(ひと)斎藤陽道さん 「声」を写す、ろうの写真家(2015/06/18朝日新聞)
生まれたときから音のない世界にいる。補聴器をつけて公立の小中学校に通ったが、友だちや教師の会話についていけず、「音声社会につぶされそうだった」。中学卒業後に入ったろう学校で手話と出あい、会話の楽しさを知った。20代で補聴器をやめ、代わりにカメラを手にした。初めは障害者を撮ることにこだわった。健常者にない感覚や視点に引かれたためだが、被写体を選別する傲慢(ごうまん)さに気づいた。「縛りを解いたときに初めて、他の存在へ余裕を持つことができた」撮影のときは相手と筆談で対話する。ファインダー越しに見えるしぐさや表情の変化に集中して、シャッターを切る。残像を映し出す手法で、手話さえも写真に浮かび上がらせる。「音声だけが声、としたくない。写真を通して、『声』の定義の幅を広げていきたい」
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11812770.html
BACK
(ゲバラの実像)第2部・残された家族:7 貧しい人たちに関心(2015/06/18朝日新聞)
チェ・ゲバラが少年時代を過ごしたアルゼンチンの保養地アルタグラシアには、スペインからの亡命者が多く住んでいた。1936年に始まった内戦から逃げてきた人たちだ。スペインでは36年の総選挙で、社会党など左派の人民戦線が勝利した。これに軍などの右派が反発。軍の反乱が全土に広がって内戦に陥った。39年に反乱軍が勝ち、75年まで総統フランコによる独裁が続いた。・・・ゲバラの家族は人民戦線に同情していた。義勇兵としてスペインで戦った伯父もいる。ゲバラの家にはスペインから逃れてきた知識人たちが出入りし、父たちと議論していた。・・・近所に住んでいた友人で、ゲバラの2歳年上のアリエル・ビドサは「エルネストは僕たち貧しい子どもといつも一緒だった」と振り返る。ビドサの父は11年にスペインから移り住んできた鉱山労働者だった。ゲバラは、ビドサの父と話すのが好きだった。ビドサの父は、ゲバラに「人間が人間を搾取してはいけない」とよく話して聞かせた。「多くの金を持っている人と、全くない人がいるのは正しくない。金持ちはどうやって金もうけをしているのか」とも話していたという。そんな原体験がゲバラを革命家に育てたのか。ビドサは言う。「彼は幼い時から貧しい人のことに関心を寄せていた」
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11812884.html
BACK
(社説)党首討論 空費される言葉たち(2015/06/18朝日新聞)
「このはし(橋)を渡ってはいけない。そう書いてあるのに、なぜ渡ってきたのか」「いえいえ、はし(端)は渡っていません。真ん中を通ってきたのです」こんな「一休さん」の説話を想起させるほど、きのうの党首討論の議論はまったくかみ合っていなかった。・・・首相は、何のために討論の場に立っているのか理解していない様子だった。時間が限られていることを承知の上で、延々と持論を展開したり、岡田氏が「暴力を肯定した」とレッテルを貼ったりと、民主党批判に時間を費やした。法案への国民の理解を深めたいと本当に思っている人が取る態度ではない。「重要影響事態にどういうことが加われば存立危機事態になるのか」。岡田氏の質問に対し、首相は法案の定義をなぞるばかりで、あえて付け加えたのは「どういうことでなければ武力行使をしないのか、そんなことをいちいちすべて述べている海外のリーダーはほとんどいない」という言葉だった。・・・こんな審議をどんなに重ねても、日本という国のありようを大転換させる重大法案の成立を許す免罪符にはならない。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11812724.html
BACK
(声)デモに若者がいない悲しさ(2015/06/18朝日新聞)森林インストラクター 関孝雄(神奈川県 69)
国会で審議中の安全保障関連法案に反対する14日の集会に参加した。もちろん安倍内閣が進める法案に断固「ノー」を突きつけたいためだが、真の理由は「デモするためにデモに行った」のだ。デモができる社会こそが、民主主義の基盤だと信じているからだ。戦後70年の今、この国のかたちが大きく転換されようとしている。国会で論戦が繰り広げられているが、その応酬もむなしく空回りしているように思える。そんな時、国民自身が自分たちの問題として声を上げるのは当然の行為なのだ。集会には約2万5千人が参加したというが、その参加者たるや、見渡した限りでは、悲しいかなほとんどが高齢者だった。若い人たち、とりわけ学生たちの姿は見あたらなかった。これが今の日本の象徴だと思った。いつの間にか、日本人はデモができない国民になってしまった。その責任は政治家だけではなく、国会前で拳を振り上げた私たち高齢者にもある。帰りの地下鉄に、黒いリクルートスーツに身を包んだ女子学生たちがいた。就職活動に追われているのだろう。デモに参加する時間などない今の学生の状況に、思わずため息が出た。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11812726.html
BACK
MERS、強まる警戒 中東発、25カ国で死者458人(2015/06/18朝日新聞)
