教育などの不平等が同じような状況を生み出しうる」「それに日本の文化には平等について両義的な部分があります。戦後、民主的な時代を経験し、だれもが中流と感じてきた一方、人類学者として見ると、もともと日本の家族制度には不平等と階層化を受け入れる面がある。民主的に働く要素もあれば、大きな不平等を受け入れる可能性もあります」 ――簡単に解けない多くの難題が立ちはだかっているようです。何が今できるのでしょうか。 「この段階で取り組まなければならないのは、虚偽からの脱却です。お互いにうそをつく人々、自分が何をしようとしているかについてうそをつく社会。自分を依然として自由、平等、友愛の国という社会。知的な危機です」「それは本当に起きていることを直視するのを妨げます」 (核の神話:13)従順な「原子力ムラ」なぜ生まれたか(2016/02/11朝日新聞) それは、労働者が快適な生活環境を与えられ、企業とそれを受注する国に依存していたからです。マンハッタン計画に参加し、冷戦期にもハンフォードの事業を請け負ったゼネラル・エレクトリック社(GE)は、このシステムを「原子力ムラ」と呼びました。労働者の家庭に無料でおむつを配布し、町にはレベルの高い学校をつくる。労働者は家を買う必要もありません。ただ同然で快適な家を借りられたからです。貧しかったはず工場労働者に「中流意識」を持たせました。のちに日本に原発を持ち込んだGEは、ハンフォードの「原子力ムラ」のような国策依存構造を福島にも植え付けたのでしょう。・・・旧ソ連と違って報道の自由がある米国では、1950年代に急転換がありました。戦後、マンハッタン計画を引き継いだ原子力委員会は放射線被曝(ひばく)そのものよりも、民衆のヒステリーにさらされることの方を恐れるようになったのです。米国が水爆実験をした太平洋ビキニ環礁での第五福竜丸などの被曝(ひばく)事件が大きなきっかけでした。米国内でもネバダ核実験場からの放射性降下物に対する拒否反応が広がり、公衆衛生の対応から世論対策に重心が移りました。核開発を進めたい米国主導で国際放射線防護委員会(ICRP)が設立され、被曝の「許容線量」の考え方が導入された。世界的かつ長期的な広報戦略が今日に至るまで続いています。・・・90年代になると、ハンフォードの風下住民や農民らの健康被害があらわになり、放射線の影響が疑われましたが、工場労働者の多くは気に留めませんでした。70年代に原子力委員会を引き継いだエネルギー省や原子力産業によって「低線量の放射線は心配ない」という言説が米国社会に振りまかれていたからです。それは、たばこ産業が自前の研究結果を示して「喫煙は人体に無害だ」というのと同じような広報戦略です。 それは4段階あります。まずは、自然化。「放射線は太陽のようなものです。元々自然界に存在するものですよ。だから、大丈夫なのです」と。さらに、ハンフォード施設沿いの川を自然保護区に指定して、野鳥が集まる美しい公園として売り出そうとしている。これは、「自然化」の広報戦略の一環です。実際には米国各地の核開発によって、人間の健康だけでなく、環境汚染や生態系への負の影響をもたらしてきたことを隠すものです。 次に、対抗研究。「子どもの甲状腺に腫瘍(しゅよう)が出来るのは放射性物質が原因だろう」という研究が発表されると、別の学者を買収して「まだわからない、証拠がない」と言わせる。 第3に、健康被害を訴える人々自身のせいにする。「放射線を恐れすぎです。食生活やアルコールの方があなたの健康にとっては問題ですよ」と。 最後に、答えの出ない「先端研究」に投資して結論を引き伸ばす。米国のある大学には、多額の国家予算を投じて、刑務所の囚人男性に放射線を照射して精子への影響を調べる研究を12年間もやらせました。結果、放射線の人体への影響は「わからない」という。ハンフォード施設からの放射線で環境や牛は汚染されているけれども、人体との因果関係はわからないというのです。・・・ 実は、マンハッタン計画以前から、米軍の指揮官や計画中枢の科学者たちは、微量の放射性物質であっても人体に吸収されると健康被害を引き起こす可能性があることを動物実験や人体実験で知っていました。