MERSのウイルスは、2003年に世界で流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)と同じコロナウイルスの仲間の新種で、12年にサウジアラビアで患者が確認された。世界保健機関(WHO)によると、16日現在、中東や韓国を中心に世界25カ国で1293人の感染が確認され、458人が死亡した。・・・WHOによれば、韓国のウイルスの遺伝子を分析したところ、中東のウイルスと塩基配列がほぼ一致、病原性や感染力に影響する変異は見つかってない。川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、中東で報告された患者の致死率が3〜4割なのに対して、韓国での致死率が1割台にとどまっていることに注目する。岡部さんは「感染者の調査が徹底的にされ、症状が軽い人でも発見できているから致死率が低く出ているのではないか」とみる。(南宏美、富田洸平)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11812764.html
BACK
和解の歩み、異なる日独 戦後70年 サーラ・スヴェン上智大准教授に聞く(2015/06/18朝日新聞)
日本は、米国との安保条約が外交の中心的役割を果たしたため、周辺国との和解が課題として残り続けた。1990年代の宮沢内閣から過去の歴史を直視する努力をし、小渕内閣のときに日韓共同宣言を出すなど和解が進んだ。こうした動きに反発するように歴史修正主義が浮上し、周辺国との関係が悪化した。21世紀に入り、和解という点で日独は逆の方向に向かっている印象だ。・・・ドイツでは80年代、保守的な歴史学者がナチスのホロコーストをソ連のスターリン体制下の犠牲者などと比べて相対化しようとする論争があったが、決着がつき、再浮上する動きはない。日本では90年代後半から歴史教科書を問題視する歴史修正主義の波が1度あり、数年前から波が再び強くなってきた印象だ。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11812773.html
BACK
原発PR看板、町役場で保管 双葉町(2015/06/18朝日新聞)
東京電力福島第一原発があり、事故で全町民が避難を続ける福島県双葉町は17日、「原子力明るい未来のエネルギー」などの標語を記した町内2カ所の看板を、町役場で保管することを決めたことを明らかにした。現場で保存することを求める6502人分の署名が町に出されていた。伊沢史朗町長が町議会で表明。町は当初、撤去する方針だった。だが、原発の「安全神話」を伝える価値があると判断した。今後、展示できるかどうか検討する。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11812918.html
BACK
子ども貧困法2年 一人ひとりが育つ社会(2015/06/16東京新聞)
親から子への「貧困の連鎖」を断ち切ることを目指す子どもの貧困対策法が十九日、成立から二周年。子どもの貧困対策は「未来への投資」でもある。「大学はあきらめて。お金がないから」。東京都内の大学三年生(21)は、母親に高校生の時にこういわれショックを受けた。当時、千葉県内の進学校に通っていた。父親の家庭内暴力が原因で、両親は三歳の時に別居し、離婚。妹とともに母親に引き取られた。母親は病院の清掃員と介護ヘルパーのパートを掛け持ちし、二人を育てるが、過労がもとでうつ病を発症。入院した。・・・子どもの貧困率は一九八〇年代以降、右肩上がりだ。16・3%と、六人に一人が貧困状態にある。・・・やる気見えない政府民間の取り組みも大事だが、将来を担う子どもの生活を下支えするのは政府の役割であり、社会保障政策としてやるべきだ。子どもの貧困対策は、その恩恵を受けた子の所得が将来、上がり、税金や社会保険料を払うようになり、ひいては国内総生産(GDP)に寄与することになる。長期的に見れば、日本社会にとってもメリットになる。・・・チャンスは平等に戦後、日本は、家庭が貧しくても勉強すれば、高等教育が受けられる、機会均等な社会を目指してきた。そして、高学歴化が進んだ。しかし、国立大学の授業料は四十数年で四十倍以上に高騰している。貧困や格差が拡大すれば、日本が目指した社会は失われてしまう。政府に、速やかな対策取り組みを求める。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015061602000122.html
BACK
政府の合憲主張「法律学の原則と衝突」 長谷部・小林氏が再批判(2015/06/16朝日新聞)
衆院憲法審査会で安全保障関連法案を「憲法違反」と指摘し、与党から批判を受けた長谷部恭男・早大教授と小林節(せつ)・慶大名誉教授が15日、東京都内の日本記者クラブで会見した。長谷部氏は「(最高裁の)砂川判決から集団的自衛権行使を合憲とする主張は、法律学の基本原則と衝突する」と述べ、関連法案の撤回を訴えた。また、高知市で同日に開かれた同審査会地方公聴会では、一般公募の意見陳述者6人中5人が法案に反対や批判を表明した。長谷部氏は、自民党の高村正彦副総裁らが、1959年の砂川事件の最高裁判決を引用して集団的自衛権行使の根拠としていることについて「砂川判決で問題とされたのは、日米安全保障条約であり、日本が集団的自衛権を行使しうるか否かは全く争点になっていない」と指摘。「わらにもすがる思いで持ち出したのかもしれないが、しょせんわらだ」と主張した。小林氏は「安倍内閣は憲法を無視した政治を行う以上、独裁の始まりだ」と批判。安保法案について「法的にも政治的にも経済的にも愚策。9条に違反する海外派兵で法的にアウトだ。専守防衛に集中すれば、少なくとも日本は侵されない」などと訴えた。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11809146.html
BACK
(社説)「違憲」の安保法制 廃案で出直すしかない(2015/06/16朝日新聞)
国会で審議されている法案の正当性がここまで揺らぐのは、異常な事態だ。安倍内閣が提出した安全保障関連法の一括改正案と「国際平和支援法案」は、憲法違反の疑いが極めて濃い。その最終判断をするのは最高裁だとしても、憲法学者からの警鐘や、「この国会で成立させる必要はない」との国民の声を無視して審議を続けることは、「法治への反逆」というべき行為である。維新の党が対案を出すというが、与党との修正協議で正されるレベルの話ではない。いったん廃案とし、安保政策の議論は一からやり直すしかない。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11809039.html
BACK
(声)矛盾した政府・与党の安保反論(2015/06/16朝日新聞)大学研究員 佐藤圭一(東京都 30)
憲法学者3人が、安全保障関連法案について憲法違反と国会で指摘したが、政府・与党の反論は矛盾に満ちている。菅義偉官房長官は自衛権を認めた最高裁の砂川判決を基に「憲法の番人は最高裁だから、その中で今回の法案を提出させていただいた」と国会で答弁した。一方で、自民党は「平和安全法制について」と題したビラで「憲法に合致するかどうかを判断するのは裁判所ではなく、内閣と国会」と明記している。結局は自分たちが「安保政策に責任を持つ」ということを、憲法を二の次にして主張しているに等しい。しかし、それほどの責任が政治家に与えられている理由は、憲政のルールに従って選ばれたからではないか。恣意(しい)的なルール変更は自分たちの権限の根拠も失わせると認識すべきだ。集団的自衛権を行使できるようにしたいのならば、憲法を改正するべきだ。「安保政策に責任を持つ自分たち」を代表に選んでくれた賢明な国民ならば、きっと改正の理由を理解してくれるだろう。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11809048.html
BACK
「非立憲」政治への警鐘 安保法制急ぐ政権に専門家(2015/06/16朝日新聞)
集団的自衛権の行使容認を盛り込んだ安全保障関連法案が国会で審議中だ。国会に呼んだ憲法学者3人全員が「違憲」と指摘しながら法案の成立を急ぐ安倍政権に、今度は「非立憲」という言葉で、専門家から警鐘が鳴らされた。・・・佐藤氏の講演は、世界と日本の立憲主義の歴史をたどる内容だった。大正デモクラシーなど明治憲法下でも「立憲主義の一定の成果」があったことや、「戦争が立憲主義の最大の敵」であり、日本国憲法は、人権保障など立憲主義の特質をとらえ直したものであることを指摘。「憲法に基づいて政治を行う」という立憲主義を考える時に重要なのは、「人類が恣意(しい)的支配を避けようと自覚し、試行錯誤を重ねてきた歴史から何をくみ取るか」だ、と述べた。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11809064.html
BACK
野良猫:外傷なく餓死でもなく…空き家周辺に10匹の死骸(毎日新聞 2015年06月15日)
15日午前9時50分ごろ、栃木県佐野市栃本町の空き家付近で猫が多数死んでいる、と同市役所を通じ県警佐野署に通報があった。11〜14日に計10匹の死骸が見つかったという。・・・同署によると、猫はいずれも成猫で、人に飼われていた形跡はなく、野良猫とみられる。はっきりした死因は不明で、目立った外傷はなく、餓死でもないとみられるという。死骸が見つかった空き家は野良猫のたまり場となっていた。同署は毒がまかれるなどした可能性もあるとみて、動物愛護法違反容疑も視野に入れて調べている。【野口麗子、田中友梨】
http://mainichi.jp/select/news/20150616k0000m040036000c.html
BACK
憂楽帳:古老の言葉(毎日新聞 2015年06月15日 西部夕刊)
国会で憲法学者3人が「安全保障関連法案は憲法違反」と断じて注目を集めたが、「憲法」の話題になると、前任地の沖縄で聞いた話を思い出す。2012年に本土復帰40年の取材をした時のこと。米国統治時代、沖縄の人々は米軍の圧力をはねのけて復帰運動を展開したが、運動のリーダーだった古老の男性はこう振り返った。「米兵の事件は絶えず、米軍の人権抑圧はひどかった。本土への復帰を求めたというか、安全や人権を保障した平和憲法の下での日常がほしかった」そしてこう付け加えた。「米国が押し付けた憲法なので改正すべきだとの意見があるが、認識が全く違う。沖縄からすれば復帰運動を戦い抜いて勝ち取った憲法。私は今も誇りに思う」。憲法を巡って「勝ち取った」という表現にそれまで触れたことがなかったので、新鮮な響きだった。
http://mainichi.jp/opinion/news/20150615ddg041070006000c.html
BACK
社説:進まぬ廃炉作業 国はもっと前面に立て(毎日新聞 2015年06月14日)
政府は、東京電力福島第1原発の廃炉に向けた工程表を改定した。大幅な改定は2013年6月以来2年ぶりで、1〜3号機の使用済み核燃料プールからの燃料回収を従来より最大で3年程度遅らせる。除染やがれき撤去に伴う放射性物質の飛散防止対策に手間取っているからだ。世界でも例を見ない過酷事故を起こした原発の廃炉作業が、いかに困難なものかが、現実のものとして浮き彫りになったといえる。・・・新工程表は当面の優先順位が高い課題として、核燃料プールからの燃料回収と汚染水対策を挙げている。だが、廃炉作業の最大の難所は、1〜3号機の原子炉格納容器内で溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の回収だ。新工程表は、いずれかの号機で21年中に始めることとした。しかし、現状では、回収に至る明確な道筋は描かれていない。まず、燃料デブリがどこにどのような性状で存在しているのかすらはっきりしていない。
http://mainichi.jp/opinion/news/20150614k0000m070078000c.html
BACK