原爆開発の中心科学者ロバート・オッペンハイマーらは、放射性物質で食品を汚染させることも検討していたのです。 一方、ハンフォードのプルトニウム生産の現場で、被曝の危険性があることを労働者らが知ったらパニックになりかねない。デュポン社の幹部らは、マンハッタン計画を指揮した陸軍のレスリー・グローブス将軍やスタッフォード・ウォレン医学部長に相談しました。しかし、放射線の危険性に関わる情報は、労働者の士気を下げ、予定より遅れていたプルトニウム生産と原爆開発の妨げになる。そう考えた指揮官らは、危険性を示すような研究データを握りつぶしました。戦争に勝つためには、放射線被曝のリスクは許容できるものだという考えを押し通したのです。 広島・長崎への原爆投下で即死はしなかったものの、残留放射線を浴びて、がんやそれ以外の病気で亡くなった人も多かったはずです。体内に吸収された放射性物質によって免疫系が破壊されて体が弱り、感染症や肺炎、結核などにもかかる。戦後、ウォレンを団長とする「原爆効果調査団」は広島・長崎に入って、そのことを確かめた。しかし、現地からの報道を規制する一方で、米軍の記者会見では「広島・長崎で残留放射線の影響はない」と発表しました。・・・広島・長崎の被爆者のデータは、ここでも「黄金律」として使われています。例えば、ハンフォード施設沿いのコロンビア川で子供のころ泳ぎ、のちに病気になった女性がいます。女性の子供も病気で、両親は甲状腺がんなどで亡くなりました。放射線との因果関係は一見明らかに思われますが、裁判で補償を勝ち取るためには、広島の被爆者でがんになった人よりも多くの放射線を浴びたことを証明しなくてはならない。そうでなければ、「あなたのがんは放射線のせいではありません」と切り捨てられてしまうのです。 放射線の罪は問われたことがないばかりか、医療現場でがん治療やCTスキャンなどにも使われ、問題視されません。原子力を推進する産業界も「原子力はそれほど悪くないし、気候変動の問題解決にも資する」と宣伝する。しかしこれは、米国社会に広がる無知です。ハンフォードの核汚染の実情を見れば、深刻さが分かるはずでしょう。 福島原発事故後の日本でも「原子力ムラ」の広報戦略が続いているように見えます。過去の原発事故の教訓から学んでいない。東京電力は事故後、チェルノブイリ事故当時の旧ソ連当局と同じことを言いました。「メルトダウン(炉心溶融)ではない」。しかし、のちにメルトダウンを認める。住民を避難させなくてはならなかったのに、「そんなに心配はない」と過小評価する。結果、住民らにはヨウ素剤が与えられなかった。・・・ 私は元々、旧ソ連の歴史研究者です。ソ連と日本は違うはずだ、日本の科学技術や組織管理は信頼できるはずだ、と思っていました。しかし、東京電力や日本政府の対応を見ていると、ある意味、ソ連よりひどいと思います。「アンダーコントロール」だとウソをついて、避難住民らの福島への帰還政策を進めている。広報戦略によって放射線の危険性を見えなくしている。住民らがそれに従わざるをえないように追い込まれているのが、まさに国策依存の「プルトピア症候群」です。冷戦は終わっても、マンハッタン計画から始まった核時代は終わっていないのです。 「電波停止」発言 表現の自由狭めかねぬ(2016/02/11京都新聞) 政治資金の規制 自民の逃げ腰が目立つ(2016/02/11東京新聞) トルコ大統領、米のクルド支援を非難 「血の海もたらす」 ドイツが挑むエネルギー革命(ナショナルジオグラフィックス) 福島の事故で加速したドイツの「脱原発」 この大転換に拍車をかけたのは、2011年に日本の福島第一原子力発電所で起きたメルトダウンだ。事故後すぐに、ドイツのメルケル首相は同国内にある17基の原子炉を2022年までに全廃すると宣言した。すでに9基が閉鎖されたが、それを補う以上の電力を再生可能エネルギーで確保できている。 http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/magazine/15/102300010/102400002/ 太陽光発電で村の暮らしに電気を!(ナショナルジオグラフィックス) |