高校生平和大使が結団式 「核と人類共存できない」(2015/06/14共同通信)
核兵器廃絶を国内外で呼び掛ける高校生平和大使22人の結団式が14日、広島市で開かれ、被爆70年となる節目の年の活動に向け「核と人類は共存できないことを世界へ、未来へ発信したい」と抱負を語った。22人(女子が20人)は16都道府県から選ばれ歴代最多。8月中旬、スイスの国連欧州本部でスピーチし核廃絶を求める署名を提出する。
http://www.47news.jp/CN/201506/CN2015061401001405.html
BACK
原爆文学 記憶遺産化探る 広島で研究者らシンポ(2015/06/15ヒロシマ平和メディアセンター)
原爆詩人栗原貞子たち被爆作家の直筆資料を、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の記憶遺産に登録する意義などを考えるシンポジウムが13日、広島市中区の広島YMCAコンベンションホールであった。登録を目指す広島文学資料保全の会が主催し、約100人が参加した。国内外の研究者たち4人が、栗原、原民喜、峠三吉の3作家の資料の価値などについて語り合った。世界遺産総合研究所(広島市佐伯区)の古田陽久所長(64)は「世界遺産である原爆ドームにつながる遺産であり、世界的にも分かりやすいのでは」と指摘した。
http://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=45665
BACK
ランズマン監督作 上映 あすから広島 ホロコースト題材(2015/06/15ヒロシマ平和メディアセンター)
ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の真実に立ち会った人の証言だけで迫ったドキュメンタリー映画「SHOAH ショア」などフランスのクロード・ランズマン監督の3作が14〜21日、広島市中区の市映像文化ライブラリーで上映される。アウシュビッツ強制収容所(ポーランド)の解放70年に合わせた特集。1985年の「ショア」は4部に分かれ、約9時間半の大作。強制収容所から生還したユダヤ人や、虐殺の現場と隣り合わせで「日常」生活を送っていたポーランド人農家、迫害に関わった元ナチス親衛隊員らの証言を収め、悲惨さを物語る。
http://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=45655
BACK
山口県弁護士会が「違憲」 安保法案 反対の会長声明発表(2015/06/12ヒロシマ平和メディアセンター)
山口県弁護士会は10日、戦後日本の安全保障政策を根底から変える安全保障関連法案について、違憲だとして反対する会長声明を発表し、安倍晋三首相や県選出の国会議員たちに郵送した。声明は、法案を「平和国家としての日本の国の在り方を根底から覆す」と批判。集団的自衛権の行使や、他国軍への弾薬の提供、「駆け付け警護」での武器使用などは「憲法9条が禁止する海外での武力行使に道を開く」と指摘し、廃案とするよう求める。
http://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=45564
BACK
米ワシントンで原爆展始まる 被爆者、核廃絶を訴え(2015/06/13共同通信)
【ワシントン共同】米首都ワシントンのアメリカン大で20年ぶりとなる原爆展が13日始まり、開会行事に約150人が出席した。広島、長崎の被爆者2人も参加し「核廃絶が被爆者の究極の願いだ」と訴えた。8月16日まで開催される。原爆展は広島、長崎両市とアメリカン大が被爆70年に合わせて共催。故丸木位里、俊夫妻が原爆の惨状を描いた絵「原爆の図」の展覧会も同時に開かれた。原爆の図がワシントンで展示されるのは初めて。
http://www.47news.jp/CN/201506/CN2015061401001053.html
BACK
週のはじめに考える いま、風を待つのでなく(2014/06/14東京新聞)
福島が見えない何かを変えました。原発や化石燃料に頼らない未来を見据え、前進するドイツ。振り返ろうとする日本。風はどちらに吹くのでしょうか。来日したヘルマン・ファルク博士との対話は和やかで、答えは終始明快でした。一九六七年生まれ。三万を超える個人や企業が集まったドイツ再生エネルギー協会(BEE)の代表です。一問一答を紹介します。
市民が支持した理由
Q ドイツの再生可能エネルギー普及政策は、失敗だったという人もいるようだが。
A 事実を見ていただきたい。ドイツの電力消費量のうち、再生エネによる発電は33%を占めています。系統(供給網)は安定しており、固定価格買い取り制度(FIT)の賦課金で値上がりしていた電気料金も、次第に落ち着いてきています。
Q それはなぜ、市民に支持されたのか。
A ドイツの市民は、再生エネは気候のためにいいものだという信念を持っています。そして、わが家の屋根に太陽光パネルを載せればやがてもうけが出るとの期待もある。理想と利益が推進力になっています。
Q 気候変動(温暖化)対策のためには原発が必要だとする日本政府の考え方を、どう思う。
A 私たちは未来へ向かって進んでいます。福島の現実を見て、二〇二二年までに原発を撤廃すると決めた以上は、後戻りしたくない。ウランの掘削過程などでは二酸化炭素(CO2)を排出するし、そもそも原発がクリーンなエネルギーとは思えません。
Q 雇用のほかには、どんな経済効果が出ているか。
A 石油やガスを買うために、毎年膨大な資金が国外へ流出します。そのほとんどがロシアに入る。ロシアはそれを拡張主義の資金に充てる。対抗上、ドイツも軍備を減らせない。再生エネを普及させれば、軍事支出を削減できて、浮いた予算を国内産業の育成に充てられます。
Q 産業界の抵抗は?
A 去年の暮れに、象徴的な出来事がありました。電力最大手のエーオン社が、原発・石炭火力発電部門を切り離して分社化し、本体は、再生エネ事業に本格参入することを決めました。エーオンの決断が、ゲームの様相を変えたのです。
中国は再生エネ大国
やっぱり風が吹いています。太陽の光をはらんで風車を回す風。再生可能エネルギーへの追い風です。それも世界中で吹いている。
エネルギー消費量を五〇年までに、〇八年の半分にする一方で、再生エネの割合を60%に引き上げて、温室効果ガスの排出量を最大95%削減する−。ファルク博士のドイツが立てた目標です。ドイツだけではありません。原発大国フランスでも三〇年に32%、米カリフォルニア州は電力販売量の50%に、再生エネ比率を高めたいとしています。欧米だけではありません。中国は、五〇年に60%に達するという見通しを示している。
やがて枯渇する運命の化石燃料依存から抜け出したい。チェルノブイリやフクシマの現実に向き合えば、原発とは共存不能…。だから、無限にあって危険の少ない再生エネに切り替えよう−。これが世界に吹く風です。ところが日本は、風のない“真空地帯”に取り残されていくのでしょうか。日本でもFITが導入されて、太陽光発電が急速に普及した。すると大手電力五社が「許容量を超えてしまう」と、送電網への受け入れを一時停止した。送電は大手の独占です。・・・ “安全な原発”を目指すより、再生エネによる地産地消の電力を地域の垣根を越えて気軽に融通し合えるように、送電の仕組みをつくり替え、蓄電の技術を高める方が、安上がりで合理的だと思うのですが。
◆ウェンデを起こそう
そして最後にもう一つ、ファルク博士に聞きました。
Q どうすれば、日本でもエネルギーウェンデ(大転換)を起こせるか。
A 地域社会が再生エネの受容性を高めること。市民がそこに参加して、議論し、利用し、出資して、いくつかの利益を得られるような仕組みをつくること。私たちは風を待つ人ではなく、風を吹かせる人なのです。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015061402000158.html
BACK
地球の温暖化 新興国も加えた対策を(2015/06/14京都新聞)
シリア内戦の一因は地球温暖化−との指摘を聞いた。2006年から数年続いた史上最悪の干ばつが、小麦生産に大打撃を与え、飢餓や失業などで政情不安が増大したという。シリアだけではない。中東やアフリカでの飢饉、水争いが過激派の勢力拡大につながっていると言われる。オバマ米大統領は先月の演説で、温暖化を「安全保障の脅威だ」と述べ、危機感を示した。昨年、世界の年平均気温は1891年の統計以来、最も高くなった。気象庁によると、100年当たりで世界は0・7度、日本では1・15度上昇し、高い年の10位以内にここ10年のうち7年が入る。「地球温暖化の影響が考えられる」という。世界各地で熱波や洪水、ゲリラ豪雨、巨大台風、山火事などが頻発し、甚大な被害をもたらしている。多くの犠牲者も出ている。地球温暖化は未来だけでなく、すでに私たちの切実な問題である。手をこまねいている時ではない。先の先進7カ国(G7)首脳会議の宣言に、温室効果ガス削減の目標が盛り込まれた。世界全体で2050年までに10年比で40〜70%削減の幅の上方を目指すとした。目標達成に向け、先進国の責任は重くなったと言えよう。
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/
BACK
CO2排出ゼロに挑むびっくり箱「レイチェル」(やま / 2015年6月14日みどりの1kWh)
・・・「Kiste(キステ)」とは和紙や桐でできた上品な箱ではなく、板で作られたおおきめの木箱で、古くなって少々傷がついても気にならない丈夫なものです。この記事には「箱」に関係を持つ人物が4人紹介されています。一人目は団体「Jack in the Box」をつくった、いつも明るいラース・ランゲさん、40歳です。褐炭露天掘り地帯のそばで育った彼は15歳のときから環境保護活動に熱心だったそうです。かれこれ6年間、大学で哲学を勉強して修士なしで“卒業”。その後エコ電気会社に勤めますが、2年後にやめ、他の長期失業者といっしょに団体「Jack in the Box」を作り、「1ユーロ・ジョッバー」として生活しています。ドイツでは長期失業者の雇用促進のために、社会保障の掛け金と税金が免除されてアルバイトができるシステムがあり、失業手当を受けながら一定時間働く人のことを「1ユーロ・ジョッバー」と呼んでいます。彼らは廃物となったコンテナを幾つも改造して展示会室や集会所、自転車車庫などに利用してきました。デザイナーやアーティスト、都市開発関係者とともにリメイクした家具の展示会などもここで行なわれています。
http://midori1kwh.de/2015/06/14/6960
BACK
[書評]『帰還兵はなぜ自殺するのか』デイヴィッド・フィンケル 著 古屋美登里 訳(2015/06/12WEBRONZA)
いままさに進行している国会での安保法案審議のなかで、自衛官のリスクが増大する可能性を野党から指摘された際、安倍首相はこうコメントした。
――木を見て森を見ない議論が多い。
もともと正常な言語感覚に欠ける、いやそれ以前に言葉に信の置けない人であることは重々承知しているが、これは特にひどい。仮にも人の命が懸かっている(これについても首相は「大げさなんだよ!」とヤジを飛ばしていたが)議論について用いられる比喩ではない。しかし考えてみれば、この言葉こそ安倍晋三という人間、あるいは彼が率いる政権与党の本質を如実に表してはいないか。つまり、彼らにとって人ひとりの命(木)など国全体(森)にとってはどうでもいいのである。だからイスラム国に捕らえられた人質を見殺しにしておいて、あげく「官邸の対応には全く問題がなかった」とお手盛りの総括をして自らに何ら呵責がないのだ。・・・イラクとアフガニスタンから帰還したアメリカ兵はおよそ200万人。そのうちの20〜30%にあたる人がPTSDや外傷性脳損傷(TBI)を患っているという。だからここに登場する帰還兵の例は決してレアケースではない。
それに本書で克明に描かれる自殺のケースはふたつだけだが、アメリカでは毎年240人以上の帰還兵が自殺を遂げ、その数字は年を経るにしたがって増え続けている。日本でもつい最近、安保法制の衆院特別委員会で、イラクに派遣された自衛隊員のうち54人が自殺したという衝撃的な事実が防衛省からもたらされた。・・・すなわち、どの時代でもどこの国でも、戦争を起こしたい人々、あるいは戦争をして得をする人々のうちのほとんどは、現実に起こる生死についての面倒ごとには、進んで関わりたくはないのである。
http://webronza.asahi.com/culture/articles/2015060300004.html
BACK
安保法制と憲法 政府の見解は無理筋だ(2015/06/12京都新聞)
憲法解釈変更で集団的自衛権行使を容認することを核とする安全保障関連法案について憲法学者から「違憲」との指摘が相次いでいる問題で、政府が見解を示して反論している。だが疑念解消には不十分と言わざるを得ない。10日の衆院平和安全法制特別委員会で、菅義偉官房長官は多くの憲法学者が法案を違憲としていることについて「数(の問題)ではない」とした上で「憲法の番人は最高裁だ。その見解に基づき法案を提出した」と述べ、合憲との見解を重ねて主張した。安倍晋三首相も同様の考え方を示している。最高裁の見解とは、駐留米軍の合憲性が争われた1959年の砂川判決のことだ。その中で、国の存立を全うするための自衛措置は「国家固有の権能の行使として当然」と指摘した。・・・ 自民党の高村正彦副総裁はきのうの衆院憲法審査会で「自衛の措置が何であるか考えるのは、憲法学者ではなく我々政治家だ」と述べた。だが政治家が憲法解釈を勝手に変えていけば、憲法で権力を縛る立憲主義は崩れる。
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20150612_6.html
BACK
認知症と運転 支え合う仕組みが要る(2015/06/13京都新聞)
高齢者の運転免許制度を見直して、認知症の検査を厳格化する改正道交法が衆参両院本会議で全会派の賛成で成立した。認知症患者を早期発見し、とっさの判断力や記憶力の低下による交通事故を減らすのが狙いだ。認知症の人は全国で500万人に迫っている。高速道路の逆走や運転操作を誤った暴走など、認知症との関連が否定できない重大事故が増えている。検査の徹底は、本人や同乗者、周囲の安全確保のために避けられない。現行制度では、75歳以上の人は3年ごとの運転免許更新時に認知機能検査を受ける。認知症の恐れがあると判定されても、過去1年間に重い交通違反がなければ医師の診断なしで免許を更新できた。
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20150613_3.html
BACK
入院ベッド削減 受け皿整備が大前提だ(2015/06/13京都新聞)
地方の実情を無視した押し付けにならないか心配だ。政府は、団塊の世代が75歳以上になる2025年までに全国の病院の入院ベッド(病床)数を現在より約15万〜20万床削減し、115万〜119万床程度にするのが適正とする推計をまとめた。東京、大阪などは増床が必要だが、人口減を背景に京都、滋賀を含む41道府県は過剰とされ30%前後の削減を迫られる県も多い。今後、詳細データを基に都道府県が策定する「地域医療構想」に反映させ、地元調整を促すという。高齢化とともに年1兆円ペースで増える国民医療費の抑制が主眼で、効率化の必要性は理解できる。だが地域ごとに医療事情は異なり、在宅医療の受け皿が不十分なまま機械的に病床削減を押し付けるなら地方の医療体制を崩しかねない。慎重な議論を求めたい。推計は人口予測を踏まえ、25年の適正数を救急など「高度急性期」13万床、次に緊急性が高い「急性期」40万床、リハビリなど「回復期」37万床、長期療養の「慢性期」24万〜28万床とした。退院支援を強めて長期入院を抑え、従来の療養型病床も減らす計算だ。・・・入院費の増加は、病床数の総量規制で各病院が高単価の重症向け病床の割合を高めたためもあり、地域ニーズに応じた再編は必要だ。他にも医療費抑制の課題は多く、急増する薬剤費対策は医師会や製薬業界の抵抗で動きが鈍い。診療報酬明細書(レセプト)審査の厳格化などで「薬漬け」や過剰診療をなくす取り組みが重要だ。一方で政府は、地方創生策に大都市から地方へ高齢者の移住促進を掲げる。地方医療を過剰だとして切り込むことと矛盾しないか。地方自治体も国に対し実情をしっかり訴えていく必要がある。
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20150613_4.html
BACK
九電、7月4日に核燃料挿入計画 川内原発1号機で(2015/06/12共同通信)
九州電力が8月中旬の再稼働を目指す川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉に核燃料を入れる作業を7月4日に始める計画であることが12日、分かった。4日程度かかる見通しで、再稼働に向けた作業は大詰めを迎える。九電はその後、約1カ月かけて配管などの点検を進めた上で原子炉を起動し、再稼働させたい考え。
http://www.47news.jp/CN/201506/CN2015061201002543.html
BACK
同一賃金法案 骨抜きでは意味がない(2015/06/13東京新聞)
派遣社員の待遇改善を目指した「同一労働・同一賃金」推進法案が事実上骨抜きになった。派遣労働の固定化につながる改正法案は成立の見通しだ。今よりさらに企業寄りの改悪が進むのではないか。政府が提出している労働者派遣法改正案は、派遣社員の正社員化も雇用の安定化も期待できない内容だ。むしろ企業にとって「人件費が安く、雇用の調整弁のような働かせ方ができる便利な派遣社員」を増やしかねないものだ。・・・しかし、この当初案が与党との修正に維新が応じて骨抜きになってしまった。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015061302000154.html
BACK
安保法制「反対」 「戦争世代」の声も聞け(2015/06/13東京新聞)
安全保障法制をこのまま成立させてはいけない。自民党OBの元衆院議員らが声を上げた。自らの戦争体験に基づく切実な思いである。現に政治にたずさわる者はこうした声にも耳を傾けるべきだ。・・・四氏に共通するのは、安保法制が戦後日本の平和国家としての歩みを傷つけかねないとの危機感である。戦中戦後の苦しい時代を生き抜いた世代だからこそ、日本を再び戦争ができる国にはしたくないとの思いが強いのだろう。武村氏は「日本は専守防衛を貫くことで世界の国々から高い信頼を得てきた。専守防衛こそ最大の抑止力だ」と述べた。自民党議員として、また同党を離れてからも政権で要職を担った人たちの重い指摘である。全く同感だ。しかし、安保法制を「違憲」と断じた憲法学者を「自衛の措置が何であるかを考え抜くのは憲法学者でなく政治家だ」と切り捨てる現在の自民党である。党OBの諫言(かんげん)も耳障りに違いない。安保法制の廃案を求める憲法研究者が二百人以上になろうとも、世論調査で安保法制に反対する人が半数を超えようとも、聞く耳を持たないのだろう。選挙で勝ち、白紙委任されたかのような振る舞いは、あまりにも傲慢(ごうまん)だ。亀井氏は「戦争に負けて以来、最大の危機だ。我々がじじいだからといって、黙っているわけにはいかない」と語気を強めた。安保法制に疑問を持つ人は大いに声を出してほしい。危機感を共有し、民意のうねりをつくりたい。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015061302000155.html
BACK
核燃料搬出、最大3年遅れ 廃炉工程を改訂 福島第一原発(2015/06/12朝日新聞)
国と東京電力は12日、福島第一原発の廃炉に向けた「中長期ロードマップ」(廃炉工程表)を改訂した。1〜3号機の使用済み燃料プールからの核燃料取り出し開始時期は、前回改訂時から最大で3年遅れ、最も早い3号機でも2017年度中にずれこんだ。一方、全体で30〜40年かかるとされる廃炉工程の大枠は変更しなかった。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11805705.html
BACK
(核といのちを考える 被爆国から2015)石段の影に気づかされた 元ちとせさん(2015/06/12朝日新聞)
♪ あたしは死んだの あのヒロシマで あのヒロシマで 夏の朝に あのときも七つ いまでも七つ 死んだ子はけっして大きくならないのもともとはトルコ人が詠んだ詩です。デビュー前に「こんな歌を歌ったら」と言われたのですが、「死んだ女の子」というタイトルが怖くて。なにより、うまく歌いきれませんでした。・・・デビューした2002年に広島へ行く機会があり、広島平和記念資料館を訪れました。原爆の熱線で石段に残った人の影を見て、「戦争は遠い空の下で起きている」と思っていた自分が恥ずかしくなりました。風化することの恐ろしさを感じ、娘の出産後は「命は簡単に奪われてはいけない」と思うように。「死んだ女の子」を怖がっていた自分はいなくなりました。曲の冒頭には、奄美のお年寄りがよく言っていた「忘れんなよ 忘れんなよ」という言葉を入れています。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11805778.html
BACK
維新、強まる「親政権」 「非大阪組」は反発 安保法制対案(2015/06/13朝日新聞)
維新の党が安倍内閣提出の安全保障関連法案への対案を提出することで、与党との修正協議が整えば、賛成する可能性が出てきた。維新で安倍政権との連携を探る大阪選出の議員が12日、国会審議の場で民主党を強く批判する一方、こうした「大阪組」への反発も表面化。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11805914.html
BACK
(社説)資源と安保 自衛隊より調達努力(2015/06/13朝日新聞)
昨年の原油生産量で米国がサウジアラビアを抜き、39年ぶりに世界最大の産油国となった。米国では近年、新しい技術を用いてシェールオイル、シェールガスの開発が盛んだ。これまで技術的に採取が不可能だった地層からも生産できるようになった原油や天然ガスである。長く原油の最大生産地は中東だった。しかし、産油国としての米国の台頭は今後も続くとみられる。1バレルあたり100ドルを大きく超えていた原油価格は、米国の台頭などで昨夏から下落し、いま60ドルほど。原油市場の構図は様変わりしている。
にもかかわらず、日本のエネルギー安全保障論議は、中東、ホルムズ海峡に偏り、今国会で審議されている安全保障関連法案でも、大きな狙いとしてホルムズ海峡の機雷除去の必要性をあげている。・・・石油の大消費国でもある米国は、いまは原則として原油輸出を禁じている。だが、今後生産量が増えれば、輸出国に転じるだろうとみられている。日本企業も近く米国の天然ガスの輸入を始める。政府は原油輸出についても解禁を働きかけることができるはずだ。2040年までの世界の原油需要を見ると、最も需要が膨らむのは、アジア、中でも中国である。原油輸入国として日本と利害が一致する構造が続く。調達先の多様化など中国と協力できることがあるはずで、国会論議のような対中脅威で原油市場は染まらない。戦争に巻き込まれるリスクをとって中東原油を自衛隊が守ることばかりをなぜ、考えるのか。外交努力の余地がいま、広がっている。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11805863.html
BACK
(社説)派遣法改正案 待遇改善にはほど遠い(2015/06/13朝日新聞)
労働者派遣法の改正案を巡る衆議院の委員会での審議が終了し、来週中に採決される見通しとなった。改正案は、派遣労働者と派遣先企業の労働者の待遇をできるだけそろえる「均等待遇」の原則が欠けたままとなって、派遣労働者の待遇が改善される見通しはない。派遣労働者の数は一時期より減ったとは言っても約111万人を数えている。働き手の間でも不平等が広がる中で、派遣労働者の処遇を改善していくことは、当事者にとって喫緊の課題であり、日本経済全体を底上げするうえでも大切な取り組みだったはずである。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11805862.html?ref=pcviewpage
BACK
(声)文系縮小は文化や社会の衰退に(2015/06/13朝日新聞)大学教員 加藤和哉(山梨県 52)
文部科学省が全ての国立大学に対し、人文社会系学部と大学院について廃止や社会に必要とされる人材を育てる分野への転換を求めた。文系学部などは社会の役に立たないかのような考え方だが、とんでもない。確かに、文系の学問は経済的利益を直ちに生み出すとは限らない。しかし、人間の精神を養い、文化の基盤を作る。そのおかげで私たちは辞書や事典、教養書など自ら知識を広げるツールを手に入れ、自国と世界の歴史の理解を深め、倫理や宗教に関する多様な視点を育むこともできる。また、日本語で世界中の様々な書物を読むことができるという翻訳文化も文系の研究者たちが生み出してきた。文系の知識や教養は人間が生きる意味を見いだし、社会のあり方を考え、広い視野を持って未来を選択するのに不可欠だと思う。もし国立大学が文系学部を縮小して、文系の学問の基盤が損なわれれば、この国の文化や社会の衰退につながるだろう。政府は国民が自分の頭でものを考え、歴史認識や政治認識を持つことが不都合だとでも言うのだろうか。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11805868.html
BACK |